13、最終章 私の一番はお兄ちゃん!
「お兄ちゃん…ずっと、黙ってたね…」
「ああ、オマエの迫力に圧倒されて
口を挟んだりする隙間…1ミリも無かったよ」
妹を車でマンションまで送っている。妹はまだ、気分が上がっているようだ。身振り手振りで話した。
「ええっ!そんなだった!
ヤダッ!恥ずかしい!
なんか…「興奮するな!」とか
パパに言われてたよね!
でも、アレは逆上するパターンでしょ!やっぱり!
今キレなくて、いつキレるの?
今でしょ?みたいな感じでしょ!」
「椿…それ…林先生も、最近、やってないぞ!」
妹は言葉に詰まった後、プーッと膨れっ面をして俺の二の腕にパンチの雨を降らせた。
「ワーッ!うるさい!うるさい!
お兄ちゃんの意地悪!」
「イテテッ!止めろ!止めろ!
あぶねーだろ!」
「お兄ちゃんが悪いんだよ!フン!
それとさぁ…後さぁ……
横恋慕するなよ…って言ってたね。
ドキッとしちゃた。
もう、致しちゃった後だもんね!
やっぱり墓場まで持って行かないと…だね!」
「お墓までだろ!」
「どっちでもいいよ!」
「ハハハッ!そうだな…
でもな、本当は胸が熱くなってな…
オマエの思いが俺の胸の中で
いっぱいになったんだ。
込み上げてきたんた。
それを堪えるのに必死だったんだよ。
ありがとうな…椿…
俺の前に現れてくれて…
俺の妹になってくれて…
ずっと、そばにいてくれて…
ずっと、俺の事…好きでいてくれて…
ありがとう!」
「お兄ちゃん…そうだね!
パパの言う通りだ!
兄妹になったから巡り会えたんだもんね…
お兄ちゃんこそ
私のお兄ちゃんになってくれてありがとう!
ずっと、お兄ちゃんでいてくれて、ありがとう!
感謝……してます…」
「おい!椿!
折角、イイ話をしてる時に、ソコ触るなよ!」
「だってぇ、久しぶりだもの…
これTシャツの上からでも、わかるよ!
ホレッ!クリクリッ!クリクリッ!」
「だから、止めろって、こっちは運転中だぞ!
そこ、感じるんだよ!ああっ!
心臓の裏側だからな、響くんだよ…
だから…やめろって…椿…ああぁ…
「お兄ちゃんも感じてたんだ。
私は乳首で…お兄ちゃんはイボホクロ…
これで、致してたんだね!
ソレッ!クリクリ!クリクリ!」
「またぁ…ああっ!感じるから…
本当に止めてくれって…椿ぃ…
ワァッ!」
その時だった。目の前が真っ白になった。ハンドル操作を誤ったのだ。対向車のライトが目の前に迫っていた。
慌ててハンドルを左に切った。直後、目の前にガードレールと電柱が迫っていた。
「うわあぁ!」
「きゃあっ!」
"バーーン!"
"ガッシャーーン!"
「椿!椿!しっかりしろ!
今、救急車…呼ぶからな…
椿!返事をしてくれぇ…
椿ぃ〜…椿……死なないでくれぇ…
椿ぃぃーーっ!」
ピーポー…ピーポー…
そらから三日がたった。
「椿……良かった。やっと、目覚めた…」
「お兄ちゃん……
ここ…どこ?」
「病院だよ!
ママ!パパ!…椿、起きたよ…意識…戻ったよ!」
イスに座っていた父と母がベッドに駆け寄った。
「ええっ!本当!
ああ、本当だっ!良かった…良かったぁ…
ああ…嬉しい…椿…頑張ったね!
生きててくれて…ありがとう!」
「椿ぃ…心配したぞぉ…ううっ…
本当に良く頑張った!」
「私…何にもしてないよ…頑張ってくれたの…
お医者さんとか…看護師さんでしょ…
感謝しかないよ…
アイタタッ!でも、本当…心配かけてごめんなさい」
「椿!まだ、動くなって…脚、骨折したんだ…
複雑骨折らしい…」
「そうなんだ。じゃあ、しばらく車イスだね!
ハハハッ」
椿の笑顔が俺の胸に痛く刺さった。今、話すべきか憂慮するべきだったのかもしれないが贖罪の重みに耐えかねて俺はその重大事を口にしてしまった。
「椿っ!………………
ごめん!ごめんなさい!
俺の不注意で…俺のせいで!
椿の一番大切なもの奪ってしまった。」
「お兄ちゃん…どう言う事?」
妹はキョトンとした顔をしている。
「すまん!本当に申し訳ない。
あのな…椿…もう、ダンス………
出来ないかも、知らないんだ…
ごめん!本当に、ごめん!
一生償う!俺の一生かけてオマエに償う。
だから…うわーーっ!
許してくれーーっ!」
俺は込み上げる感情と涙を堪える事ができなかった。しかし、妹は笑顔のまま、こう言った。
「なーんだ…そんな事か…
お兄ちゃんの不注意じゃないでしょ!
私が悪ふざけしたから、あんな事故が起きたんだ。
私のせいだよ!
お兄ちゃん!本当にごめんなさい!
だって、もしかしたらお兄ちゃんが
亡くなってたかもしれないだもんね。
そうなってたら、償うのは私の方だったよ…
それと、全然、平気だよ!
ダンスなんか、どうでもいいよ!
お兄ちゃんと踊れなくなるのは寂しいけど…
お兄ちゃんが、いたからダンスしてたんだよ!
私の一番大切なものは、ダンスなんかじゃない!
お兄ちゃんだよ!
お兄ちゃんは私の一番大切で大事な…
この世界で唯一の存在!
お兄ちゃんさへ、いてくれたら
他には、なーんにも要らない!
本当だよ!フフフッ!」
最後は妹も泣いていた。微笑みながら泣いていた。
「椿…
ありがとう…椿…」
見つめ合って、微笑んで…泣いた…
「パパ…私達…入り込める余地…
全く無いね…ハハハッ!」
「そうだな…千晴さんがいなくて良かったよ!
一波乱じゃすまんかったぞ!」
「おーっ!怖っ!」
「椿…どうだ!リハビリは?」
「うん…相当、キツイよ!
まあ、歩けるようには、なるらしいけど…
そう言っても、私の、頑張り次第だもんね」
ダンススタジオのフロア。
妹は、退院し、病院へは、リハビリの為に通院している。今日は車イスでお出ましだ。
「そうだな。リハビリ頑張って…
歩けるようになったら
ここでコーチやってくれよ。
椿に憧れてダンス初めた子も
いっぱいいるんだよ。
だから、なっ!頼むよ!」
俺は椿の車イスの横のベンチに座った。
「そうだね!
それ、いいかもね!
お兄ちゃんと、ずっといられるもんね!」
妹が俺の目を見て微笑んだ。俺も妹の瞳を見つめた。
「そうだな!
椿…生きいてくれて、ありがとうな!」
「うん、お兄ちゃんもね…」
終わり




