12、お兄ちゃん!一生思い続けるよ!
今日は椿の二十ニ歳の誕生日だ。実家に集まりみんなで、お祝いした。
食事が一段落するとケーキを切り分けみんなで食べた。
七海も七草も口の回りをクリームだらけにして部屋中を駆け回った。それを千晴がテッシュを、持って追いかけ回した。
「相変わらず元気いいね!」
「まだ、服を着てる分だけマシだぞ!」
「パパッ!もう、それ言わないでよ!
私、変態みたいじゃない!」
「はははっ!」
「ハハハハッ!」
千晴と子供達はバースデーケーキを食べた後、マンションへ帰った。
両親と俺と妹はリビングのソファに座った。何やら
オヤジから話があるらしい。
「二人に今夜は、折り入った話があってな。
この話は椿が二十歳になったら
話そうってママと決めてたんだがな
二人のペア解消とか色々あったからな…
みんなが落ち着いてからにしようって事で
伸び伸びになってたんだ。
椿も世界タイトルを手にしたし
薫も所帯を持ったし、いい機会かなと思ってな。
でも、もしかしたら
もう、知ってる話かもしれんがな…
ネットで、パパとママの
二人の経歴を検索すれば出てくる内容だしな。」
俺はオヤジの勿体ぶった言い方に少しイラッと、し始めていた。
「知らねーよ。そんなの!
わざわざオヤジ達の経歴なんか調べるかよ!
気持ち悪りぃ!
オヤジは、俺の親父って、だけで充分だ!」
オヤジが苦笑いをした。
「ハハハッ!薫ぅ!
オマエは身も蓋もないな。
でも、ありがとうな!
その言葉が聞けただけで、俺は嬉しいよ!」
オヤジは何故か満面の笑みだ。俺は内容が見えて来ない事にイライラしていた。
「…で、なんだよ!
本題に入れよ!」
「ああ、そうだな…実は、な……
パパとママは……バツイチ同士なんだ…」
「何ーーーっ!」
「ええーーっ!聞いてないよーーっ!」.
俺も妹もまさかの、言葉にパニックったが、その反応にオヤジが焦った。
「だからぁ…今から話すから取り敢えず聞いてくれ!
なっ!頼むから……
二人は……バツイチ同士で再婚したんだ。
椿が私の連れ子で、薫はママの子だ。
まだ、二人共、物心がつく前だったから
成人したら話そうって言ってたんだ。」
それには、妹がすぐに食い付いて、早口で捲し立てた。
「ちょっと待ってよ!私とお兄ちゃん!
血が繋がって無いって事!」
オヤジは妹との迫力に押されてタジタジと言った様子だ。
「あ、ああ、そうだ。
でも、こうして、ずっと一緒に暮らしてきたんだ。
いろんな事を分かち合ってきたんだ。
だから、何も変わらない。
今まで通り、みんな家族だ。本当の家族だ。」
オヤジは何とか、それだけ言い終えたが妹は気が治らない。すぐにオヤジに噛みついた!
「何言ってるの!パパ!
変わるよ!何もかも!
何で、もっと早く言ってくれなかったのよ!
二十歳なんて遅すぎるよ!
しかもそれから二年も遅れて発表なんて!
私達を大人として、認めて無かったって事よね!」
肩で息をして責め立てた。
「椿!落ち着け…興奮するなよ!」
「するわよ!これが落ち着いていられますか!
って言うの!
胸の辺りがザワザワして爆発しそうだわ...」
母が堪らずみかねて椿をなだめた。
「椿..ショックなのは、わかるけど...ね!
今まで、通り何も変わらないんだから...
ただ、いつかはちゃんと話しておかないとって
思ってたから...
それが今日になってしまったのは申し訳ないけど...」
「遅いよ...遅すぎるよ…ママ!
お兄ちゃん...結婚してしまったじゃない!」
妹は、とうとう泣き出してしまった。つぶらな瞳から涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「ああ、そうだな。
二児のパパで幸せいっぱいだ。」
妹はその言葉にさらにカチンときた。
「そうじゃないわよ!
それ知ってたら
私が、お兄ちゃんと結婚できる方法が
何か、あったかも知れないって事!」
妹は両親に、一番知って欲しかった。心情を語る事に舵を切った。
「ちょっと、待て!
椿!オマエ、何を言ってるんだ!
オマエ達は、兄妹だ!
血が繋がってなくても
家族なんだって今言ったばかりだぞ!」
とうとう妹の感情が爆発した。
「違う!違う!違う!
兄妹なんかじゃ無くてイイッ!
兄妹なんかじゃ無い方が良かったの!
私はお兄ちゃんを愛してるのよ!
ずっと昔から...子供の頃から
お兄ちゃんだけを見てきたのよ!
それなのに兄妹だから...
最後は諦めた。
兄妹は結ばれちゃあいけないんだって
思い知らされたから…
私は、身を引いた。
だからペアを解消したのよ!」
両親は驚いていた。口が塞がらないと言った面持ちだ。
「そっ、そんな事で、決断したのか!
オマエの個人的な感情で
お兄ちゃんまで巻き込んだのか!」
オヤジは呆れてしまったようだが妹はおさまらなかった。
「だって、出来る訳ないでしょ!
報われない感情を抱えて
その人の腕の中で踊れると思う!
そんな残酷な事ある!ウウウッ…」
しかし、最後は涙声になった。
「でもな..椿....兄妹になったからオマエ達は
出会えたんだぞ....
もし、パパとママが再婚してなかったら
二人は出会えなかった。そうだろ...」
オヤジが優しく諭すように言った。妹はハンカチを瞼に当てたまま応えた。
「それは、感謝してるわ...
こんな素晴らしい人と巡り合わせてくれた事...
だったら、教えてくれれば良かったのよ!
実は血が繋がってないんだと...
そしたら、私は諦めなかった。
お兄ちゃんへの思いを貫いた。」
力強い言葉だった。オヤジは妹に頭を下げた。
「椿…悪かった!
オマエの気持ちに気づいてあげれずに...
血が繋がって無いって事が
逆にショックなんじゃないかって思ってたんだ。
それで中々、言い出せなかったんだ。
でもな..椿..今更、何だよ...
もう、みんな、治るところに治ってしまったんだ。
お兄ちゃんも千晴さんと結婚して、幸せにやってる。
オマエが今更、そう、騒ぎたてて
波風を立てる様な事は慎むべきじゃないのか!」
常識的な言葉に妹は駄々っ子みたいになった。
「お兄ちゃんだって
好きでいてくれてたんだよ。
でも、私がペア解消を言い出したから
お兄ちゃんは私に振られたと思ったのよ。
それで千晴ちゃんとペアを組んだのよ。
私達、好き同士だったのよ!
それなのにすれ違ってしまって...」
オヤジはあくまで落ち着いた口調で話した。
「ちゃんと、話し合わなかったから
すれ違ったんじゃないのか?
気持ちをちゃんと伝え無かったんじゃ無いのか?
思わせぶりな事をして察してくれって
心の中で願ってただけじゃないのか?」
オヤジの確信をつく言葉に妹は胸の内を曝け出した。
「そっ......そうだよ!
あの頃は、そうしか出来なかったんだよ!
変な子だって友達からいわれてたんだよ!
お兄ちゃんを好きなんて有り得ないって
だから遠回しにしか、態度に出せなかった。
愛してるって、何度も喉まで出かかったけど
言えなかった。
お兄ちゃんにまで、変な奴だって言われたら
どうしようって...怖かったんだ...うううっ」
オヤジの目が更に優しくなった。妹を心から愛おしいと思っている事が、わかった。
「椿...オマエだけじゃないよ!
そんな人は世の中にいっぱいいる。
兄妹だけじゃない。
親子だって...
でもな...みんな、それを心に秘めてるんだ。
この社会じゃ、それは非常識な事だからだ。
でも、その気持ちは決して消せるものじゃない
胸の中に閉じ込めておく事しかできないけどな…
イイじゃないか!椿…
オマエは貫けば...
お兄ちゃんへの気持ち...
だってなぁ、オマエらしくないよ!
結婚とか、籍とか、オマエそんな事に
捉われる人間だったか?
そんな形式ばった事に、はまる女だったか?
いつもハチャメチャな事して
みんなを振り回してきたくせに何だ!
肝心なところで、そんな七面倒くさい事言い出して...
好きなら好きでいいじゃないか!
一生お兄ちゃんの事を好きで、い続けろ!
オマエの気持ちをねじ伏せる事なんか
誰にも出来ないんだから!
椿...オマエ自身だって
自分の気持ちを思い通りにできないんだろ。
人の気持ちなんて…自身でさえ
簡単にコントロールできるもんじゃないんだ。
だったら、貫け!
自分の気持ちに正直になれ!
一生、お兄ちゃんのことを愛し続けろ!」
妹を勇気付けるのに充分な言葉だった。
「いいの?そんな事...していいの?」
妹は縋るような目でオヤジを見た。
「俺に聞いてどうするんだ?
オマエの胸の内の問題だ。
椿が自分自身と向き合って決めるんだ!」
オヤジが椿の眼を真っ直ぐに見て、笑顔で応えた。妹は、急に晴れやかな顔になった。全身に精気がみなぎっていた。
「わかった!わかったパパ!
私、貫く!お兄ちゃんを好きな思い
一生貫く!
死んでも貫く!」
妹は拳を強く握って誓った。
「死んだら貫けないからな!
暴飲暴食に気をつけて長生きするんだぞ!」
オヤジが、場をなごました。
「私、そんな食いしん坊じゃないよ!」
「モノの例えだ!」
「ハハハッ!」
「ふふふっ!」
「ただな....千晴さんの事は尊重するんだぞ!
その気持ちを千原さんの前で出してはだめだ。
それだけは、わきまえてくれよ!
まさか、横恋慕なんかする訳ないとは
思ってるけどな...」
少しだけ、オヤジが、心配顔をした。
「ハハハッ!
当たり前でしょ!
さすがに私でも、それはわきまえてるよ。
そこまで、下衆な事しないよ!
ねえ、お兄ちゃん!」
妹が俺の方を向いてウインクしたので、俺は、焦った。
「あっ、ああ、もちろんだ!」
「じゃあ、椿、送ってくよ!
忘れ物ないか!」
「うん、バックこれだけ!」
「椿!スマホ忘れてる!」
「あっ、ああ、ママありがとう!」
「じゃあね!また、帰って来なさいね!
近いうち…」
「うん!わかった!じゃあね!
パパも、お休み!」
「ああ、お休み!
薫、気をつけてな!」
「ああ、わかった!
おやすみ!」
笑顔で別れた。
「ハーッ!疲れたわね…
でも、良かった…何とか言いくるめたわね!」
「ああ、昔から椿は言い出したら聞かないから……
でも、あの、頑固でハチャメチなところが
常人と違ってたんだろうな。
それで、世界まで辿りついたのかも知れないな…」
「でも、やっぱり
白川さんの功績が一番大きいわよ。
あの、じゃじゃ馬を何とか手懐けて
あそこまで、連れて行ってくれたんだもの…」
「そうだな!薫は椿の事になると
冷静でいられなくなる。熱くなり過ぎるんだ。
リーダーは常に冷静でなくてはならない。
その点が、椿には欠けていた。
世界を相手にするには、それが足枷になったんだ。
まぁ、好きなもの同士って事だ。
二人だけの世界で踊っていたのかも知れないな。」
「そうね…その時は二人とも…
採点とか、ランキングとか、世界とか…
どうでも良かったのかも知れないわね!
二人で踊る。その事自体が、二人には
大事だったのかもね…」
「ママ…もう一杯だけ、いいかな?」
「じゃあ、私も…」
「乾杯!」
「かんぱーい!」
続く




