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逆さまの蝶  作者: 徳次郎
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第3章―【1】

さり気なく、第三章にはいります。

過去の話から現代に戻る途中でしょうか。



 自転車の車輪が風を切ってしゃらしゃらと音を鳴らして廻りながら、夏の雨上がりの陽光を浴びてキラキラと光る。

 中学生になった陽菜と慶太は相変わらず仲がよかった。

 共通するのは家が近いというだけ。それだけだと学年が上がって思春期を迎える頃には離れ離れになる事が多い。

 他にも仲良しの友人が出来たり、それなりに好きな人が出来たり。

 でも陽菜はちょっと意地悪だけれど気さくで優しい慶太を、慶太はちょっと意地っ張りだけれど素直で意外と子供っぽい陽菜を一番親しいパートナーとして変わりなく日々を送っている。

 アスファルトの水溜りを車輪が横切ると、小さな飛沫が跳ね上がった。

「きゃっ。ちょっと、水溜り避けてよ」

 陽菜は自転車の後ろに立ち乗りしたまま、水滴のついた自分のローファーをちら見して慶太の頭を小突いた。

 長い黒髪が風に引かれる。

「バカ、そんな面倒くせぇ事できっかよ」

 慶太は前を向いたまま自転車のペダルをひたすら踏む。

 キキッと目の前に別の自転車が路地から出てきて慶太が急ブレーキをかけると、陽菜は前につんのめって彼の後頭部に胸が当たった。

「ぎゃっ」

 思わず慶太の頭を叩く。

「いってえなぁ」

「危ないじゃん」

「北斗に言えよ」

 目の前に出て来たのは杉原北斗。

 中学は隣の小学校と二つが一校に集う。杉原は隣の小学校から来て知り合った。

 ちょっとカッコつけのところがあるけれど、慶太とは何かと気が合うようで、入学当初それぞれに他校から来た連中を敬遠し合う中、早々に親しくなってしまった。

「またお前ら一緒かよ。てか、由木は朋平と一緒に来るんじゃなかったの?」

 杉原はマウンテンバイクについているベルをチンッと鳴らした。

「美智は弟のお昼作ってから来るから遅れるってさ」

 陽菜が慶太の後ろで言う。

「へぇ、由木も弟いなかったっけ?」

「大知はたくましいからほったらかしでOkなの」

 陽菜は杉原に拳を突き出して

「出発っ」

 慶太の肩をぽんぽんと二回叩いた。

「なんか、お前由木の馬みてぇ」

 杉原が慶太の自転車に並走する。

「うるせぇよ」

 慶太が抜きに出た。

 陽菜が振り返って杉原に「駅前のマックで待とう」

「映画、間に合うのか?」

「次の回にすればいいじゃん」

 しゃっと水溜りを踏んで飛沫が光を浴びると、一瞬小さな虹が浮かんで消える。

「ちょっと、水溜りぃ」

 陽菜の手が、再び慶太の頭を小突いた。



 普段の平日マックの店員はおばさんが多いけれど、夏休みに入った途端に若々しい笑顔が注文カウンターを埋め尽くしていた。

 三人はテーブルに着いて、杉原は腰掛ける前にポテトを口へ運んでいる。

「知ってる? 二年は林間学校だってさ」

「ああ、恒例だろ。来年は俺らも行くんだ」

「なんか面倒くせぇな」

「夏休み取られる気分だよ」

 杉原と慶太が話す。

「そうかな、ちょっと楽しそうじゃん」

 陽菜が幕張の空に浮かぶ白い雲を眺める。大きな窓からは高層ビルが見えていた。

「美智は明日から部活あるってさ」

 高層ビルの窓に反射している陽射しが眩しくて、陽菜は眼を細める。

 慶太はテーブルに肘をついて

「俺なんて今日からだぜ。午前中一汗かいてきた」

「あっ、だから朝いなかったのか」

「由木はのんびりしていいよな」

 杉原がバニラシェイクのストローから口を話す。

「なによ、杉原だって帰宅部のくせに」

「ばっか。写真部だって夏合宿あるんだよ」

「うそっ、マジで?」

「文化祭の展示用写真を夏の間に撮らなくちゃいけないんだ」

「へぇ」

 陽菜と慶太が同時に頷いて、ハンバーガーを頬張った。

 コンコンと窓ガラスが鳴って三人が振り返ると、美智が窓の外で手を振りながら笑っていた。


お読み頂き有難う御座います。

折り返しを過ぎた感じです。

少しでも暇つぶしの一環にでもなれば幸いですが(^^;

宜しくお願いいたします。

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