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プロポーズ カイル王子Siude

 俺は列車に飛び乗った時に、必ずクラリッサが同じ列車に乗っていると確信があった。



 駅で大量の鳥が一人の女性を襲っている現場を見たからだ。



 コマドリから彼女は北の魔物の森を制圧する方法を教えてもらったと言っていた。


 ルーニーとカーダイアと一緒に走ってきたイザベルが、息をのんで興奮した様子で、10年前の暗殺事件の話をしていたのは目の前で鳥に襲われている女性だと教えてくれた。



 王子である俺を警護するためにいた第3火闘部隊が鳥に襲われている彼女を捕らえようとすると、一気に鳥やコウモリは去って行った。



 俺はイザベルから少し話を聞くと、ルーニーとカーダイアと第3火闘部隊の半分を引き連れて列車に飛び乗った。ルーニーは、ちょうど駅に着いたらしいロンダリー大主教を連れてきてくれた。




 そこからが大騒ぎだった。


 まず、一等車両を確保した。クラリッサを見つけたら、プロポーズをするつもりだった。そして、今日のうちに結婚もしたいのだと改めてロンダリー大主教に伝えた。



 古城で行うプロポーズのつもりだったが、予定変更だ。


 エミリーがクラリッサだとわかれば、俺の心は絶対にこの結婚を成立させようという固い決意に溢れた。



 クラリッサを探して列車の中を歩き回った俺は、一人でポツンと窓際の席に座り、泣いている彼女を見つけて胸が締め付けられた。



 クラリッサの周りに座る人たちを、そっとルーニーが遠ざけてくれた。お金を払って、隣の車両に移ってもらったのだ。



 プロポーズをする瞬間は、心臓が飛び出しそうなほどドキドキした。


 あぁ、俺のクラリッサ……。



「クラリッサ、どれだけ俺が愛しているか、分からない?」



 俺が話しかけた時のクラリッサの驚いた表情は一生忘れられないかもしれない。


 驚きと、嬉しさと、泣いているのに、安堵したような表情。



 俺はエミリーの姿を見ているはずなのに、クラリッサを確実に見出していた。



 愛の告白はとても緊張するものだった。



「結婚してくれる?」


 俺はクラリッサの指を優しく取って、煌めく大きなダイヤのついた指輪をはめた。



「この指輪は君に結婚を申し込むつもりで、持っていたんだ。父がこの前宮殿で挨拶した時に、君を花嫁にするのを許してくれた」


 クラリッサが泣き出した。グリーンの瞳から涙がまた溢れ出した。


「君は、国王が認めた花嫁だ。何も恥じることはない。必ず幸せにするから」


 そういった時のうっとりとした表情にやられた。



 俺は彼女の手を取って、準備した一等車両に連れて行き、ロンダリー大主教に引き合わせた。



 結婚手続きを済ませると、正式に俺とクラリッサは夫婦になれた。



 俺は、生涯、この瞬間を忘れないと思う。

 



 列車の窓から飛ぶように去る田園風景を見つめながら、クラリッサとワインを飲んで、ちょっとした食事をとった。



 最高に幸せだった。



 だって、妻となったクラリッサが横にいてくれるんだから……。




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