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間際の伝言 クラリッサSide(2)

「おいらは庭で倒れたクラリッサが息を引き取る最後の瞬間に立ちあって、芝に横たわるクラリッサから伝言された。娘にも秘密にしてくれと言われたから、おいらたちはずっと秘密にしていた」



 私は胸を押さえて、涙が溢れるのにまかせた。



「ある時、自分と同じ力がある人物が現れたら、自分かもしれないから、伝言してくれと言われた。カイル王子は、毒殺を仕掛けられたことすら知らないはずだと」



 私の頬から涙が現れた。

 私ったら、やっぱりカイル王子の事が大好きなままだったんじゃない。


 なんてバカなことを……!



 私は自分のカラダには知識がない。動物には分かる事が、人間には分からないのだ。人間が分かる動物に出会えたら、知識を得られるかもしれないが。



「あなた。人間のカラダに詳しい動物を知らないかしら?」


 私は年老いた鳩に聞いた。

 覚悟を決めた。



 伝言をしっかり受け止めたわ。

 私の死を無駄にはしないわ。

 事前に教えてくれてありがとう。



「ちょっとその辺りを聞き回ってみるよ。おい、みんな話は聞いていただろ?ジーンにも他の皆にも内緒だぜ。大切なジーンや旦那様を巻き込んではならないと言われたんだ。おいらたちはエミリーに協力しようぜ。亡くなった奥様なんだから、この方は」


 

 私は死ぬ前もカイル王子が大好きだったのだ。誰にもカイル王子にも知られずに、自分がフラれてしまった大好きな人を守って死んでしまっていた。



 クラリッサ、あなたカイル王子に愛されていたのよ。



 私は涙を急いでぬぐい、餌箱の仕事を手早く丁寧に終わらせた。鳩小屋を出る瞬間、振り返って年老いた鳩に私は聞いた。



「ありがとう、あなた、名前は何かしら?」

「ピープスってクラリッサは呼んでいた」


 私はクスッと笑ってしまった。

 寄宿舎学校時代に唯一の話し相手になってくれた寄宿学校の庭師の息子の名前だ。退学が決まった時、泣いてくれた唯一の人だ。



「ピープス、ありがとう。あなたがいてくれて幸せだわ。生きていてくれてありがとう」


 私はお世話用のスモッグのエプロンを取り、笑顔で仕立て屋に戻った。



 さあ、色々忙しくなる。

 私は自分が、リベンジを仕掛けているのだと悟った。




自分が愛されていることも知らずに、フラれたお人を必死にかばって身代わりになって人しれず、本人にも知られずに、ひっそりと表舞台から去る。人生の幕を閉じたクラリッサ。


リベンジだわ…!

クラリッサ、あなたの真の目的をわかったわね?


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