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初めての恋人 カイル王子Side

 花嫁にして良いと父に言われて、俺は勇気を振り絞ることにした。もう二度と愛しい人を失うのは嫌だと思った。



 自分の気持ちをなんとしても伝えなければ。


 どんな妨害があったとしても、彼女とまずはお付き合いをしたい。いきなり結婚なんて贅沢は言わない。だが、彼女を愛人にしたいとも思わない。父が許してくれるのであれば、メイドの彼女を花嫁にしたいと思った。



 隠し事は嫌だ。彼女に交際を申し込む前に、自分がずっと恋焦がれていたクラリッサのことを正直に言わなければと思った。言わずに、自分を理解してくれとは言えない気がしたからだ。



 全力で彼女と付き合う方向に押したい。


 でも、嫌われたくない。逃げられたくもない。避けられたくもない。毎日のように彼女と一緒にいれるように画策したつもりだ。俺の衣装担当をやってもらうように。



 彼女にはジーン・ハット子爵令嬢の仕立て屋の他の仕事もあるだろう。一緒にいる時間を増やすには、恋人もなるのが一番だ。


 大それた夢だろうか?


 クラリッサとは実現できなかったことを、エミリーとは実現したいのだ。彼女の力を聞いた父は、クラリッサの時は示した難色を示さなかった。むしろ花嫁にしても良いとすら言ってくれた。



 信じられないよ!

 王子の花嫁にして良いなんて!

 


 そんなことを今まで父に言われたこともなかったから、正直驚いた。



 パース子爵令嬢のイザベルが何かを仕掛けてくるかもしれない。エミリーをむざむざと無防備な状態にしておくわけにはいかないのだから、しっかりと俺の警護隊を回せるようにしたい。そのためには、彼女から返事をもらわなければ!


 

 喉がからからだ。

 緊張していた。


 ずっと想い続けたクラリッサのことを話そうとしたら、泣いてしまった。彼女にこの想いを告げることはもう二度とできないのだから。もはや彼女はこの世にいない。彼女がこんなに早く世界から消えると思っていなかった。


 俺の想いは二度と彼女には届かない。


 俺の話を聞いたエミリーも泣いていた。きっと既にこの世から去ってしまったクラリッサのことを思ってもらい泣きをしているのだろう。



 気づいたら、目の前のエミリーに付き合って欲しいと告白していた。



 俺の付き合ってほしいという言葉を聞いて、エミリーは完全にフリーズした。


 涙に濡れた瞳が蝋燭の明かりで煌めき、とてつもなく魅惑的だった。そこはかとなく色っぽく、宝石のようにきらめいて見えた。



「あなたが望むなら、よろしくてよ」



 クラリッサの言い方そっくりの言い方をエミリーがした。俺は飛び上がるほど驚いた。



 全力で彼女を手に入れるために頑張ろうと思っていたが、あまりに雰囲気が似ているので交際を承諾してもらったことに、一瞬気づかなかった。



「俺と付き合ってくれるということだね?」



 俺は思わず聞き返していた。



「えぇ、あなたが望むならば、お付き合いをさせていただきます」



 おぉ、なんてことだ!

 38歳にして初めて彼女ができた!



 メイドの彼女の言い方はまるでクラリッサのようだった。やはり、2人は外見はまるで違うのに、似ているところがあるようだ。長年恋焦がれていたクラリッサから、エミリーに想いが移るのは良いことだと思えた。



 俺はエミリーを花嫁にしようと心に誓った。凄まじい妨害があるかもしれないが、父も応援してくれるようだ。



 メイドのエミリーを花嫁にしよう。我が国の王子である俺の花嫁にしよう。



 愛人にはしない。エミリーは恋人から花嫁になるのだ。



 昔、クラリッサとは結婚できなかった。だが、もう当時の俺ではない。エミリーとの結婚を必ず実現しよう。



 父の言葉通りなら、父は俺の結婚を応援してくれる。この国の王子が結婚していないのは、王家存続の危機を意味するのだから。



 さあ、エミリーが初めての恋人になってくれるなんて!


 俺の心は舞い上がった。


 クラリッサ。

 君のおかげだ。

 

 俺はそう思った。







 


初めての恋人はクラリッサ。

よかったですね!お父上の賢明なお言葉が後押ししてくれましたね。結婚への道筋が見えてきました!

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