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身分違いの私の恋

 お金持ち令嬢クラリッサだった時、18歳のカイル王子に17歳でフラれた。



 一面に広がる黄色い花の咲く野を見渡す谷の上で、黄金色に丘が染められる頃、私は失意のどん底に叩き落とされた。


 谷から見える景色は絶景なのに、谷の底にカイル王子によって落とされた気分だった。振られる理由が、『つまらない』って…。



 その場所は、私にとっては懐かしくも、胸が痛くて、切ない場所だ。でも、今となっては大切な場所に変わりがない。


 ただ、「なんかつまらない」と振られた私は引きこもった。死にたくなった。



***


 今度は貧しいメイドのエミリーになった私。


 私は自分で自分を貶めているのだ。

 

 貧しいからといって、太っているからといって、スタイルが悪いからといって、美人でないからといって、親がダメだと後ろ指さされるからといって、私は自分を貶める必要はないのに。


 でも、王子が私をまっすぐに見つめる煌めく瞳の前に、自分を晒すことをためらう。後ずさって一目散に逃げたくなる。


 愛しているのに。


 私は貧しくて太っていて、孤児といわれるメイドだから。


 生きていると噂される父は暴力をふるう人らしい。そんな父から祖母は私をさらってきて育ててくれた。その祖母もいない。母ももういない。


 イザベルの言うことが全てではないのに、イザベルが私に言ったことが棘のように刺さって取れない。



 王子とメイドの私。

 全然ダメ。


 貧乏というだけで、人間が劣るという考え。その忌まわしい考えがこれほど残酷に突きつけられ、私が染まってしまって、自分を劣った人間で恥ずかしいと感じるとは思わなかった。


 私は自分の存在が恥ずかしくて居たたまれない。


 貧しいというだけで、これほどの劣等感に苛まされるなんて。


 泣けてくる。



 王子の温かい胸の中で行為の後に泣いたのは、幸せなのに、そんな自分が嫌だったから。


 彼は優しくて、知らなかった私を発見してくれた。


 私は彼の初めての人になった。


 でも、貴族社会ではメイドはメイドなのだ。


 どこまでも…。


 



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