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血癒島  作者: 野良クリ
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第八話「地獄の幕開け」

 巡視船から二台のゴムボートが出発する。血癒島の浜辺にゴムボートが上陸。契約兵と米軍の特殊部隊員が砂を踏締める。浜辺にはパラソルやビニールシートなどが散乱している。浜辺近くの海は赤く変色しており大勢の人間の血を吸ったことが窺えるが、死体が見当たらない。


 その場の全員が装填ハンドルを引いて離して、ガチャという音とともに一発目を薬室に送り込む。


「気味が悪いな」

「そうだな」

 ヴィーシャとおっさんが顔を見合わせる。

「おっさんと意見が合うなんて今日は雪でも降るのか?」

「おっさんじゃねぇ。ロイだ。年上は敬って名前で呼べ」

 ヴィーシャがロイを無視して地図を確認しようとした時「きゃぁああ」という悲鳴が近くから聞こえてきた。生存者がいるらしい。


「ロイ、目標地点に先行しろ。我々は救助に向かう」

「任務に生存者の救助はない」

「大人なら見捨てたが声からして子供だからな。大人の私たちが助けなくてどうするんだ?」

「あの時からなにも変わってないな。一応、ルーシーを監視として付ける。ルーシー怪しい動きをしやがったら頭をぶち抜け。上には敵に変貌したって伝える」

「了解」

「ひどいな」


 ロイが部下を引き連れて目標地点である新姫咲病院本館に急ぐ。ヴィーシャ一行は声のする場所に向かう。そこには血癒学園―創立100年の島唯一の高校―生徒数124人、全国海外から入学する学生もいる人口の少ない島の中では廃校の危機に瀕していないくらいには成功している学園の校舎と寮が建っていた。


『ヴィーシャ。学園の屋上にアンノウンと生存者の姿が見えます。エネミーたちが屋上のドアの破壊活動に躍起になっています。生存者が襲われるのも時間の問題』


 学園から少し離れた丘上にルーシーの姿がある。対物ライフルのスコープを覗き込んでいる。ルーシーが愛好している対物ライフルはバレットM82だ。


「分かった。ルーシー、引き続き監視を頼む」

 ブラックヘブンでは敵か生存者か分からない者のことをアンノウン。敵のことをエネミーと呼称している。アンノウンは英語で不明や未知といった意味があり各国の空軍海軍では国籍不明機をそう呼んでいる。


 エネミーは文字通り敵という意味がある。


「屋上に行くぞ」

 ヴィーシャはルーシーの報告を聞き終わるとP90を構えながら校内へと入っていく。近衛たちも後に続く。校内の壁や床は血に汚れ、所々に肉片が転がっている。


「ようこそ私の楽園へ――」

 エネミー(教師)が現れる。咽喉部を無理矢理抉られたのか肉がごっそり奪われ、虚ろな目をしているが、階段を下りてきて踊り場に立つ。のどをえぐられている状態では空気が行き来するぴゅぴゅという音しか出ず、かろうじて一部分のセリフだけヴィーシャは理解できた。


「――とにかくあんたらには絶望しかないってこと。さようなら」


 壁から無数の腕が生えてきてダリルの体を破壊する。死体だけあって腕力は人間を遙かに凌駕。ダリルの体がこねられた粘土のように変形する。


「頭を正確に撃ち抜け!! 数が多いっ」

 ダリルを天国に送ったヴィーシャが叫ぶ。


 廊下の前方後方から多くのエネミーが包丁やバットなどを手に襲いかかってきた。エネミーは走っているためすぐに距離が狭まる。


「階段上からもエネミーが多数接近」

「教室に入れっ」

 ヴィーシャが教室に飛び込む。窓を叩き割り中庭(校舎に四方を囲まれていてベンチや円形の花壇が配置されている)に移動する。かつては憩いの場だったのだろうに、今は血臭が漂う処刑場のような場所と化していた。地獄だ。


 レイフとヘクターが串刺しのオブジェクトとして教室の扉前に配置された。ヴィーシャたちが中庭に行くまでの時間を稼ぐために、奮戦していたレイフとヘクターの喉から鮮やかな血がドクドクと流れる。


 レイフとヘクターの死体には箒が刺さっている。


「射手だ!」

「小鳥っ煙幕を張れ」


 射手を排除して二階の教室に入った近衛が呟いた。

「ひどすぎる。これが特殊な環境ってやつなのか......」


 教室に竹刀を持ったエネミーがやって来た。

「射手の次は剣術者か。面白いかかってこい」


 ヴィーシャとグレンそして支援班の面々が敵の注意を引いている隙に近衛と小鳥が教室を抜け出す。そして屋上に続く階段を上る。屋上の入り口のドアをドンドンと叩いている複数のエネミーにM67 破片手榴弾を投げつける。


 エネミーたちの四肢が爆風によって千切れ、釣られた魚のように舞い上がった。


「突入っ」

 近衛が爆風によって折れ曲がったドアに体当たりをして破壊する。近衛と小鳥が屋上に移動する。



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