第二十一話「作戦終了」
ヴィーシャ一行は研究所のメインコンピュータからデータを抜き取る。その時に実験(希乃に関する)の記録映像を見たのだが、あまりにも非人道的だ。
拷問に対する耐性訓練を受けてきた近衛でも耐えられない狂うレベルの所業だ。
科学者はいや、人間は正当性(言い訳程度の効力しかない)があればどこまでも残忍になる。科学者の場合は人類のためという正当性によって葛藤もなくただ単純作業を行うかのように淡々と残虐行為が出来るようになる。
人類のためという正当性は自分の研究欲求を満たすための後付けの理由に過ぎない。人間は生まれたときから残忍なのだ。研究所にあった所長室に金庫があった。そこに特殊弾頭が入っていた。緊急事態が発生したときに希乃を殺すための保険として用意していたらしい。
近衛たちは別館に戻った。ヴィーシャが希乃を拘束する。
「近衛。見張りを頼むぞ」
「了解」
「氷室さん。救助ヘリの到着時刻は?」
『翌日、14:00時。海保に擬装したあなた方のお仲間が救助に向かいます』
「半年分の食料の備蓄を発見」
研究所に貯蔵されていたであろう災害用非常食や水そして米袋が病院の近くの複数の貨物自動車に。島中から集めたであろう肉などが冷凍車に詰まっている。
血癒島には広大な敷地を誇る牧場そして田畑があるため、占領してここで暮らしていくことも不可能ではない。旅行者や島の子供に交じって、政官財の子供の姿も見受けられる。生きていることを知らせればお偉いさんが勝手に空爆を阻止する。
近衛たちを倒していれば仮初めの楽園ではなく永遠の楽園を希乃は手にしていたかもしれない。血癒希乃とデータの受け渡しを終えたヴィーシャ一行は帰還する。