第十八話「別館」
「小児総合医療施設か」
別館には幼い子供と妊婦がいた。不安そうにヴィーシャ一行を見ている。
別館はどこも壊れていない綺麗だ。
「どういうことだ? 生存者が100人以上いるぞ」
見張り役のゾンビのような者が死角からヘレナに飛びかかり胸ぐらを掴む。ヘレナは左腕をエネミーの首に押し当てながら拳銃を顎下に持っていき撃つ。
脳が飛び散り子供たちの悲鳴が轟いた。
「っ」
ヘレナが顔を歪ませながら左腕を押さえている、痛めたのだろう。
「近衛。手当を頼む」
「了解」
「こちらヴィーシャ。子供の生存者を多数発見。空爆の延期を頼んで欲しい」
ヴィーシャが作戦本部(日本政府)と無線を繋げた。空爆するという情報を初めて知った近衛の耳がピクリと動いた。
『分かりました。助言を……72時間延期をすると重山総理が決断しました』
「エネミーが動きを止めました」
近衛は銃を構えながら正面玄関に立っている。本館からヴィーシャ一行を追いかけてきた、エネミーが別館から約30m離れた地点に止まり様子を伺っている。
「乱戦を恐れている?」
ヴィーシャが呟く。エネミーは別館内が戦場になることを嫌っているようだ。
「上がれ」
階段を上り屋上に出る。本館の院長室の窓ガラスを銃撃して粉々にする。
「助走を付けてジャンプしろ!」
パルクールアスリートのようにジャンプして近衛たちは院長室に入っていく。
ヘレナが机のウサギの置物の首をひねると壁が自動ドアのように開いた。エレベーターが出現する。