第十七話「新姫咲病院」
「妊婦を発見」
ヴィーシャ一行が屋根裏へと移動する。掃除をしたのか埃もなく綺麗だ。
「ロイ、そちらの女性は?」
「エネミーに拉致されているところを救った」
「拉致?」
「エネミーの連中、妊婦と子供はゾンビのような者にしない傾向が見られる。拉致って新姫咲病院に監禁しているんだ。理由は不明だ」
「ふむ……ロイは妊婦を連れて拠点に向かえ。その他の者は私に付いてこい」
新姫咲病院の敷地面積は東京ドーム3個分。
半年前に難病も治るという評判が広まったこともあり富裕層に人気がある。
「人影のない病院ってなんか独特の雰囲気があって怖い」
「そうだな。行くぞ」
新姫咲病院本館の中へ入っていくヴィーシャ一行。車椅子や書類などが散乱していて壁には血痕が付着。夕方ということもあってホラーゲームのような恐ろしい空間だ。
東階段から2階へ上がり病棟の通路に出る。
「白衣の天使が堕天使に変貌……可愛いのに勿体ないな」
通路の先。注射器(毒っぽい液体が見える)を手に持ち佇む看護師が、ぎろっとヴィーシャを見ると「お注射の時間ですよぉ」と言いながら近づいてきた。
「注射器持ってる!?」
注射嫌いのヴィーシャがブルブル震えながらナイフを投げる。看護師の頭に突き刺さった。
「新手」
カーテンをロープの形にした物を使って上階から患者たちが懸垂下降してきた。窓を突き破って通路に腕を組んで立つ。そして厳つい男が「私たちのアイドルを殺した罪は重いわ」と叫ぶ。
「アイドル?」
「患者にとっては看護師はアイドルなの! 罰として新しいアイドルになって」
患者たちがビシッとヴィーシャに人差し指を向けた。
「は?」
「ほら。病院には可愛い看護師が必要でしょ。それにロリっ娘の看護師ってじゅるり」
「いや、あそこにいるだろ。可愛い看護師が」
窓から見える別館の廊下にいる。人形のように棒立ちしている40代後半くらいの看護師をヴィーシャが指し示した。お局様みたいな風貌をしている。
「ババアは論外」
患者たちが右手を左右に振る。
「辛辣だな」
厳つい男が「死んで、私の看護師になって」と言う。
患者たちが点滴スタンドや包丁などの武器を持って襲いかかってきた。近衛たちは銃をぶっ放しながら後ろに後退する。そして東階段を下って2階から1階に下りると北階段に向かうがエネミーが待ち構えていたため上がるのを断念。
「別館の屋上から院長室に飛び込み侵入するぞ」
2階の院長室には隠しエレベーターがある。それを使えば地下の研究所に行ける。階段を上って院長室に行くのは無理だとヴィーシャが判断する。近衛たちは別館に向かう。