第十四話「希乃神社」
「神秘的」
希乃神社の鳥居をヴィーシャ一行が潜った。赤色を基調としている建造物と日本庭園が広がっている。参道を歩き本殿に到着する。
本殿の中にヴィーシャ一行が入った。
「?」
ヘレナが木の床の軋みに気がつく。赤い敷物をめくり上げた。床の引き手が露わとなる。それを引くと地下へと続く階段が出現した。下りていくと迷路のような通路に出た。
ヘレナが防弾チョッキのポケットから鈴を取り出すとチリンチリンと鳴り響かせる。そして静かに瞳を閉じ音の反響から地下の構造を把握する。
コウモリやクジラなどの動物は超音波を発して反響から周囲の状況を把握するエコーロケーションという能力を保有しているがヘレナの能力もそれに近い。
「警戒を怠るなよ」
地下通路は薄暗くホラー映画を思い起こさせる不気味さがある。懐中電灯の光とヘレナの案内だけが頼りだ。
「止まって」
分かれ道(右か左か)が出現。看板が立っており<希乃様に祈りを捧げよ。さすればどちらに進めばよいか道導を与えてくださる>と書かれている。分かれ道の上方には監視カメラと壁掛型スピーカーが設置してある。近衛は試しに膝をついて祈って見たが反応はない。
「ヘレナ。MAVを使って探索しろ」
ヘレナがMAVを操縦する。MAVが分かれ道の右側に入って通路の真ん中くらいまで進んだときガガガっと入り口の扉と出口の扉がエレベータのように閉まった。
MAVが閉じ込められる。ヘレナがどうしようどうしようとMAVを右往左往させていると通路の壁に無数の穴が開いて毒虫(弱い神経毒を保有)が大量に飛び出してきた。
「恐ろしい仕掛けだな」
ヴィーシャがMAVのカメラの映像を見ながら顔をゆがませる。虫愛好家の人間でも発狂するくらいのおぞましい光景が映っている。
この部屋に閉じ込められたら身体のあちこちに毒を注入されて動けなくなりそして体の穴という穴から虫が侵入して死ぬ。想像するだけでも気持ちが悪い。
「無理」
たぶん正解の通路だと思われる分かれ道の左側に入りたくないとヘレナが言う。分かれ道の右側左側が実は不正解で正解の通路は見えないように隠されている可能性も否定できない。
看板にどちらに進めばよいかと記載があるから、ないと信じたいが。
「近衛。行こうか」
ヴィーシャが目を潤ませながら近衛を見る。近衛とヴィーシャが分かれ道の左側の通路を疾走する。ガガガという音が入り口付近から聞こえてきた。二人は泣き叫び抱きしめ合いながら出口へと向かう。
出口の扉は閉じられていない。
(びびらせやがって)
出口から飛び出た近衛とヴィーシャ。部屋に移動する。部屋には手動で出口を閉じるボタンとトラップを発動と書かれたボタンがあった。部屋に誰もいなかったことを近衛とヴィーシャは喜ぶ。
「半年前まで人が住んでいた形跡がありますね」
近衛が部屋の壁に掛かっているカレンダーを見ながら言った。
部屋内にはフィギュア、ぬいぐるみ、テレビ、PS4(プレイングスタイルフォー)、ギャルゲーなどがあり女性らしさを感じさせるちょいオタク部屋だ。
ダンジョンを探索していたら現代風の部屋が出現してナニコレ? 雰囲気ぶち壊しなんだけどって感じの気分を近衛は味わう。
「近衛、これ」
ヴィーシャが棚に置かれていた写真立てを手に取った。近衛に見せる。
一人の美少女(金髪ツインテールの西洋と日本のハーフ)と夏音(巫女服姿)が仲睦まじく写っている。近くに関係者がいたことに近衛は驚く。