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血癒島  作者: 野良クリ
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第十話「遭遇」

「近衛、小鳥! 脱出するぞ」

 ヴィーシャとヘレナが屋上の入り口から入ってきた。ヘレナ以外の支援班員は戦死。チームメンバーもヴィーシャ、ヘレナ、小鳥、近衛を除けば全員敵の餌食になった。敵の脅威はヴィーシャの予想を上回っていた。


「フェンスの穴から飛び降りて車に乗ってください!」

 ヴィーシャとヘレナが飛び降り、軽トラックに乗り込む。


 屋上の入り口から複数のエネミーがなだれ込んでくるが、先頭のエネミーの足が吹き飛び、他のエネミーを巻き込みながら、階段を転がり落ち、踊り場に死体ピラミッドを形成する。


 ルーシーの狙撃だ。


「手榴弾っ」

 小鳥が踊り場にM67 破片手榴弾を投げた。ドカンと爆発する。近衛が錯乱状態の夏音を担ぎ上げるとフェンスの穴から放り投げる。ヴィーシャがキャッチする。


 全員搭乗したことを確認したヘレナがアクセルペダルを踏む。軽トラックが発進する。運転しているのはヘレナ。華麗なハンドル捌きとクラッチ操作でエネミーたちをかわして時にはひき殺して学園から脱出する。





 山道を近衛たちを乗せた軽トラックが走っている。風が肌をなでる。


 10分前。ロイの班から集落を進行中に襲撃を受け戦闘と無線連絡が来たが、それっきり連絡も来ないし応答も返ってこない。惨劇がヴィーシャの目に浮かぶ。


「態勢を立て直してから、集落に向かいロイたちを捜索する――」


 新姫咲病院はロイの班が消息を絶った集落の近くに建っている。


「――エネミーは我々の予想よりも遙かに強い。注意しろ」


「了解」

「どこに向かう?」

「そうだな……山頂の希乃神社に行け」


 希乃神社には伝承に登場する女性が祀られている。ゾンビのような者に関する何かしらの情報を得られるかもしれないし休息場所にもなる。


「さっきは酷いことを言ってすみません」

 夏音は暗い顔をしながら体育座りをしている。罪悪感を抱いているようだ。

「ううん。気にしないでください」

 小鳥が天使のような優しい微笑みを浮かべて夏音の髪をなでる。

「私、分かってた。あれは早織ちゃんじゃないって……見てきたから、友達が先生が操り人形になって人を殺す光景。私は気づかないふりをして死にたかった。だからあなたに酷いことを言ってしまった。許されることじゃない、私を守るために撃ってくれたのに……」


 小鳥は何も言わずにただ夏音を優しく包み込んだ。


「うぅ、うぐ、えぐ……っ」


 夏音は大粒の涙を流し始める。無線機から声が流れた。ヴィーシャがルーシーの声に耳を傾けた。


『虎と遭遇っざ、ザザー』

「ルーシー!」

 通信が突然途切れる。


「前方にゴリラ!?」

 ヘレナが叫ぶ。ゴリラが道路の右側の森林から飛び出してきて立ち塞がる。正面衝突は避けられない。二足歩行をしていることにその場の全員が驚愕する。


 人間以外にもゾンビのような者になった動物がいるみたいだ。ゴリラの身体の一部は数日前に死んだとは思えないほど腐敗が進んでいる。


「止まるなっ突っ込め!!」

 荷台のヴィーシャたちが一斉射撃をする。ゴリラがファイバーコンポジット製の防弾盾(二枚重ね)を構える。防弾盾に邪魔され、ゴリラまで弾丸が届かない。


 ファイバーコンポジット製の防弾盾は小銃の弾丸も止めることが出来る、軍隊および警察特殊部隊のために開発された防弾盾だ。日本ではテロリストに襲撃される恐れのある施設(原発や空港など)を防衛する部隊に配備されている。

 ちなみに日本の機動隊が使っているジュラルミン製とポリカーボネート製の盾は主に暴徒鎮圧目的のために開発されたため拳銃の弾丸しか止めることが出来ない。


「掴まれ! 振り落とされるぞ」

 ヴィーシャが叫ぶ。近衛が車外へ放り出されないようにブリムを掴む。


 ヘレナが自分を奮い立たせる。ゴリラが防弾盾を捨てると猛スピードで突撃する軽トラックを受け止めぐぐっと持ち上げた。そして道路の左側の崖に投げた。


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