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血癒島  作者: 野良クリ
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第九話「屋上」

 二つ結びの髪型の活発な印象の美少女が、苦しそうに呻きながら床に人形のように座っているショートボブのおとなしい印象の美少女を背中からぎゅっと抱きしめている光景が、近衛と小鳥の目に飛び込む。


「救助に来ました!」

 小鳥が二人の生存者に近づきしゃがむ。


 二つ結びの髪型の美少女が「早織を助けてください!」とすがりつく。


「こちらの女性は友達ですか?」

 小鳥がもうすぐ敵に変貌するショートボブの美少女を見ながら問う。


「はいっ早く救助してくださいっお願いします!!」

 早織はごほっごほっと吐血をしながら顔をゆがめている。しっかりとした応急手当がしてあるのに裂傷(擦り傷程度)によって死にそうになっている。引っかかれたり噛まれたりして何かが侵入すれば否応なくゾンビのような者に変貌する現状では早織を救う方法はない。残酷だが殺めるしかない。


『支援班の生き残りと合流し屋上に行く。脱出路の確保を頼む』


 ヴィーシャから通信が入った。近衛がペンチを使って屋上のフェンスを加工する。人が出入りできる穴ができる。そこから近衛が飛び降り五点着地する。職員駐車場へと走って行き車を物色するのだが、軽自動車と軽トラック(フロントドアに血癒学園と記載がある)しかない。


「もっとこう馬力があってデカイ車が良かったんだけど仕方がない。まぁそんな最強の車があっても盗めるのは軽トラックしかなかったんだけど。映画みたいに配線をつないでエンジンを始動させるなんて無理。結局鍵がないと車盗めないんだよなぁ」


 軽トラックは全教員が共同で使うことが出来る車のはずだ。職員室の教室等の鍵を保管している場所に鍵も運が悪くなければあると近衛は予想する。


 近衛が軽トラックの鍵をゲットする。エンジンを始動させた近衛が、屋上のフェンスに空いている穴の真下にある、校舎裏に軽トラックを止める。エネミーはヴィーシャたちに夢中のため道中遭遇することはなかった。


 小鳥が下ろしたロープを使って近衛が屋上へと戻る。屋上への入り口にはワイヤーが張り巡らされていた。ヴィーシャの指示で小鳥が設置したトラップだ。


 無理に通り抜けようとしたのか数十体のエネミーのバラバラ肉片が転がりそしてワイヤーからは血がぽたぽた滴り落ちている。小鳥がワイヤーを取り除く。


「がはッゲェエエエエエエ」

 早織が激しく咳き込み大量の血を吐く。そして動かなくなる。

「早織ちゃんっしっかりして!!」 


 近衛が狼狽えながら早織の肩を揺すっている二つ結びの髪型の美少女を死体から遠ざける。生徒手帳が落下する。名前欄に竜咲夏音(りゅうざき かのん )と書かれている。


「ふぁおはよう――」

 死体が目をこすりながら上体を起こして微笑む。


「――どうしたの?」

 死体が心配そうな顔をしながら夏音に近づく。


「早織ちゃん! 心配したんだよっぐぅ」

 近衛が夏音の襟首を掴んで後ろへと放り投げる。そして死体に拳銃を構える。夏音が近衛にしがみついて「早織ちゃんは違う! 化け物なんかじゃない」と訴える。


(確かに化け物には見えない普通に喋るし表情も豊かだ。でもこれはゾンビのような者なんだ。人間じゃない。分かってはいるがためらってしまう、撃つのが怖くなってしまう)


「夏音さん――これはもう早織さんではなくただの死体だ」


 小鳥がH&K USPを構えて引き金に指をかける。死体が小鳥を見ながら「殺さないでっいややめて!」と命乞いをする。一瞬苦悶の表情を浮かべ小鳥が発砲する。


「いや、いや......いやああああああああああああ!!」


 夏音が地面に横たわる死体を抱き上げ小鳥を罵倒する。近衛と小鳥はゾンビのような者の恐ろしさを嫌と言うほど理解した。もしも自分の家族が仲間がゾンビのような者になり今みたいに命乞いをしてきたら撃てるだろうか? 二人は自答する。

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