魔法の詠唱
お読み頂き有難うございます。
なろうに限らず、多くの作品で、無詠唱とか詠唱破棄とか呪文省略とかいう技術やスキルがありますが、それ以前に、魔法に詠唱が必要だという理由づけをしていますか?詠唱の本質は、イメージでも契約でもなく「言葉」です。言葉とは、誰かに意志や情報を伝えるためのものですが、その詠唱とやらは、誰に向けた言葉なのでしょうか?
声、つまり空気振動という物理現象に、意味を感じるのは受け手側です。誰が受けて、どう世界に反映させるのか。神や天使、悪魔、精霊その他の超自然的存在が、特定の個人ならともかく、不特定多数が世界中の様々な場所で呟く言葉を、いちいち聞いているのでしょうか?
大災害が発生して、多くの民衆が一心に祈って、その願いを神が叶えた、とかなら判るのですが、何千万、何億分の一の声を聞き届けるほど、その超自然的な存在は、暇なのでしょうか?
正直、詠唱が必要と思っていること自体が、承認欲求を拗らせているようにしか思えません。仮に、言葉自体に意味がある、所謂言霊がある世界だとするなら、言霊の土台となるシステムを設定しなければなりませんが……それこそ、超自然的な存在が強力に管理している世界である必要があります。ある意味、どこかの超監視社会を作った国の様です。おお、怖い怖い。
その他、詠唱と魔力の関係についても、設定しておく必要があります。詠唱という行為で、魔力を消費するか否か。魔力を使わないなら、ただの言葉と変わらないのに、それが何故超自然的な存在に伝わるのか。であるならば、通常は詠唱自体で魔力を消費すると考えた方が理解しやすいわけですが、それなら無詠唱って何なんでしょうね、という話です。この辺りに矛盾を感じないなら、まあ、好きに設定して下さい。
なお、個人的に考える詠唱に意義がある世界設定の一例を挙げると、世界の管理者がいて、高度かつ自動的に管理が可能な機能があって、詠唱によって許可された力を引き出すというような設定ですね。平たく言えば、コンピュータゲームの様な世界です。で、詠唱は一種のパスワードです。魔法を使う者の権能が向上するに従い、詠唱が省略出来るようになります。無詠唱は、かなり管理者に近い存在であれば可能になります。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。