ギューっと
王都にあるグリーンホッパーと言うチュー○やチョコパ○を扱う店舗前に停めて有った銀色で、カクカクした見た事が無い魔導車から、懐かしい娘の匂いがして立ち止まってしまった。
あの娘の匂いが一番強く付いている魔導車の右側のドアに背中を預けて座り込みながら、あの頃の事を思い出している。
10年以上前、河原の小屋で、寂しがり屋で私をぎゅっと抱きしめながらで無ければ眠れないあの娘を、
あの日も一緒に毛布に丸まって抱き合って眠ったのに朝、目覚めたら消えてしまっていた『アキ』・・・
アキは、あの娘が消えた三年近く前、河原に突如現れた。
焚き木を拾って来て、お湯でも沸かそうかと考えていた私の目の前に、光りの粒が集まってアキが現れたのだ。
ビックリして居ると、あの娘が私のお腹の辺りに飛び付いて来て
「ワンワン、ワンワン、ギューする」と言った。
こちらの言葉では無いが、好かれている事は、解った。
数年前の私は、まだ若く人化が苦手で黒い中型犬の姿で、やっと二足歩行が出来る状態だったのだ。
普通、ルナティックの人族は獣人を嫌い、この娘の様にいきなり抱きついて来たりは先ずやらない。
あれが数年間、姉妹の様にして暮らす事になるアキとの出会いだった。