装備しろ装備。
『バッ……バレなくて助かった……!』
どこからかそんな酷く焦燥したような、いや。
間違いなく焦燥しすぎて精神が擦り切れた後の魂の一言が聞こえてきた。
えっ……?
これには蛍吹もびっくり仰天である。
何故ならば!この元男!
「…っ!うわああぁぁぁぁああ⁉︎⁉︎」
「っっ!チッ!なんだ!どうした!」
魔神君のこと、綺麗さっぱり忘れております☆
ていうかシェスの謎の舌打ち怖ェ……
ひっそりと医務室から抜け出し、どうしても気になってしまった禍々しい本を、半ば発狂しながら手に入れようとした蛍吹に、魔導書から危険(貞操)を感じた魔神が取り憑く。
これが蛍吹がトイレをブチかまし、謁見室に入る10分程前の出来事である。
まあ、普通に考えて生きている内に一瞬たりとも忘れることが無さそうな出来事である。
というか、コレをなんとも思わないやつは人間じゃないだろう。
つまり、蛍吹は人間じゃない(QED)
…という訳ではたぶん無く。
その後から始まった質問会によって仕入れた、莫大な情報の山に脳がそれ以前の記憶を奥側に引っ込めてしまったのが原因である。
全て忘れた狂人は、普通の人に戻っていた。
ならば、ただでさえ不快感煽るような謎の声が聞こえて来たならば、この反応も正常といえるだろう。
だが、それを命名、弱小君が許すかどうかはまた別の話である。
『き、貴様!この我の華麗な死んだフリを剥がしやがって!ぶっ○すぞオメェ!
くっ!《チェーンジ!》』
もはやキャラブレブレである。アイデンティ○ィ○島かな?
どこかのカエルになった特戦隊隊長が使いそうな技ですね♡
そして入れ替わる一柱と人っ子一人。
慌てて弁明する。
「あ、いや我……じゃない。ワタシなんにもナカタヨ!」
なんなら慌てすぎてカタコト。
「どうしたんだ急に。何の大声だったんだ?」
「なんか凄い情けなさそうな声でしたけど」
さらりと毒を吐くジアス。
この子遠慮無いな。と心の中で思う。
因みにさっき再会した時、ジアスは普通に案内役を買って出たので、蛍吹は謁見室に入る前に言ったセリフに恥じらいを感じましたとさ。
「あ、あ〜。えーと…いや!ちょっと驚かせようと思ったんでな!それだけ……」
「はぁ…?特に何か無いなら良いんだが…無茶はするなよ?
ジアスの言った通り驚かせようとする様な声じゃ無かったからな?」
情けない声……情けない声……
ジアスの放った言葉が頭でエコーのように鳴り響く。
シェス様それは少々ワタクシに効きますわ。
蛍吹は精神的に血反吐を吐いた。
ホタルニは 五のダメージを 受けた。
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