シェスサイド:蛍吹の霊圧が…消えた?
よし!書き方良くなってきたんじゃないですか!?
え?そうでもない?そっすかぁ……
……アレ?
「なあなあジアス」
「はい。なんでしょう?」
さっき訊いた騎士の名前を呼ぶ、正直違和感しかない。名前と、性格というか態度が一致しない。ジアス……名前だけ聞くともっと大胆不敵で豪胆無比な感じがするんだが……
っと……それどころじゃないな。
「蛍吹がどこ行ったか分かるか?気付いたらいなかったんだが」
「えっ?…あれ⁉︎いない⁉︎」
反応から察するにどうやら気付いてなかったようだ。まあそんな気はしてたけどな。
「えっと……一体いつからいなくなってたんでしょう……?」
ジアスから困惑が伝わってくる。うむ、私も全く同じ気持ちだ。
「……さあな。私もいつからいなくなってたのか分からん」
「え⁉︎シェス様もですか⁉︎」
ジアスの困惑の色が増す。まあ言いたいことは分かる。
私は確かに今気を抜いていた。言えばフリーだからな、常日頃から気を引き締めることもない。
だか仮にも戦場に身を置く者だ。気を抜いた状態であっても周りにいる人の気配は掴んでいる。もちろんそれは蛍吹にも当てはまる話だ。それなのに、だ。
いとも容易く私の探知から抜け出した。今の心情を一言で表すとしたら、おかしいの一言に尽きるな。しかもそれだけじゃない。
「それにしても……今までずっと気付かなかったというのは少々変ですね」
「ククッ……返す言葉もないな」
「あっ!いえ!今のは違くて!」
「ああ、分かってるよ」
思わず自嘲してしまう。が、それよりもまず先に考える事があるな。
私は勿論ジアスだって周りの気配は把握していた。蛍吹の気配が今までちゃんと“後ろにいた”事だって分かっている。だが今さっき急に霧散するように気配が無くなった。
これも当たり前だがあり得ない事だ。
能力者なら分からないこともないがあいつはまだ新人で無能力の筈だ。ここから考えられるのは“他者による能力を用いた人攫い”かな。んなことするやつ……あ、五人くらいいるな。
「とりあえず探してくる。私の能力ならすぐ見つけられるだろ」
「いや、シェス様は方向音痴なのでは……」
「あー……まあいざとなれば城中を駆け回るさ」
「いやいや、ダメですよ」
「そうですよししょ……先生」
ダメか……どうするかな。絶対に城の外には出てない筈だ、なんたって心当たりがある五人中の五人全員が引きこもりだからな。
護身用に剣は持たせてあるが正直能力者相手にはほとんど無用物になる。急がないとだな。
よし、まずは来た道を…………ん?
「……え?」
「あ、どうも……ただいまです」
「あ、あぁ。どこ行ってたんだ?」
あれ?おかしいな、また気配が掴めなかった?というかこいつなんか……
「トイレに行こうと思って一旦離脱したんですけどトイレの場所知らなかったなーと思い至って戻ってきました」
おう。すんごいペラペラと……用意されたような言い訳だな…
……やっぱおかしいぞ?
「おい蛍吹」
「あん?…あ、いや……なんだ?」
「なんでお前そんなに体調悪そうというか……顔色悪いんだ?」
今の蛍吹の顔は真っ青とまでは行かないが青い。足取りも変に覚束無いというか……
……もしかして、人攫いの事後なのだろうか。
ふむ?にしても変だな。変続きすぎな気もするが、この“ヴァルハラ”で体調を崩すなんてあり得ない話だ。
ここはセーフゾーンだ、体調は常時万全、怪我もしない。まあ精神に関してはまた別なんだが、手遅れじゃない限り回復していく。
とりあえずこのまま歩かせる訳にはいかない。
「ほら、乗れ。ジアス頼む」
そう言ってしゃがんでみせる。まあ蛍吹ぐらいの身長ならおんぶくらいできるだろ。私でも。
「はい!蛍吹様、失礼します」
「……ん?ああ、いや自分であるけぇるぞ」
「いえ、私から見ても今は少し危ういかと……」
そう言って一度振り払われた手をもう一度伸ばし、軽々と持ち上げ私の背中に託してくる。
いや軽。新人ってこんなもんだったかな?めっちゃ軽いんだが……
「あー、重いだろうシェス、降ろしてくれても良いんだぞ?」
「いや、逆に軽すぎる。これからは身長を伸ばす為にもっと食った方が良いぞ」
「……ッグゥ」
ん?なんか聞こえたな、元男だから軽いという言葉は多少とはいえショックだったかもな、コンプレックスになりそうだしあんまりこの手の発言は控えるか。
「ほら行くぞ。我が主には一応なんとか言っとくから」
「……ああ。すまんな…なんでか分からんが倦怠感と背中らへんに悪寒が」
「おけおけ。任せとけ」
言葉を半ばで切って言う。ううむ。精神的なものかな?自律神経がどーのこーの。
医務室連れてくか…………どこだっけな?
「シェス様。案内要りますか?」
ジアス……よくできた子だ。
「ああ、頼む」
なるべく急ぎではあるが……正直私が我武者羅に走り回るより案内付きで行く方が早い気がする。
そうして医務室へ向かう……来た道引き返すのってなんか損した気分になるな。いやまあ今回に関してはしょうがない事ではあるんだがな。
見てくれてありがとうございます!




