『話しかけたら人が急にバイブになるんです。助けて』
少し遅い投稿、申し訳ない!
まあ投稿時間決まってる訳じゃないんですけどね?
出血大サービスです。
我等悪役サイド、親子担当人員、俺……蛍吹とシェス一行。(ついでに騎士さん)
俺たちはこの“ヴァルハラ”(さっき聞いた今いる街の名前)の中心部にドッシリ根を落とすように存在する城の内部に(正面から堂々と)潜入した一行。
正直気分で言えばマジでそんな感じ。まあ騎士さん曰く許可取ってるから潜入でもなんでも無いらしいけど。そもそも案内される不審者ってなんなんだ。
どうやら目的地(我が主のいる所)は玉座の間という如何にもな一室らしい。
どうやら前にシェスから説明されていた我が主の歴史語りを聞きに行くらしいどん。それ聞いただけで行く気失せたわ。
だって言い換えてしまえばさ? 歴史の先生にわざわざ教鞭を振るわれに行くんでしょ? 気が乗るわけなくないか? (前に言ってた貴重な情報云々はどうした)
とはいえ決まりは決まり。無視しても俺は良いんだけど周りに迷惑が掛かるのであれば余程の事でもない限り逆らう事もないだろう。
気は乗らないけどな。
そういう訳で赤いカーペットが敷かれた廊下を騎士さん先頭で歩いていた俺達。
勿論静かに騎士さんの後ろを歩くだけでなく、世間話を挟みながら進むんだが俺的には世間話よりも広大な城内の方が気になって仕方がない。
アレが気になって足を止めてコレも気になって足を止めて……
そうして繰り返していたら迷子になるのは約束された当たり前の事だった。俺からすればなぜ誰も俺を気にしなかったのか不思議でしゃーないがな!
はい。迷子です。悲しい。ぴえん。
何が悲しいって? 大人の俺が迷子になるってトコも誰も俺を気に留めて無かったってトコも気になるものにホイホイ釣られるトコも全部です。
だってさ、だってさ……伝説の剣? が飾られていたんだぞ? 古めかしい魔導書が飾られていたんだぞ?
……まあ廊下に飾られてた訳じゃないけど。
暇だし、迷子になるまでのスムーズな流れを紹介するとしますか!
廊下を真ん中突っ切って歩く一行。
「良い天気ですね?」
「ん? そうだな」
「シェス様は今彼方からお帰りでしたか?」
「ああ」
「なるほど、という事は……そちらの方は新人様で?」
「ああ、蛍吹だ。私の弟子? 生徒だ」
「あ、なるほど。それで付き添っているのですね」
「ああ……あ、そうだ。明日は訓練場って空いてるか?」
「申し訳ございません……私は門番の任を頂いております故、城内の予定などは……」
「あっと、そうか。すまんな」
「いえいえ」
シェスと騎士さんはお喋りに興じているようだ。うむ……入る隙が無い!
今でこそ演技で普通に喋れていた俺だが実は普通にコミュ障である。二人でならちゃんと喋れるのだが三人以上となると急に口数が減る典型的なイキリコミュ障なのである!
……因みにイキリコミュ障にはもう一形態いる。
そいつは、何人いてもイキリ散らし、どんな人にも関係なく偉そうに講釈を垂れる上、周りが不快になる事を平然とやる。なんとも迷惑な人種なのである。そう思うと蛍吹はまだマシなコミュ障なのだろう。
そうして話に入れない時間を過ごしているとどんどん興味は別の物に移っていく。
飾ってある謎の絵画から始まり、廊下の壁の装飾、点々と設置してあるドア、覗くと目に入る光る剣、別の部屋の前に行き、覗くと目に入る禍々しい気配を放つ本。ソレ等はガラスのケースに丁重に入れられ、貴重に管理されていた。
もちのロンで俺の視線は釘付け。
この剣はなんなんだ? と釘付け状態が解けた後、気になる思いに逆らわず調べてみる。ケースの横には札が貼られており《神の祝福を受けし歴代勇者の剣》と書かれていた。
マジか⁉︎
その一言に尽きた。まじまじと剣を見つめようとするが、普通に光が眩し過ぎて目を背ける。
なんだ? なぜ光っているんだ? もっと装飾とか見たい! とか思ったが何も出来ず後ろ足引かれる思いで部屋から出る。
……廊下に出る訳だが、こんな貴重な経験を体験してしまった俺としては他の部屋も気になってくる。
チラッと覗くだけ! そんな小さな小さな欲望はこの世を去り、新たに生まれた後継は他の部屋にもファンタジー感溢れる伝説のコレクション達があるのでは⁉︎ という逆らえぬ程の大きな欲望となって俺の行動順を操作する。
そう……遅れた分シェス達を追わないと、その思考を部屋の探索の方が良い、という煩悩溢れる考えにすり替えられていたのだ!
突如動く自分の足! 向かうは隣の部屋! 頭を支配するのは自らの欲望!
最早先生の事は頭に無い! 自らの中学二年生に従って体を動かす!
手をドアノブに掛ける。そして回し、前に押す! その足取りは明日へ向かう希望の一投!
目に入って来たのはさっきの様な神々しい光が溢れる空間ではない、寧ろその逆、夜を詰め込んだ様な暗澹とした部屋。壁の色はシミひとつない白だというのにこの部屋からは正反対の闇を思わせる。その原因はきっと、さっき同様ガラスケースに貴重に管理されているあるモノによる影響だろう。
ソレは見る者に暗黒を思わせた。
ソレは見る者に深淵を思わせる。禍々しい一つの本だった。本の表紙の皮はボロボロで、かなり年季の入った物だとわかる。周りを闇で侵食していくような禍々しさは表紙に染みている赤み故か。これが本が開いた状態だったならばきっと俺は吸い込まれる様に駆け寄り、何が書かれているか確認しようとしただろう。
危ない危ない。
まあ開かれてなくとも駆け寄って行くんですけどね!
カックイイ! カックイイ!
昔からダークヒーローや格好いいヴィランに強い憧れを抱いていた俺としてはもうハートにどストライクである、すっかり禍々しい本に心を奪われてしまった。
他に何かこの本について情報は無いものかと思い周りを見渡す。すると先程と同じように横に札が貼られており、そこには《古依封印されし禁書》と書かれている。
名前と本の解釈一致でますます自らの中に眠る中学二年生を刺激され、興奮してきていた蛍吹に
ーーーある声が頭に流れてきた。
『出せ』
短い、文字に起こすなら二文字。
たったそれだけの言葉に蛍吹の体は異常な反応を見せる。体からは冷や汗が溢れ出てくる。寒い訳でも無いのに震えが止まらない。顔からは色が抜け落ち、恐怖に顔が歪む。
『三度目はないぞ? 出せと言っている』
その声からはまるで黒板や皿を爪で引っ掻き、削った時に出すような不快感を詰め合わせたような印象を受ける。今受けているものが忠告だと理解するや否や、体は後ろへ飛ぶように、いや……実際に大きく跳びのき尻餅をついた。
『……つまらん』
そして…………体を蝕む不快感が消え去る。
滲む冷や汗は治らないし震えは止まる事はない。だが……何かの支配を抜け出した事による安堵は、自らが感じた恐怖を大きく緩和した。
そして……何故かその後に大興奮する。
やっばい‼︎ 今完全に封印された何者かが俺を認識して語り掛けてたよな⁉︎
アレなんなんだろう⁉︎ 誰なんだろうなぁ! 邪神とかそんな存在かな⁉︎ やっべー‼︎
という感じで……最早こいつは狂っているのか? と思わざるを得ないような反応だ。ここまでくると異世界に執着とかそんなレベルでは無いのではなかろうか?
「は…はは! はぁ……今のは一体……カッコよかったなぁ……もっかい会いたいなぁ。あ、会った訳じゃ無いのか。あの声もっかい聞きたいな〜」
もはや狂ってしまったと言って良いだろう。ここにビデオカメラがあったらさっきの反応を見せたいくらいだ、何がどうあってもカッコいいと思った人がする反応ではない。
流石の俺も今の自分がどこか興奮状態でおかしいのは分かっていたので少しクールタイムを挟んだ……一分程。
ーーーーーークールタイムーーーーーー
クールになった俺から言わせてもらうと………………カッコいいは覆らん‼︎
蛍吹は 正気に 戻った?
見てくれてありがとうございます!
ブクマありがとうございます!
ブクマしてくれているのを見るとリアルに飛んで喜んでます。まあ飛んでると言ってもスキップなんですけどね。この場合跳ぶが正しい。




