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臆病




私の話が終わると執事長のステファンは頭を抱えてしまった。

グレーの一部の隙も無く整えられていたはずの髪が少し乱れてしまった。


ステファンにこんなに表情があったとは知らなかった。


「まずは、お医者様の診断結果を聞いてから諸々、判断することにするわ。

懐妊を確かめるとともに、現在のお子がどれほど成長しているのか…いつ頃に宿ったのか…。

そして、旦那様の記憶について…」


ステファンは姿勢を戻すと、頭を抱えてしまったことが恥ずかしかったのか一つ咳ばらいをした。


「はい。出過ぎたこととは思いますが、ミア様…に保護されていた際にジョエル様を診察された医師の捜索を、ミア嬢の身辺調査とあわせて行っています。

…そして、本件はクロッシェン侯爵様に報告いたします。」


「えぇ…。お願いね。」


ステファンは実家の侯爵家から婚姻の際に私と共にアドラー家に入った。

お父様から、この公爵家に何かあれば知らせるように言われているのだろう。


お父様は本件の顛末を聞いたらどんな反応をされるだろうか。

……きっと不甲斐ない娘だとおっしゃるわね。


きっと、たぶん、侯爵家まで呼ばれるだろう。


反応を想像するだけで疲れを感じてしまう。


お父様に報告する構文を考えながら先ほどまでの二人の様子を思い出す。


貴族の中では婚姻後に愛妾や恋人を持つ者もいる。

私もそれは心づもりとして持っていた。


政略結婚で、子どもを2人産んだ後はそれぞれの恋人と…


しかし、仲の良い両親を見て育ち配偶者しか側に置かない二人というものに憧れもあった。


それにジョエル様のお気持ちを聞いた後からは…こうなるなど、つゆほども思っていなかった。



「その…奥様のことをお忘れになられたというのは、事実なのでしょうか」


「…ええ。誰だ?とおっしゃっていたわ。

 クリフのことやお義父様のことは覚えているご様子でしたけれど」


「では、すぐにでも奥様のことをお伝えしてはいかがでしょうか

 奥様のおっしゃったように今、倒れられてもここには医師もいます。

 伝えない理由がございません」


「…わかっているわ。実を言うと…怖いの。

 本当のことを伝えた時の旦那様の反応が。…いえ、ダメね。

 今、臆病になっている場合ではないわね。

 折を見て、私から伝えるわ。ミア嬢をお部屋に案内したら、教えてもらえるかしら

 旦那様と2人で話したいの」



思い出したら…


旦那様と私は


未来は


どうなるのかしら





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