2020年末SS 年越し蕎麦を食べたいの
「年末だ。年越しそばを食べたい」
俺の呟きに、「またか」という顔をする兄。・・・まぁ、この前は醤油だったものね。
《年越しそばって何スか?》
トコトコと俺の足元まで来て尋ねてきたのは俺の従魔のクロだ。
上目遣いで見やるその姿からは、クロがCランクのモンスター『ダークネスウルフ』とは思えない程に威圧感が無い。
「まぁ、エリシアが突然変なことを言い出すのは普段通りなんだけどさ・・・」
「お兄様。それを私の普段通りにしないでください」
兄の失礼な言葉にすかさず否定する。しかし、「えっ、違うの?」と兄どころかその場にいた全員にそんな目を向けられた。・・・あんた妹の事をどんな風に思ってんだよ。おい。
俺はジトーッと兄を睨むと、兄は慌てて俺のご機嫌を取ろうとして来た。必死すぎでは無いか?我が兄よ。
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数時間後。
「それで、何を落ち込んでるんですか、お嬢様は」
「それはですね・・・」
俺はショックで頭を抱えていた。醤油は作った。出汁を取るのは鳥の骨で代用できる。しかし・・・
「何で蕎麦が無いんだよ〜・・・」
そう、肝心の蕎麦が見つからなかったのだ。
「・・・くぅ、今年は諦めるが、来年こそは絶対に年越し蕎麦を食べてみせる!」
俺はグッと拳を握り、新たな目的を一つメニューのメモ欄に刻んだのだった。