醤油が欲しい
今回の話はデビュタントで悪魔と戦ってから数日経った時の話です。
「醤油が欲しい」
俺の呟きを聞いた兄は、俺の呟きがいきなりすぎて少し固まり、その硬直が溶けた後、思い出すように呟いた。
「ショーユって確か極東って呼ばれてる神国カグラの調味料じゃなかったっけ?」
「えっ!有るんですか!?」
「・・・有るのを知ってるから食べたいって言ったんじゃないの?」
兄の呆れた声に思わず首を背けると、そこには我が弟であるリオルム・フォン・アルゲートが居た。
「お姉様。一体どうしたの?」
リオルムは可愛らしく、首を傾げた。俺は思わず抱きしめてしまった。
「お、お姉様、恥ずかしいですよぉ・・・」
「あ、ゴメンね。リオルム」
俺は慌てて抱きしめていたリオルムを解放した。
「苦しかった?」
「う、ううん。大丈夫」
「・・・それよりもエリシア。確か料理長がショーユの作り方を知ってる筈だよ」
「えっ!?本当ですか!?では早速聞いて来ます!!」
俺は何故か顔が赤くなっていたリオルムを放ったらかしのままに調理場へと向かうのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数日後……。
「・・・それで、早速魔法まで使って作ったのか」
俺の成果を見て、父は溜息を吐いた。
「悪魔を倒した英雄の力を使って何をしているのか・・・」
「でも、美味しいんですよ、これ!」
俺はそう言って胸を張る。父はまた、溜息を吐いた。
「・・・そんなに溜息を吐くなら、この醤油を使った私の手作りの夕食は要らないですよね」
「いや、有り難く頂く」
即答で答える父に、俺は少し白い目を向けてしまった。
因みに、その日の夕食はみんなに好評だった為、俺は満足したのだった。