第五話
「・・・っ!そうだ!封印は!」
私はふと思いついた事を叫んだ。ベルは、私の言葉に怪訝そうな顔をしながら答えた。
「まぁ、その手もいいとは思うけど、一体どうやって封印するの?」
「魔力ももうスッカラカンだし」と、呟くベルに、私は言った。
「封印は、そのものを縛り付けるものと、術者の力量が必要。なら、魔王と同等である力を持つベルが、命の源と言って過言では無いこの大地に縛りつければ、たとえ災厄の魔物であるジェヴォーダンも封印出来るはず!」
「だから、もう魔力がないって」
「なら、私のを使って!」
私はそう言ってベルへと手を伸ばした。ベルはギョッとした顔になって聞き返した。
「・・・本気?」
「もちろん本気だよ」
「他者に魔力を分け与えるのは自殺行為だよ?それでも・・・」
「くどい!既に覚悟はできている!それに死ぬつもりは毛頭無いし!」
「はぁ、分かったよ」
私の本気を感じ取ったのか、ベルは溜息を吐きながら私の手を取った。
「『マナドレイン』」
「クッ・・・!?」
ベルの魔法発動を告げる呟きとともに、私から、何かが抜けていく様な感覚があった。
(そうか、これが魔力か。魔力はあるのに魔法が使えないから魔力を消費するってどんな感覚なのか知らなかったけど・・・。これはキツイ!)
少しフラついた私を見て、ベルは心配作法に見つめるが、それでも、魔力を吸収するのはやめなかった。
私が、視線で「続けて」と伝えたからだ。
「・・・もう充分だよ。こんなに魔力があるなんて、フォーリンドももう此方側だね」
「それって化物って言いたいの?」
「いや、超越者って意味で・・・って、私って化物だと思われてたの!?」
そう言ってベルは、そんな場合では無いはずなのに、詰め寄ってきた。
「はいはい、そんな事より今はあっちの方をしないと」
「私にしてはそんな事じゃ無いんだけど・・・。まぁ、確かにそうだね。じゃ、足止めよろしく☆」
「・・・分かった」
私は一言了承の意を告げると、腰に下げていたもう一つの剣を引き抜き、ジェヴォーダンへと向け、駆け出した。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
《グルゥオウッ!?》
突如腹の下から斬り付けられ、ジェヴォーダンは戸惑いの色を含む鳴き声を上げた。
「まだまだぁっ!!」
私はそれには御構い無しに、ただひたすらに剣を振るった。
「よーしフォーリンド!行っくよー!」
ベルは私に向けてそう言った。私はベルの言葉に合わせて大きくジェヴォーダンから距離を離れた。
そして・・・
「『フォースシール』!」
《グルゥオウッ!?》
ジェヴォーダンからすれば、予期せぬ方角から攻撃を受けたのだろう。驚愕と焦燥の入り混じった様な、しかし、それ以上に怒りの滲む鳴き声を上げながら、ジェヴォーダンはベルによってその土地に封印されたのだった。