第一話
ザァー…………
その日は雨が降っていた。突然現れた獣に村のみんなが殺された。私だけが運良く生き残ってしまった。
ザッザッ
「・・・これは酷い」
足音と共に女の人の声が近づいて来た。
「ッ!?まさか生き残りがいたなんて」
顔を上げると柔らかそうな金髪と空のような青い瞳の女性がいた。
「・・・誰?」
ボンヤリとした頭で私は尋ねた。
「私?私は、ベルフェゴール。旅の神官・・・みたいなものかな。君は?」
「私は・・・フォーリシア、フォーリシア・グランド。もう、家族も誰もいない。みんな、死んじゃった」
私がそう言うと、ベルフェゴールは少し顔を歪めて、「そう」とだけ答えた。
「・・・何処にも行く場所が無いなら、私と一緒に来ないかしら?」
「一緒に・・・?」
私はまだ、ボンヤリとしたままの状態で聞き返した。
「そう、私と一緒に」
「・・・別にいい」
「え?」
「もう、私には何も無いから」
私の言葉に、ベルフェゴールは呆れたように溜息を吐くと、私を立ち上がらせた。
「なら、私が貴方に新しいものを沢山あげる。・・・うん!それはとてもいい考えでしょう!」
彼女は一人で満足したように頷くと、私に向かって微笑みながら言った。
「じゃあ、最初にあげるなら、愛称がいいと思うの。だから私はこれから貴方のことをこう呼ぶね!」
彼女はとても美しい笑顔を浮かべながら言う。
「フォーリンド!貴方の名前のフォーリシアと家名のグランドから取って、フォーリンド!」
いつのまにか雨は上がっていた。空には虹の橋が架かっている。
私はこうして、強くて、優しくて、格好良くて、そして、悲しい彼女と出会ったのだった。