今回のことに関する、荒岩亀之助からの説明コメント ー相撲小説「金の玉」シリーズ8ー
利菜とのことに関する荒岩の説明コメントを書き足します。
四神会する場所 第四部。
完結のあと、最終章「5 四日目」のみ、ところどころ加筆しました。
既読の方も、最終章のみご再読の上、お読みいただければ、有り難いです。
荒岩関なら、任せておいて大丈夫。利菜さんが傷つくことがないよう、メディアに対応してくれるだろう。
伯耆富士は、そう思った。
だが、今日の国技館の前でのことは、多くの人にしっかりと見られているし、その映像ももうネットにアップされている。
説明難しいだろうなあ、と、懸念した。
その日の夜のうちに、今回の件に関する荒岩亀之助の説明コメントが、ネットにアップされた。
利菜さんは、元々、豊後富士関と交際されていました。
私は、お二人が交際されていた時、偶然出会ったことがあって、その時、豊後富士関に、利菜さんのこと、交際している人です、と紹介されたのです。
ただ、三ヶ月くらい前だったでしょうか。おふたり、別れてしまったのです。
理由ですか。
豊後富士関、女性にとても人気がありますでしょう。利菜さんのこと、とても好きなのですが、利菜さん以外の女の子とも、まだ遊びたいという気持ちがあったみたいですね。
利菜さん、それが許せなくて、別れることにしたそうです。
でも別れたあと、利菜さん、ずいぶん、悩まれたようです。
利菜さんが面識のある力士は、豊後関以外には、私だけでしたので、色々と、主にメールでですが相談されたのです。
利菜さんと私が婚約したことにしようというのは、私のアイデアです。
利菜さんには、そんなことできません、と言われました。
利菜さんのような可愛い人と、嘘であっても、ひととき、婚約者と名乗れるのは、私も嬉しいですから、と言って、利菜さんに同意してもらいました。
それに、私は、利菜さんが婚約したというニュースが流れたら、豊後関、自分の利菜さんに対する気持ちに気がつくに違いないという自信がありました。
私の関係者数人の方には、利菜さんと私が、本当に婚約したという報告をしました。
嘘の婚約であると言ってしまったら、この作戦、意味がない、と思いましたので。
その関係者の方々にはこの場をお借りしてお詫びします。
はい、作戦、成功しましたね。
今日、国技館の前で、莉菜さんがなぜ泣いていたかですか。もちろん、嬉し涙ですよ。
私は、そのこと分かっていたので、良かったですね。と、声をかけたかったのですが、ここは、豊後関が声をかけないと、と思って、見守っていました。
でも豊後関も、あの時点では、利菜さんが、なぜ泣いているのか分からなかったので、声をかけられなかったというのが、あのときの状況です。
ええ、先ほど、照富士部屋の中で、親方、おかみさん、横綱も同席されているなかで、豊後関と利菜さん、おふたりは、お互いの気持ちを、しっかりと確認されました。
でも正直に言うと、このまま豊後関、ご自分の、利菜さんのことがとても大切なのだ、という気持ちに気がつかなければいいなあ、なんて、ちょっぴり、そんなことも思っていました。あ、このコメントは不味いかな。
でも豊後関、羨ましいです。
はい、今日は、私が勝ちましたね。せめて相撲だけでも豊後関に負けないよう、今後とも精進して横綱を目指します。