2話 ミエル
長らくで、そんでもって訳分からない小説になってしまった。(もとからそういう小説だったわ)
――私には、赤い生物が見える。
それが何なのかは分からない。ただ分かるのは、四足歩行の奇形な単調の生物。いや、そもそも生物なのだろうか。それすらも分からない。
見た目はつまらなく、存在は恐ろしい。声も何も自発的には発さない、発するものは、私に向けられた無機質な視線だけ。それが恐ろしく、つまらない。
形も変わらない、本当に、一つも。それは赤い影、赤い――置物。
いつ何時でもいる。それが私に与える影響は知らないが、あるとするならば、私の正気をそぐことぐらい。慣れない存在が目の端にいる、いつもいつでも、それだけで正気がそがれるのだと私は分かった。
いつから、と言われると分からない。生まれた瞬間からか、それともここ最近か。それさえも分からない。
兎にも角にも、目の端にいるそれを気にしないことはできない。そうしてしまうときはきっと、私が私でなくなったときだろう。つまるところ、精神がそこをつきたとき。柔らかく言うと、私の気が狂うとき。
そんな時など、来てほしいものではないが、このまま続いてしまうと来てしまうものなのだろう。
そう考えると、背中の方がいやにぞくりと震える。
そう、震える。その中でも彼の赤い生物は――赤い静物は、その場にとどまる。
学校についても、ついてくる。どこに行こうとしてもついてくる。
そんなある日、私は思い立った。彼の生物でさえたどり着けない場所があるのだと。あくまで予想、馬鹿げた話。だが、それを信じてしまうほどまでに、私の神経は脆く、弱くなっていた。
精神の脆弱。それが今の私。脆くて壊れたからこそ――思い、立つ。
――今日はどうやら、一段と風の強い日らしい。