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神童君は異世界で本気を出すようです。  作者: Sonin
第一章 狂王と愚王
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第4話 嘘つきたちの説明会

タイトル通り、完全に説明“回”です。

  Side:Tsukiyo



 無理しない方がいい、か……いつ以来だろうな、そんなこと言われたのは。


 今日で文野との取引の期間が終わった。あいつが引き受けてくれて本当に助かった。[閲覧]があるかないかで情報収集の能率もそもそもの情報量も大きく変わるからな。


 もともと、あいつと俺は仲が良い訳ではなかった。むしろ嫌悪されていた、と思う。理由はまあ、なんとなくわかっているんだが。

 だからこそ、「取引」という形をとった。無償の善意が通じるような間柄じゃなかったし、「頼み事」など引き受けてくれなかっただろう。

 それでも引き受けてくれる確証はなかった訳で。だから、ここは素直に「運が良かった」と言っておこう。


 まぁでも、恐らく再び頼ることになると思う。この未知の世界で生きる上で、情報というものはかなりの重要性を持つ。だから、あのスキルの有用性は計り知れない。

 俺の身の上話は、そのための投資でもあった。協力を得るには信頼が必要だ。その信頼を得るためにどうするか。俺が思うに、自身を曝け出すのが最も手っ取り早い。人間、自分に腹を見せる相手に敵意は抱きにくいものなのだ。腹を見せる犬に嫌悪感を抱くか? つまりそういうことだ。

 まぁ、過去語りをしたのはそれだけが理由ではないのだが。



 一つは、今言ったように信頼を得て次回の協力を得やすくするため。


 一つは、俺自身のため。あの事実に向き合い、乗り越えなければ俺は変わることができないだろうから。「トラウマを乗り越える」というのは過去を克服すること。ならば、その過去を話しただけで動揺するようではダメだ。少し荒療治が過ぎるかもしれないが、俺に甘いこと言っている余裕はない。何が起こるかわからないのだから、後手に回ることような事態は避けるべきだろう。できることは率先してやんなきゃ。


 最後の一つは、文野のため。結果だけ見れば一つ目と変わらないが、その目的はむしろ正反対だ。

 その目的とは……あいつの呪いを解くきっかけになることだ。あいつの呪いは、この世界で生きていく上では致命的過ぎる。



 呪い(拒絶)……自身の称号による能力値補正を無効化する。他人に心を許し、信頼することにより解呪可能。



 恐らくだけど、このままだとあいつの呪いはずっと解かれない。誰にも頼らず一人で背負い込んで、抱え込んで、塞ぎ込んで、いつか潰れてしまう。

 だからこそ、こちらから行動してきっかけを作る必要がある。あいつは人と関わることを意識的にかは知らんが避けている節がある。ならば周りが近づいていく他にない。お節介かもしれないが、それがあいつの心を開いて、呪いを解くことに繋がると思うから。


 にしても、能力値の補正って称号ありきだったんだな。最近知った驚きの事実。

 そんなことを考えてる間に部屋に着いた。扉を開けるとーー


「遅いぞ、月夜」

「待ちくたびれちゃったよ」


 呼んどいた二人が既にいた。

 さてと、始めるとしますか。



  ◇◆◇



「集まってくれてサンキューな。今日はこの一ヶ月で分かったこととか、調べたことなんかを共有しようと思う。

 じゃあ早速、明上からよろしく」


「オーケー。けど、最初に謝んなきゃならないことがある。実はここ一ヶ月、訓練に掛かりきりになっちゃって、ろくに情報収集をできなかった。ごめん」


「べつにいい。明上があまり動けないのは想定内だ。気にすんな」


 これは本心だ。………おい誰だ! ツンデレとか言ったやつ! 出てこいや!!


「そう言ってもらえるとありがたいよ。えっと……そう、だから俺は王宮で働く人たちに話を聞いてまわったんだ。それで主にこの国に関する話を聞けた。

 まずこの国、リルバ王国はかなり昔からあるらしい。その繁栄の裏には勇者の存在があったんだ。


 勇者は、最初の一人を除いた全員がこの国から召喚されていた。俺たちと同じように。でも、異世界から人間だけを指定して呼び出すなんて普通はできない。ここで、初代勇者が残したものが重要になるんだ。


 一つは勇者が帰還に使ったとされる魔法陣だ。知ってると思うけど、魔法陣は特定の効果を発揮することに特化した魔法の発動方法だ。威力は高いけど、大掛かりな準備が必要になるから戦闘には向かない。


 それは置いといて、初代勇者はその効果の高さに目をつけた。戦闘じゃなければいくらでも準備に時間をかけられるからな」


「そして長い研究の結果、ついに魔法陣は完成。姫と仲よく元の世界に帰った訳だ」


「あぁ、それが初代勇者が残した表向きのもの。これを利用して勇者召喚なんて儀式を行っている。

 けど実はもう一つ、勇者の持っていた特殊スキル[空間魔法]もこの国の繁栄に関わっているんだ。初代勇者のスキルだけあって、その力は凄まじかったらしい。攻撃、防御、転移なんかもこなせるんだってさ。

 それで、特殊スキルを後世まで残す方法。それは、子に親のスキルを受け継がせるしかない。そして[空間魔法]を継いできた民族。それこそが現リルバ王国の王族だ」


「ちょっと待って……普通子供ができたら、親が面倒見るよね。初代勇者が子供を異世界に残すなんてことするかな?」


「しないだろうな。要するに、そのスキルを受け継いだ子の親は姫じゃなかったということだろう。国の繁栄だけのために「勇者との子を作れ」みたいな命令が出てたんじゃないか。もしかしたら、姫も最初はそうして勇者にあてがわれただけなのかもな。確かに効率的ではあるし。そうして、代々[空間魔法]を継いできたってことか。

 ところで明上は、この話を誰に聞いたんだ?かなり深い事情まで聞いたみたいだけど」


「あぁ、それもちゃんと後で話すよ。

 で、話を戻すけど、月夜の考察が合ってるかどうかはわからないな。その辺の話は失伝してるらしいんだ」


 まぁそうだろう。自国に都合の悪い情報は流さない。国家運営の基本だ。


「とにかく、魔法陣と空間魔法を手にした王国は研究を始めるんだ。異世界から「勇者」を呼び出すための、ね。

 そして完成したのが召喚術式と呼ばれる、魔法陣と空間魔法を組み合わせた術式だ。でも、それはノーリスクで発動できるものじゃなかったんだ。異なる世界から人間を呼び出す。そんな神の如き芸当、その対価は……






   人の、命だ……ッ!!」






 明上は絞り出すような声で確かにそう言った。




 生贄を必要とする技術。




 それは、この世界では「禁術」「外法」などと呼ばれる技術だ。その中にはろくなものがない。


 当然、今は全て使用が禁止されている……はずだったんだが。どうやら、勇者召喚が禁術であるということは一般には知られてないようだ。


 しかし、重要なのはそこではない。その禁術が実際に行使された、という事実。つまりーーー


「そう、俺たちが呼び出されたことで犠牲になった人がいるんだ。その人の名はーーーアイリス・L・オブリーシュ。リルバ王国第三王女だ」


 王族が生贄にされる。そんなこと、普通はありえない。ただ人間の命が必要ならば、適当な罪人や奴隷がその役を担うだろう。

ならば、正確に言えば必要なのは人の命ではない。王族にしかないもの。それ即ち、


「[空間魔法]、か……」


「あぁ……『生贄』という言い方は正しくないな。

 勇者召喚の行使には空間魔法が使える人が必須だ。だけど、その人は召喚の後に『呪われる』んだ」


「呪いか……そう言えば講義でもやったね。具体的にはどうなるんだい?」


「全能力値半減。その上、残る寿命も半年ほどになってしまう。

 今ではもう余命5ヶ月を切っているって……」


 恐ろしい。俺は素直にそう感じた。この世界ではステータスを制限される、というのはそのまま死へ直結すことを意味するのだ。文野もそのせいで役立たず扱いされている。しかも、あいつとは違い、何もしなければ死に至るという。


 というか、こんな話をするということは……


「で、月夜の疑問に答えるとな。俺がこんな詳しい話を聞いたのはアイリス様からだ」


 デスヨネー。


「おいおい……随分と無理したな。いくら勇者とはいえ、王族でもないやつが王女に会うなんて」


「俺だけ何もしない訳にはいかないし、何より……俺たちとそう歳も変わらない女の子が苦しんでいるんだ。精神的にだけでも楽にしてあげたいと思うのは当然だろ。

 それで、お見舞いにいったらそれなりに仲良くなってな。こんな詳しい話が聞けた、という訳さ」


「で、その王女様も無償で話してくれた訳じゃないんだろ?」


 そう。仮にも一国の王女様が、国の秘匿していることまで話してくれたのだ。王女様が果てし無く馬鹿なのか、面倒事を押し付けられるかくらいしか思い浮かばない。前者がいいなぁ~


「よく分かったな。そう、その代償としてある頼み事をされたんだ」


 あ、後者でしたかそうですか。


「数年前まで、現国王様は民の事を第一に考える良い王様だった。けどだんだんと、民よりも国を、利益を優先するようになっていったんだ。冷酷になった、と言い換えてもいいな。

 そして、王宮内の大臣や兵士は誰もそれに気付いてないみたいなんだ。あたかもそれが当然であるかのように従ってる。最近来た人は違うみたいだけど」


「なるほどね。じゃあ頼みっていうのは……」


「国王様の変化の原因を突き止めてほしい、だって」


「だけどそれは、一国の王として普通のことじゃないのか?少なくとも俺はそう思うし、それだけで疑うのは無理があるとは思うんだが」


 王はときに残酷な判断を求められる。それが正しい選択であることは少なくない。一人の人間として情を優先するか、一国の主として秩序維持のために厳しくあるか。後者が王のあるべき姿だと俺は思う。


「それでも俺は、調べてみる価値はあると思う。『魔王侵攻以外の問題』はまだ何も見つかってないんだろ? 何かヒントが見つかるかもしれない。

 それに、一人の女の子が自分のお父さんを心配している。それだけで協力する理由には十分だよ」


 この主人公め。


「なるほど……じゃあ引き受けたのか」


「もちろん。今のところ俺個人で、だけど。で、二人はどうする?」


「うーん……」


 正直、王族とのコネは欲しい。協力も吝かではない。吝かではないんだがな………。

 例の計画(・・・・)を進めたいからしたくてもできない、というのが正直な所だ。


 それに……あの国王の異常性も考慮しなければならない。

 以前、[千里眼] [解析] を使って国王のステータスを覗こうとしたことがある。そして[千里眼]を使って国王を見た瞬間、国王はーーー



 ーーーこちらを振り向いたのだ。



 さらに、嘲り混じりの表情でこちらに話かけてきた。声は聞こえなかったが、唇の動きで何を言ったのかははっきりと分かった。



 『何か用か』



 俺は即座にその場から離れた。本来向こうからは見えないはずなのに、反応して見せたのだ。あれは異常だと俺の勘も告げている。だから、


「悪いがパスだ。あれと()やり合うのはリスクが高い」


「そっか。深影は?」


「うーん、ボクもやめておこうかな。危ない目には極力遭いたくないからね」


「分かった。……一人で何とかしてみるさ」


「まぁあれだ。解呪の方は手伝ってやるよ」


 思った以上に落ち込んでしまったようだったので、気休め程度でも励ましてやろうかと、俺はそう声をかけた。

 しかしこの台詞を聞いた瞬間、二人は驚いた表情になった。なんだ?


「……呪いって……解けるのか?」


 恐る恐る、といった様子で明上が聞いてくる。あ、そうか。一般には知られてないやつか、これ。


「あぁ、過去の実例もそこそこ存在する。条件さえクリアすれば解呪は可能だ。まあその条件ってのが難易度ルナティックだったりするんだがな……」


「そうなのか……良かった……」


 深く安堵したようだ。そもそもさっきの頼みも、王女が心置きなく逝けるように頼んだものらしい。


「じゃあ、早速調べてみるけど……あんまり期待はするなよ?」


 そうして[千里眼]で王女様を探す。……いた。今は眠っているようだ。女性の寝込みを覗き見なんて趣味が悪いどころの話じゃないが……すみません、失礼します……



 ―――――――――――――――



 名前:アイリス・L・オブリーシュ

 種族:普人族

 性別:女

 年齢:15

 状態:呪い(神罰)


 Lv. 12

 HP 31/31(−31)

 MP 20/20(−20)

 STR 12(−11)

 VIT 10(−10)

 INT 15(−14)

 MEN 15(−15)

 AGI 14(-14)


 称号 : 【リルバ王国第3王女】

      【犠牲(イケニエ)

      【世界の理を超えし者】

 特殊スキル:[空間魔法Lv.21]

       [純心]

 スキル : [人族語理解]

       [礼作法Lv.MAX]

       [舞踏ⅡLv.5]

       [水属性魔術Lv.9]


 ―――――――――――――――




 更に「呪い」を[解析]っと。



 呪い(神罰):世界の理をねじ曲げた神罰。全能力値を半減させ、保有者の命を少しずつ蝕んでいく。光属性魔法により解呪が可能。

 余命:151日



 き……



「キッタァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアア!!」



「うわ、うるさい!」「ちょ、急にどうしたんだい?」


 はっ。ついテンションが上がってしまった。

 それよりも、


「おい明上。お前の手で王女様を救えるぞ!」


「そ、それは本当か!?」


「あぁ、お前の持つ[光属性魔法]だ。大当たりじゃねえか」


「確かなんだな?」


「スキルレベルが足りないってことはあるかもしれないけど、間違いないはずだ」


「なら、今から……!」


「待て、明上よ。今王女様は寝てるんだから、明日にしよう。今行っても迷惑だろうよ」


「ぐっ……そうだな。

 でも良かった……これで彼女を救えるのか……」


 胸をなでおろす明上。これで、勇人が目の前で死にゆく人を見捨てるなどということはなくなる。俺らは勇者としての責務を、無事に果たすことができるのである。




  ◇◆◇




「じゃあ俺の報告は以上だ」


 意外と時間がかかったな。けど、有益な情報もそこそこあった。しかし国王の異常か……頭に置いておこう。


「じゃあ次はボクの番だね。ボクは訓練をちょくちょく抜け出して王宮の外で話を聞いてまわったりしたんだ」


「あれ? そうなのか。全然気づかなかった」


「うん。[認識阻害]を使って、[認識阻害]を使って! 抜け出してたからね。気付かないよ、普通は。断じてボクの存在感が薄いとかじゃない。うん。

 さて、まずは二人にこれを渡しておくよ」


 天霧は何か勝手に弁解を始めた。……気にし過ぎだと思うんだがなぁ……。ツッコミ待ちなのだろうか。確かに騎士団長にバレすに抜け出したというのは驚異だが。

 それは置いといて、渡された袋に入っていたのは、何枚かの硬貨。ジャラジャラジャラジャラ。


「これはこの世界で使われている通貨。単位はG(ゴールド)。初代勇者によって考案されたものらしいよ」


 お兄さん何やってんだよ……。ドラ○エじゃあるまいし……


「深影、これどうしたんだ?」


「三人分の異世界の道具や服を売ってきたんだよ。スマホ、学ラン、文房具、その他諸々。いやー凄かったよ。とある古代遺跡から発掘された魔道具や衣装です、って言ってオークションに出すだけでお金がガッポガッポ」


 やはりえげつなかった。こんなに堂々と嘘をつくとは……流石としか言いようがない。地球の諸々を手放すのは少々抵抗があったが、俺は帰るつもりもないし、天霧なら変なことには使わないだろうと思い預けたのだが。


「まずはこの世界の通貨についてかな。存在するのは六種類。鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、ミスリル貨だよ。下から、10G、100G、1,000G、10,000G、飛んで10,000,000G、もっと飛んで100,000,000G。

渡した合計額は金貨三枚、銀貨三枚だから99000Gだね。ちなみに、Gの価値はほとんど日本(向こう)の円と変わらないと思ってくれていいよ」


 それから天霧は、日本になかったものや、こちらに来て大きく値段が変わったものについて説明していった。武器や嗜好品の類の相場は新しく頭に入れなければならないか。


「さて、次だね。実はさっき渡したお金だけど、少し使った後なんだよね」


「……まぁ、かなり中途半端だったな。それで、それに何に使ったんだ?」


「なんでボクが悪いことしたみたいになってるのさ。もちろん必要経費として使ったよ。まず、二人は冒険者って知ってるかな?」


「名前は聞いたことがあるかな」

「まあ、一応。詳しくは知らん」


「うん、冒険者っていうのは何でも屋みたいなものかな。これも初代勇者が始めたものらしいね。国からは独立した組合、『冒険者ギルド』に所属していて、依頼を受けて報酬をもらう職業だよ。最近は魔物が活性化してるから、傭兵みたいな依頼が多いみたいだね」


 なるほど……要するにテンプレか。

 ただ……


「天霧、肝心の金の使い道を聞いてないぞ?」


「あはは……実はこの話、冒険者ギルドで聞いたんだよね。それで、話聞いたら………強制的に冒険者にさせられちゃった♪」


「コノヤロウ……ちなみにいくら使ったんだ?」


「ぎ、銀貨三枚だけ……」


「3000Gも使ってるじゃねぇか……」


「ゴメン、面白そうだったからつい……」


 呆れた……。まぁ反省はしているみたいだから良しとするか。明日にでもなれば忘れてるんだろうけど。


「で、他に何か聞けたのか?」


「うん、周辺諸国の情況なんかをね」


 そう言って天霧は地図を広げる。


「まず、ボクらが今いるのがリルバ王国。この大陸で最大の国家だね。最近まで帝国と戦争をしてたらしいけど、今は休戦中。

 その帝国は皇帝を頂点とした独裁国家。王国の西にある。今の皇帝は戦争を好んで仕掛けるらしいね。休戦したのも軍備を整えてまた仕掛けるためって噂だよ。信憑性はそれなりかなー。

 で、ヴィガーズ公国。この国はもともと王国に属していたんだけど、国王のやり方に納得できなくなって最近独立してできた国って話だね。しかもその旗揚げをしたのが国王サマの実の兄らしい。これはもしかするとただのゴシップ好きの捏造かも。

 あとの国は名前くらいしか分からなかったよ。宗教と政治との結び付きが強いシオーネ教国。亜人たちの国、リーオ連邦。エルフたちの国、エミオス・エルフェイムなんかがある。


 そして北側には『世界樹』とか呼ばれる大樹がある。その辺りの樹海は人間がいることすら許されない程にヤバい(・・・)らしいよ。危険度A以上の魔物しかいなくて、あそこに立ち入れるのはランクA以上の冒険者や、精鋭騎士レベルだけだって。

 で、魔王や魔族のいる土地はそのさらに北にあるらしい。攻め込むなら相当な戦力が必要だけど、勇者が召喚されたから大丈夫だろう、だってさ。期待されてるねえ。

 ボクの報告はこれくらいかな~」


 エルフか……。ファンタジーの代名詞だよな。是非見てみたい。やはり胸はないのだろうか。

 てか、魔王のいる位置結構分かってんのね。驚いたわ。


「深影も真面目に仕事してたんだな」


「そりゃあボクだってふざけるときくらいわきまえるさ」


「深影の台詞はいまいち説得力に欠けるんだよな……

 でも戦争か……俺たちも駆り出されるのかな」


「可能性は捨てきれないな。召喚されたのも魔王を倒すよりもむしろそっちが本命かもしれないし」


 こういう異世界モノだとよくある話だ。警戒はしといていいだろう。まあ、今のところはその兆しは見えてない。


「でも、俺は人殺しに手を貸すつもりはない。人のために剣を振るうって決めたんだ」


 またこいつは……

 その幻想を、俺がぶち○す!!


「あー、決意に水を差すようで悪いが、人殺しの覚悟はしとけ。この世界では地球より圧倒的に命が軽い。この手で、犯罪者に手をかけることもあるかもしれないからな。もしものときに『敵だけど殺せません』なんて隙にしかならないぞ。

 てか、前にこの話はして、その危険性まで懇切丁寧にお教えしたはずなんですがねぇ……」


「その上で、俺なりに考えたんだよ。確かに月夜の言うことは正しい。きっと、この世界生きていく上での正解はそうすることなんだろうな。

 だけど、それを許容するかどうかは別問題だ。俺が俺でいるために、俺は不殺を貫いてみせる」


「そうか……

 聞くが、それがお前の決断なんだな?」


「ああ」


「自分に酔っているわけでもないんだな?」


「もちろん。これが俺の意思だよ」


「はあ……そこまで決めてんなら、俺はもう何も言わんよ。こだわりすぎじゃないかとは思うけどな」


 本当は力ずくでもやめさせたい。けど、これはこいつの信条、意地だ。俺に口出しする資格はない。

 心配だ。取り返しのつかないことにならなきゃいいけど。まあ、なるようになるか。


「じゃあこれでおしまいだね。最後、月夜クンどうぞ」


 さて、俺の一ヶ月の成果を見せてやろう。


Vocabulary


G(ゴールド)

初代勇者が考案した、パルティアでの世界通貨。偽造できないように細かい装飾がされている。全部で六種類あるが、ミスリル貨は滅多に出回らない。


・冒険者

国から独立した組織、『冒険者ギルド』に所属し依頼を遂行する人々。FランクからSランクまでの7段階あるが、Cランク以下が7割を占める。

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