第27話 VS王国軍with勇者
前回までのあらすじ
・リルバ、宣戦布告だってよ
・洗脳とかなきゃ!
・天霧、ヴィンデミアへ向かう
・月夜、貴様いったい何をした!?
ぬるっとスタート。
Side:Tsukiyo
領主館にて、部屋にこもって作業をしているとノックも無しに勢いよく扉が開けられ、痩せ型の男が入ってきた。
「カマルのダンナ! アレマジでヤバいっすね!」
「あぁ、お疲れ様でした、ジェイクさん。それで、首尾はどうですか?」
入ってきた男は領主のフィリップに個人的に雇われた冒険者の一人、ジェイクだった。
あの日フィリップに脅迫したすぐ後、正式に彼らの指揮権を拝借した。フィリップが雇っていたパーティは3組あり、ジェイクはその中で最もバランスのとれた『黄金伝説』というパーティに所属している。……うん、突っ込みたいところだろうけど耐えてくれ。俺もウズウズしながらもなんとか我慢してるからさ。
そのジェイクの職業はシーフ。戦闘は得意ではないが、偵察や罠といったサポートに秀でているという特徴がある。主武装はクロスボウで、サブに短剣術を体得している。実力もそこそこで、最近Bランクになったらしい。
「どうもこうもありますかい! あんなもん渡されて失敗するようなやつがいたら、そいつあ冒険者やめた方が良いっすよ」
「それなら良かった。じゃああいつら―――勇者たちの足止めは成功と見て良いんですね?」
天霧たちが来るまでに勇者を足止めするために、少し考えた。ただ時間稼ぎをするだけなら、俺が出張れば容易にできる。自惚れではなく事実として。だけどできることなら、俺自身はまだ表舞台には出たくない。再三言っているように、相手側が抵抗する隙も与えずにケリをつけたいからだ。それと功績とかの面倒事も勘弁だし。
だから俺は策を弄する。後ろから人を動かして、敵を追い詰めるのだ。その準備に少し時間はかかってしまったが、その分最終的な作戦は形になってきた。
「大丈夫だと思いやす。毒を思い切り受けたのはおよそ30人、かすったのも数えれば半分は下らないんじゃないっすかね? さすがにそんだけの損害を受けたら回復に努めるでしょ。理性もちゃんとあるっぽい様子でいやしたから。
今ごろはあっちに残ったリタたちが間隔を空けずに牽制を続けているかと」
「なら大丈夫ですね。ありがとうございました。
すみません、こんなこと急に頼んでしまって。特別報酬は別口でお渡ししますので」
「マジっすか!? おっしゃー! 頑張った甲斐があった!
ゲヘヘ……何買うかな……」
そして彼らのうち、隠密行動や狙撃に腕のある者に勇者の進行の妨害をしてもらった。プランの少しの遅れを調整するためである。おかげさまで、準備は九分五厘整った。あとは最終調整して策を兵士の方々に叩き込むだけだ。
ちなみに余談ではあるが、俺がジェイクたちに渡した薬は俺のお手製だ。[調合]スキルを鍛えてるときにいろいろ試したらできてしまった。確かにそんな効果が出そうな材料揃えたけどさ……毒って。作るつもりなかったのにー。怖いわー。……ホントダヨ。
毒の強さは段階的に10に分別されるのだが、一般に出回っている解毒剤が効くのは毒性レベル5まで。下から数えて5番目だ。危険度Cくらいの魔物が使うレベルである。対して俺が作っちゃったのはレベル7。毒性の強さで言ったら……まぁ、即効で動きを封じるレベルなんで、お察しください。一応致死性は無に等しいから、まだ良心的なんだけどね?
もう1つ、渡しておいた、大気中の魔素を乱す効果のある粉末もハンドメイドだ。魔素を乱されると、体内に魔力を有するモノ……つまり生物全般は、魔力の感知・放出ができなくなる。まあ抜け道はあるんだけどね。これはどっかの本(文野に聞いたやつ)に載ってたもので、作成に少し手間のかかるものだった。だがその対価に見合うだけの効果を持っている。粒子はごく小さく無味無臭で、気づかれる危険性も少ない。
王国軍の中に感知に秀でた人間がいることは知っていたので、その対策としてジェイクには持っていってもらった。
「ダンナは、進み具合はどうっすか?」
「基礎はもう出来上がります。あとはこれを兵士の皆さんにお見せして、可能かどうか確認を取った後、最終調整をして完成です」
「それは……だいぶ進んでるって認識でよろしいんで?」
「ええ、そう思ってもらって結構です。ジェイクさんたちが危険を冒してくれたおかげですよ。ありがとうございました」
対勇者用に準備しているコイツも完成の目処が立った。感慨無量だなぁ……急にこの街に来ることになって、どうするのがベストなのか考えて、具体的な策を練って実行に移すところまできた。言うのは簡単だが、実際に行うのは難しい。まさしくその通りで、ここまで来るのに様々な苦労に悩まされてきた。
……嘘だけど。ちょっと盛ったわ。言うほど大きな問題はなかった気もする。まぁいっか。いいよね?
大事なのは、勇人たちを迎える準備が整うということ。さぁ来いよ、勇者ども。シリアスになんかさせないぞ? こんな戦争なんて、俺が茶番に変えてやる。
――――目にものを、見せてやるよ。
◇◆◇
……もう来るな、こりゃ。
昼前、俺は勇者たち含む王国軍がこちらへ向かって来る姿を見ていた。装備もばっちりキメちゃって、やる気満々マンかよ。そこはもうヴィンデミアの目と鼻の先。1時間もかからずにこの街へ到達してしまうだろう。
「はぁ……。よしっ」
[万里眼]を使うのを止め、冒険者たちを呼び出す。チリンチリン、と手元のハンドベルを鳴らすと、そう時間も経っていないのに続々と集まってきた。現金なやつらめ。
「何かご用でしょうか、カマル殿」
パーティ『陵丘の守護者』のリーダーの男が代表して尋ねた。
『陵丘の守護者』は昔からこの近辺で活動してる、古参パーティの一つだ。戦士職のアタッカーがいないので火力はないが、生還率に定評がある。盾持ちのナイトが多く、斥候役も一人しかいない。そのためこなせる依頼の幅が狭く、仕事を探していたところをフィリップに雇われたらしい。今まではあまり出番がなかったが、ここからはしっかりと働いてもらおう。
「えーと、もうそろそろ勇人……勇者と王国軍が来るので、通達をお願いします。作戦を開始しますので。くれぐれも気を付けて。
しつこいようですが、最初は必ず話す姿勢を見せるように言っておいてください。それが蹴られるか、あるいは何か起きそうだと感じたらそちらのタイミングで開始するように、と。その判断は現場に任せます」
「承知しました」
「じゃあ、皆さん。よろしくお願いします。ここを越えれば大分楽になると思うので、頑張ってください。もちろん、報酬も弾みますよ」
『おう(はい)!!』
いい返事だなおい。
「では、俺もやることがあるので。失礼します」
そう言い残して俺は部屋を後にする。観察を再開すると、順調にこちらへ向かって来るのが見える。特に変化は無い。強いて言えば、騎士団長が移動しているくらいか。流石に声は聞き取れないが、唇を読んだかぎり、おかしなことは話していない。
無問題の確認が取れたところで俺は外に出た。
勇者たちは王都からやって来る。つまり、ヴィンデミアの北方から。なので兵をまとめて北へ向かわせる。今から出発すれば予定通りの場所で相手方とかち合うだろう。
命を賭して戦わせるつもりは1ミリも無いが、戦う意思の薄さを不自然に思われ、警戒心を刺激するのは避けたい。一応保険として、最前列は一般兵の格好をした冒険者たちを固める。正面から何かされても多少は耐えてくれるはずだ。
今回作戦の要となるのは魔術師や魔法使いといったマジシャンだ。彼らは筋力がなく、一般兵の格好(量産品の金属鎧と武器の類)で集団に紛れることができないため、戦いの舞台となるであろう場所に予め潜伏してもらう手筈になっている。高レベルの盗賊職が[隠蔽]スキルで隠せば、スキルレベルの差がそこそこあることは確認済みだし、相手の索敵にも引っかからないはずだ。隠れる場所があるってのが、そこを戦場に設定した主な理由でもある。
そして俺は、辺りで最も高いところに位置取った。[気配遮断]を使えばバレることも無いだろう。何か起これば即対応できるよう、見晴らしのいい場所が一番だ。
そうして役者が揃うのを待つ。ここから見て左右に続く道路の右側から王国軍が、左から公国軍がやって来て衝突する。衝突は嘘だけど。ここから見ると彼我の人数差がはっきりとわかる。
両方とも進んでいるのは観えている。何分がかかっただろうか。じわじわと時間をかけて両者の間の距離は詰められ、そして遂に、正面から対峙する!
「私はヴィガーズ公国西方の街、ヴィンデミアを護る騎士を束ねる者。名はシモン! 貴様らは何者だ!」
先に声を上げたのはうちのシモンさんだ。地方都市の、500人ちょいのちっぽけな騎士団の団長ということで戦闘の技量があるわけではない。しかし人望は厚く、仲間との連携や軍隊の指揮を得意とする騎士だ。まさに団長向きと言えよう。領主が冒険者に頼っていることは騎士団を信用していないとも捉えられるのに、そのようなことは考えず、考えているとしても表には出さないで職務を全うするシモンさんのメンタルは、鋼のごとき強靭さだ。見習いたいね。
対して、相手方から一歩出てきた男には見覚えがあった。俺たちに戦闘の基礎を教えて、同じ教育者として先生と最も意気投合していた人物。王国軍団長のバルダさんだ。相変わらずの険しい表情を浮かべている。
王国側の将がバルダさんだということに驚きはなかったが、勇者たちが隊列の後方にいるのは意外だった。両軍がぶつかり、直接戦闘になった場合、当然軍隊の前列から戦うことになる。勇者たちが他の一般兵に劣りはしないことは確認済みだから、やはり勇者たちの運用は最後の手段だと考えているのか。
だとしたら……好都合だ。
「私はリルバ王国軍を預かる者、バルダと申す。宣言通り、貴国を攻め落としに来た。貴国は既に魔族による支配下にある! このままのさばらせておけば我が国の、ひいては人類の危機が訪れよう! ヴィンデミアの騎士共よ、剣を下ろすがよい。貴殿らは悪に加担しようとでも言うのか!!」
「否っ! 我らは悪にあらず! 根拠も無い憶測を理由に他国を侵略する自分こそ悪と知れ! 既に貴様らと交わす言葉は無い。貴様らと交わすのは剣のみで十分である‼」
「戯言を! そこまで言うのであれば我らが正義の力、その身を以て思い知るが良いッ!!」
二者による舌戦が交される。俺は離れたところにいながらも、戦の緊張感に当てられていた。人間同士の正義のぶつかり合い。天霧が聞いたら、イライラが積ることだろうが。魔物の放つ殺気とはまた別の恐怖が、意思がこの戦場に満ちようとしている。
だが。
だが俺は、それを止めるためにここまでやって来た!
大将二人は口上を述べると馬に乗ったまま自軍の奥へ戻って行く。いよいよ……いよいよだ。こちらに対して、数だけで言えば兵力は3倍近い。さらに向こうには勇者も30人近くついている。圧倒的な戦力差。
絶望的な戦いの火蓋が、今切って落とされた!!
「魔術師、並びに魔法使い! 詠唱開始!!」
王国軍は大魔法でカタをつけようと、いきなりマジシャン総員の詠唱を始めた。案の定、接近戦になる前にカタをつけるつもりのようだ。こちらからは手出しできないよう、ご丁寧に周りを騎士たちで固めている。直接的な妨害は不可能。一見すれば、絶体絶命の危機。
だが、俺らには絶好の好機。
ここだ!ぶちかませ!
「“突風”!」
王国軍の詠唱が完成する直前。ウチの個人としての最大戦力、ソロ冒険者であり公国側唯一の魔法剣士であるライナーの、[詠唱省略]の恩恵を受けた魔法が公国側から放たれる。が。
「狼狽えるな! ただの中級呪文、風で砂を巻き上げただけだ! 何も心配は無い! 冷静に、詠唱失敗だけは起こすなよ!」
バルダさんの言う通り、“突風”は強風を吹かせるだけの呪文。攻撃力は皆無だ。しかし、こちらの狙いはそこではない。思考がそこで止まっているのは洗脳の影響か? もう少し頭を使えば、俺たちの意図も読み取れるのにな。短絡的すぎんぜおい。
「歩兵は道を空けろ! 今だ、放てぇッ!!」
『――阻むもの凡てを、その白き光を以て灼き払え!
“白焔”!!』
流石は世界最大国家の精鋭マジシャン。勇者もいるとはいえ、帝級を―――戦術級呪文を組み上げるなんて、伊達じゃあない。確かに賞賛に値する。そんな魔術を喰らえば、こちらは100%壊滅するだろう。だが。
だが、この場においてはお前らの敗けだ。
―――はい、チュドーン。
王国軍が呪文を組み上げた瞬間、否、組み上げる直前。王国軍側で爆発が発生した。本来放たれるはずだった“白焔”よりは規模は小さいが、それでも多くを巻き込んだ大爆発となった。
自爆により王国軍には被害が多数。幸いと言うか、死者はいないようだ。これによりマジシャン部隊は壊滅。爆発の煙で視界が奪われたこともあり、一般兵の動揺も収まらない。
よし、立て直す前に畳み掛けろ!
「今だ!! やれ!!」
シモンさんの力強い合図とともに、戦場に魔力が迸る。本来は不可視の魔力だが、凝縮され密度が高くなったために光を発している。その範囲が広すぎて分かりにくいが、俯瞰して見ればそれは魔法陣である。
王国側で最初に異変に気づいたのは、やはりと言うかなんと言うか、バルダさんだった。
「ッゲホッ、足元に発光を確認! できるだけ孤立せずに警戒せよ! 何か来るぞ!!」
しかし気付けてもその巨大さゆえに魔法陣とは思えない。さらに、動かず構えるのは基本的には正しい選択だが、この場においては悪手である。警戒してどうにかできるだけ問題じゃないんだから。
ゴゴ……ゴゴゴゴゴゴゴ……!!
魔力が十分に込められた瞬間、王国軍の足元が揺れ始める。地震? いやいや、そんなもんじゃない。さあ、身をもって味わいな。
揺れは大きくなり続け、そして―――
―――地面が割れた。
「んなッ………!!」
『――ゥウワァァァァアアアアア!!』
重力に従って落ちていく王国軍+勇者たち。平面の攻撃になら対応できただろうが、警戒態勢に入ってちゃあ3Dにはうまく対応できない。装備が鈍重な騎士たちならなおさらな。軽装で機動力のあるやつらもなんとか穴を逃れようとするが、次々と弓矢で射られ落ちていく。
大穴からはまだ悲鳴が聞こえてくる。出てくることのないようかなりの深さにしたが、そろそろ底に―――ぶつかったようで、辺りに大きな音が断続的に響く。一応底に細工はしてあるので、落下の衝撃で死ぬようなことはないはずだ。……うん、死人は出てない。
「よしっ、成功! 詰めを誤るなよ!!」
『はっ!』
シモンさんの一声で、作戦の最終工程に入る。と言っても、穴の上部を弄るだけだが。
2000人弱の王国軍の中には変わり種のスキルを持ったやつがちょくちょくいる。例えば、[壁面走行]。ただ壁が走れるようになるというだけのスキルが、この場においては有効な手にもなりうる。だから、それらを封じる。
「「「我が意に沿いて、その形を正せ“再構築”!」」」
土属性は6つの元属性魔法の中で唯一固体を生成し、形を留めることができる。火属性や風属性魔法とは異なり、「そこにあれ」と強く思っている間は消えないのだ。
“再構築”はその創った土を変形させる呪文である。これにより、大きく開いていた穴の上部は狭まり、内側は下向きの円錐形のような構造になった。そして固定される。もう壁面を用いての脱出は不可能となった。
……やったか?
……。
………。
よし、フラグも回収されないな。オッケー。
終わったぁー! くぅ〜、お疲れっした! もう一波乱くらいあるかとも思ったけど、結局何もなかったな。
これで、俺が来た意義はしっかり果たせたわけだ。
……おい、エドガー。約束は果たしたぞ。
◇◆◇
では改めて種明かしをしようか。
今回肝になるのは、俺の姿を見られないことと、勇者たちを生け捕りにすることである。この二点、それぞれの難易度はそう高くないが、二つ同時にこなすとなると一気に難しくなる。結構な難題だったが……俺はやるだけやってみることにした。
まず前者の条件だが、これは直接の戦闘ができないだけで裏工作や物資の支援は可能であるという抜け道が存在する。それによって俺はゴールを描いた。すなわち、魔法陣を用いた大規模魔術による生け捕りだ。
ここで一つ後悔したことがあった。
そもそも、魔法陣というのはおいそれと描けるものではない。図形や模様の持つ意味、その組み合わせによる術の構築、それらを前提とした上で、魔力を媒介できる特殊なインクを使い寸分の狂いもなく描く。まさに職人芸と言える。それを習得するには流石に[完全記憶]を持つ俺でも手間暇かかる。
ここが問題なのだが、俺が描ける魔法陣は土、火、風の三種類のみなのである。残りの水、闇、光は描きたくとも描けない。正直、やらかしたよね。魔法陣使って大規模な精神浄化魔術ブッパできてれば、その時点で勝ち確だったのに。
まあ文句を言っても状況は良くならないわけで。しぶしぶ土属性魔術で落とし穴作る感じに路線決定。その図式をもっていく道筋を逆算して、途中経過を詰めていく。そうしてできた作戦が、あれだ。
まず、正当性や説得力を持たせるために奇襲や不意打ちは控え、話す余地があることを相手に見せる。これにはあまり意味はないが、もし奇襲に失敗し乱戦状態になれば死傷者が出るのは必至。プラスにするというよりはマイナスを避けるという意味合いが強い。
そして次点。俺の読みでは、比較的早い段階で大規模魔術を打ってくるとは思っていた。王国軍の主力は集団で発動させる大規模魔術であると歴史が示している。王城で見た訓練でも、演習ではそのパターンが多かったし。それを利用しようと考えた結果、魔力暴発を誘発させることにした。魔力暴発とは集中、圧縮した魔力の放出がうまく為されない結果爆発を起こす現象のことで、その最たる例は詠唱失敗である。
ジェイクに渡したあの粉末、本に倣って「マザンの秘薬」と呼ぶことにしようか。一度ジェイクに使ってもらったのは実用と実験を兼ねている。一粒で二度おいしいってやつだ。結果は上々。自信を持って作戦に臨むことができた。
そいつを持たせた魔法剣士ライナーを軍の最前列に配置。魔法も弓矢も持たない以上、接近させなければ大丈夫という印象を持たせた上で、詠唱を省略した魔法でマザンを散布する。
接近されたくない王国軍は当然近づかれる前にケリをつけようとするだろう。マジシャンやアーチャーを置かないことで、相手に早く魔法を使うようプレッシャーを与えることにもつながる。
相手が大規模魔術を発動させようと魔力を集めると、ついに魔力暴発が起こる。その隙に、辺りに隠れていた公国側のマジシャンが多少時間のかかる魔法陣に魔力を流す。んで、発動。あの魔法陣で指定したのは、場所、範囲の指定、直径150メートル深さ50メートルの穴への変形、壁の硬化、底の泥状化という変質の3点である。泥がちゃんとクッションの役目を果たしてくれて、死人は出なかった。汚いだろうが、彼らには我慢してもらう他ない。魔術でつくった泥だから細菌とかはいないから。勘弁してね。
以上が作戦の概要だ。他にもいくつか分岐はあったけど、一番シンプルな形で落ち着いたみたいで良かった。
よーし、じゃあ作戦成功を天霧に連絡しますか。
Vocabulary
・職業
冒険者のスタイルを指す言葉。剣士、弓士、魔術師、魔法使いなど種類は多い。パーティを組む参考にもなるためほとんどの冒険者は公開するが、秘匿するようギルドに頼む者も少なからず存在する。
・呪文の階級
魔術の呪文には難易度、威力から階級が設定されている。下級は練習すれば子どもでも扱えるが、上級帝級ともなると才能が必要になってくる。神級は神話時代の英雄レベル。
神級
天級 =戦略級
帝級 =戦術級
上級
中級
下級
Spell
・"突風"
指向性のある強い風を吹かせる風属性中級呪文。
・"白焔"
1000℃を超える高温の火炎を放つ火属性帝級呪文。
・"再構築"
すでに生み出した土属性魔術の形や状態を変化させる土属性中級呪文。呪文発動自体は難しくないが、意図した形に整えるのは至難の業。
◇◆◇
どーも、Soninでございます。
第27話、読んでいただきありがとうございました。次回予告(大嘘)、読まれた方はいらっしゃるんですかね? まぁその人は大嘘というのが本当だったと実感していることでしょう。
この半年について、私的な話は活動報告の方でしようかと思います。あまり具体的な話にはならないと思いますが。ただ、これだけは明言致します。
再び連載を続ける意思はあります。なので、これからもまたよろしくお願いします!!




