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神童君は異世界で本気を出すようです。  作者: Sonin
第一章 狂王と愚王
31/38

第26話 戦いとは虚しいものなのさ

お久しぶりです。前話の投稿が8月入ってからになっちゃったんでしたね。少し頑張ってみました。三日くらい早くなりました。


……。


拍手!!(パチパチパチパチ



では前回のあらすじ!


・深影「戦いたくないでござる」

・これが……ドラゴン!

・空の旅をお楽しみください

・深影「実は高いところ苦手なんだよね」


こんなところですかね。


あと、結構大事なお知らせがあります。

なんと……



 ……あとがきで言うことにします。あまり良い話でもないですし。


では本編、どうぞ。

  Side:Edgar



 ツキヨと一緒にこの街に帰ってきた日のことだ。責任を取れと言われ、情けなくもあんな少年の言葉でプロポーズを決意した俺、エドガーは窮地に立たされていた。


「シェリーさん。エドガーから大切なお話があるそうなのでちゃんと聴いてあげてくださいね。では」


 ツキヨに助けを求めてこの腕を伸ばすも、扉は閉ざされ無駄に終わる。そのまま視線をシェリーに移せば、さっきの大声とは程遠い、にっこりと笑みを向けられた。大声で発散して機嫌は良くなったのか?

 だが油断はできない。こいつの感情は山の天気よりも変わりやすい。笑っていると思ったら急に怒り出したなんてことも一回や二回ではない。


 ここはなんとか刺激しないようにだな。んで、話題も出来れば変えたい……!



「あーっと……なんだ、話っつっても別にそんな絶対ってわけじゃ―――」


「ねぇ、エド」


「な、なんだ?」


 ビクビクしながらシェリーの言葉を待つ。

 そういえば、俺がシェリーに頭が上がらなくなったのはいつからだったか。昔っからこいつには叱られてばかりいた気がする。けどそれ以上に、世話になっているっていう意識の方が遥かに強い。


「お帰りなさい」


 きっとこれからもこの感じは変わらないんだろう。


「ああ、ただいま」


 優しく微笑むこいつを見ながら、そう思う。








「それで、政務を放り捨てて勝手に旅に出たのだから、それだけのものを得たと思ってもいいのよね? 大公殿下?」


 よかった……まだ仕事モードだ。理性もちゃんと保ってる。


「も、もちろんだ。

 さっきも言ったと思うけど、今出ていったのがツキヨ。王国に召喚された異世界人の勇者だ。前言った通り俺らの事情も知ってて、協力してくれるから……できれば敵対するようなことは言わないでほしい、んだが……」


「その点に関しては反省しているわ。フォローもするから気にしないでいいわよ。子どもに当たるなんてどうにかしてたわ……」


「あ、ああ。それならいいんだが――」


「そもそもの原因は、どっかの誰かさんがいつまで経っても帰って来ないことだったのだけど」


 ギクッ。


 ダラダラダラダラ。

 いけねえ、冷や汗が止まらねえよ。もしや……


「……怒って、いらっしゃる?」


「いいえ、私ごときが大公殿下に怒っているなんてそんなことあるはずがないではありませんか。ええ、もちろん。

 ただ――一言言ってくれれば、とは思っているけれど」


「ヒィッ!!」


 やっぱり怒ってやがる!

 なんかシェリーの背後に黒いナニカが見えるし!俺が出掛けてる間に新しいスキルを獲得したとかじゃあるめえな。


「まぁ、その辺りは一旦置いておいて……」


「ホッ…」



「あの子が言っていた『話』というのはいったい何のことかしら?」



 あっ。


「いや、別にそこまで急いでるわけでもないし、うん。ほら、他にもいろいろ話すことはだろ?」


「その反応……まさか何か疚しいことでもあるのかしら」


「いやいやないないない!! 疚しいことなんて何にもない!!」


「ますます怪しいわね……ヴィンデミアで贔屓にしてる宿屋の女性に手を出した、とか?」


「ブフッ!! ――何てこと言い出してんだ!!そんなことできるわけねえだろ!」


「その人が大事だから?」


「――、それは……」


 ここに来て始めて気づいた。俺を問い詰めるシェリーの顔が、今にも泣きそうなことに。……今までもこいつは、こんな顔をしてたっていうのかよ。気づかなかった自分に腹が立つ。


 ふと、脳内にツキヨの言葉がよぎった。



『お前がその人の幸せを望んでんなら、やるこた決まってんだろ』



 あれ?こうだっけな? まぁ多分合ってるだろ。


 そうだ。今まで逃げてきた分を、適当に生きてきたツケを払わなきゃならねえ。男として、俺がするべきことは―――


「……確かに、ベラのことは好きだ。大事だと思ってる。

 けど、シェリー。お前のことも大事だと思ってる」


「――ッ、それもどうせあなたは女としてじゃなく、昔馴染みとしてだとか言うんでしょう?」


「ああ、そうかもしれない。自分の気持ちなんて、自分でもよく分からないもんだからな。

 けど、俺は……!!」



 言え。俺の心の奥を。何も飾らず、まっすぐに。




「俺は、お前を他の誰にも渡したくないって、そう思ってる」




 言った。


 言って、やった。


 偽らざる、俺の本音だ。


 なんだか、めっちゃスッキリした。心のしこりが消えた感じがする。俺自身、無意識の内に気にしていたのかもしれない。こいつの可能性を奪ったことに。

 けどシェリーとは離れたくないから、精一杯に目を反らした。そんなところか。本当に……バカだな。俺。


 見れば、シェリーは瞳から涙をこぼしていた。もう何年も泣いてなかったからかもしれない。シェリーはただひたすらに、子どものように泣きじゃくる。



「だから、あー……なんだ。


 ――俺と、結婚してくれるか?」




「えぐっ、うわぁぁああん!!!!」












 数分後、シェリーもようやく落ち着いてきた。俺に馬乗りになるほどに元気も出てきたようだ。


 ……あれ?


「シェリー?これはいったいどういうことで? 全て丸くおさまって大団円って流れじゃなかったか?」


「あなたが悪いのよエド。私がどれだけ我慢してたのかも知らないで、あんなことを言うから……体が疼いて仕方がないの。鎮めてもらうわよ?」


「俺はいいんだが……流石にここじゃまずいんじゃ」


「ごめんなさい、もう無理」


「ちょっ―――」




  ◇◆◇




 ということがあったわけだ。


 あの後、シェリーはなぜかユリアと一緒に戻ってきたツキヨとも無事仲直りして、すべては丸く収まった。

 いつの間にかツキヨのダチが(うち)に住むことになってたり、ユリアが東方の盗賊団討伐に向かったりといろいろとあったが、そのときは確かに穏やかな時間が流れていた。



 それをぶち壊しやがったのがあのクソ弟だ。王国のやつら、ついに手ぇ出してきやがった。偵察に出してたハリーの首と、ご丁寧に挑発の文書まで送り付けて。俺はもうキレた。その喧嘩、国を挙げて買ってやる! 秘蔵の竜騎兵も投入して、ツキヨにも頼み込んで、全力でな!!

 ツキヨは洗脳を受けてるかもとか言ってたがそんなん知るか! そんなものにかかるなんてあいつ鍛えたりねえんだよ。


 だが……身内に責任があるんなら俺も同罪だ。

 俺は【破壊者(クラッシャー)】だから壊すことしかできないし、考えることもできない。できんのは感情のままにがむしゃらに動くことだけだ。だから、考えることは全部議会に任せて、俺は好きにやらせてもらう。俺が正しいと思うことをまっすぐに。間違ったりマズそうだったらあいつらは俺を止めてくれる。その信用があるから、俺は心置きなく暴れられる。

 落とし前は、俺がつける。



 改めて決意を固めていると、シェリーの姿が見えた。


「おう! 案内ご苦労さん!」


「別にご苦労ってほどでもないわよ。竜騎兵隊には準備をしてもらわなきゃいけないし、一般の兵士をこっちに来させるわけにもいかないしね」


「そうか? まぁお疲れ!」


「話聞いてた?」


「んあ? 何がだ?」


 話なら聞いてたけど、何だ?

 シェリーは手で額を仰いでいる。


「……はあ……まあいいわ。

 それよりも、あなたに話があるの」


「ん?」



 いつも通り連絡とか、てっきりそういった類のものだろうと思っていた。だが、次の瞬間に紡がれた言葉は(少なくとも俺の中では)常軌を逸していた。


「一国の主ともあろう者が、側室の一つや二ついないのは少し外聞が悪いと思わない?」


「いや、それはお前が」


「ええ、そうよね。思うわよね」


 ……お、おう。


「そこで私から提案、というか頼み事があるのだけど、聞いてくれるかしら?」


「まあ、聞くのに否やはないけどよ」


「ありがとう。それで、提案というのはね、今回の騒ぎで死者を出さずに済ませることができたら、あの宿の女将……ベラさんと言ったかしら。彼女の側室入りを認めます」


「………は?」


「だから、ベラ…さんと結婚することを認めると言ったのよ。あくまでも向こうが了承したら、だけどね」


 二回言われて、ようやく脳が動き出した。


 何て言った? 結婚? 誰と?



 ―――ベラとだと!?



「おいシェリーそれ本当か!?」


「はぁ……あのね、エド。いくらなんでも自分に惚れている相手の前でその態度は失礼よ」


「あ、ああ。すまん」


 またやっちまった。やっぱ気をつかうのは苦手だ。

 だがそれも仕方ないだろ! だって、え!? マジでか!?


「逸るのも分かるけれどね。今後気をつけなさい。

 それで、質問に対する答えはイエスよ。死者を出さないこと。特に、あの子たちはケガもさせないように注意して。その条件がクリアできたら、きちんと認めます」


「おおよ! 任せろ!

 あれ? でもいいのか?作戦の成功は条件に含めなくて」


「何を言っているのかしら? そんなの、あなたなら条件にする間でもなく成功させてきてくれるんでしょう?」


 ―――っ!!


 そんなの……


「――当ったり前だ!! 任せとけ!!」


「ええ、頼んだわよ」


 やっべえな、テンション上がってきたぜ。ついに正々堂々とベラのところに行けるのか。こりゃあ今回の戦い、今まで以上に気合い入れていかなきゃな!


 決意を新たにしていると、今度は二つの人影が一緒にやって来るのが見えた。あれは……


「お、来たな! ミカゲ! トモヨ!」


 会釈で答える勇者二人。元気が足りねえなぁ。俺がこいつらくらいだった頃はもっとはっちゃけてたぞ。

 二人が来たのを見て、騎士たちも全員集まって来た。挨拶もそこそこにしてシェリーから説明が行われる。


「よく来てくれたわ。あなたたちにはこれから、ワイバーンに乗ってヴィンデミアに向かってもらいます。

 ――我が国の全52騎の竜騎兵に告げます! これより、リルバ王国軍と交戦中のヴィンデミアへ応援に向かいます! 部隊長はエドガー様に担っていただきます! よろしいですね?」


『ハッッ!!』


 ついにメンバーが揃って、出発のときになった。ああ、この高揚感、堪んねえな。不謹慎かもしれんが、興奮が止まらねえ。

 勇者。おとぎ話にも出てくる存在だ。今代の【勇者】の称号を、魔王を倒す使命を背負った未だ見ぬそいつは、いったいどんな戦いを見せてくれるのだろうか?


「今回の作戦にはアマキリ殿、フミノ殿にも同行していただきます。公国の軍として恥じるところのない行動を心がけるように!

 何か質問は?」


『問題ありません!!』


「では行きなさい! ヴィガーズ公国領ヴィンデミアへの侵略者に、これ以上の自由を許してはなりません! 必ずや撃退し、全員生還すること! これは命令です。

 ―――返事は?」



『――ハッッ!!!!』


 当たり前だぜ、シェリー。こいつらは公国の誇りだ。そう易々と死ぬようなタマかよ。



「よーしお前ら! 気ぃ引き締めてけよ! シェリーの言う通り、全員生還は絶対だ! 死んだらマジでぶん殴るぞ!!

 じゃあ出発だ!!


 ―――目指すは北方、ヴィンデミア!! 行くぞぉ!!」



『ォォォオオオオ!!!!』



 声を上げ、先陣をきって空へ繰り出す。


 この空を飛ぶってのは俺たちだけの特権だ。


 やっぱ、いつ乗っても飛竜(ワイバーン)は最高だな。この風を切る感じ、疾走感、空高くから見える景色。爽快だぜ!



「――飛んでる……! 天霧君、私たち飛んでますよ!!」


 後ろから来たミカゲとトモヨ。トモヨの方は楽しんでくれてるみたいだが、ミカゲは高いところが苦手らしい。先に言ってもらえりゃあシェリーとかがどうにかしたと思うんだが、もうすでに飛び立った後だ。耐えてもらうほかない。



 しばらくして、ミカゲもこの高度に少しは慣れたみたいだ。これが楽しめないなんて損だよな。可哀想に。


「―――ですね。

 しかし、まさか本当に竜に(まみ)える日が来ようとは、思ってもいませんでした」


「まぁ、そりゃあそうだろうね。出発する前に熱心に見てたみたいだけど、文野サン、竜好きなの?」


「いえ、好きというわけでは……

 ですが、本の中でしか存在しないと思っていた存在が目の前にいると思うと……」


「ああ、なるほど。自分が本の中に入ったような気になる、と」


「はい。おかしいと思いますか?」


「いやいや、ごく普通なことだと思うよ。要するに、熱中できる好きな事があるってことだしね

 でも意外かも。文野サン、ファンタジーとか読むんだ」


「意外、ですか。私は活字なら基本的に何でも読みますよ?」


「へぇ。じゃあライトノベルとかは読んだりするの? ボクもたまに白黒コンビの二人から勧められるんだけどさ。どうなのかなーと思って」


「たまにですが読みますよ。ただ、どうかと聞かれましても……やはり著書によってまちまちですから、一口には言えませんね。それ以外で言えるとすれば、挿絵が多い事と会話文が多い事でしょうか。私も詳しくは知りませんが」


「ふーん……そんなものか」



 よく分からないことを話しているお二人さん。異世界の文化はさっぱりだぜ。

 前に一度、暇潰しがてらツキヨにあっちのことを話してもらったが、ちんぷんかんぷんだった。確か政治の話を頼んだんだが……一応馴染みのある分野のはずなのに、知らない言葉だらけでよ。いつの間にか眠ってた。


 それはさておき、この二人……なかなか良い雰囲気なんじゃねえか? 二人で旅してるっつってたしな。恋仲にあるってことでいいんだろうか?


「なあなあ、お二人さん」


「なんでしょうか? エドガー大公殿下」


「堅すぎるぜ、トモヨ。もっと砕けていいのによ」


「いえ、そのような無礼なことはできません」


「まあまあエドガーサン、そう無理強いするものでもないでしょう。

 ところで、何のご用ですか? 言いたいことでもあったのでは?」


「ああ、そうそう。聞きたいことがあってこっちまで来たんだった。

 お前ら、付き合ってないのか?」


 空気が一瞬、固まった。

 そしてすぐに動き出して。


「そんなわけ――」


「あ、分かっちゃいました? いやー、照れるなぁ! やっぱり他の人から見ても」


「天霧君、そんなにスカイダイビングがしたいのなら言ってくれたら良かったのに。さあ、準備はいいですか?」


「ごめんなさいそれは本気で無理だから勘弁してください」


 あーっと、つまり?


「付き合っているけどトモヨは恥ずかしくてあまり知られたくない……ってことでいいのか?」


「天霧君、紐無しバンジーなんていかがでしょう?」


「なんで!? 理不尽!

 エドガーサンもホント黙って!」


 ありゃ? どうやら、こんなに仲が良いのに別に男女の仲でもないらしい。お似合いだと思うんだがな……


 また口を開こうとした矢先、先頭を飛んでいる兵士から声がかかった。


「エドガー様!」


「隊長と呼べ! 何だ?!」


「今夜の休息予定地が見えました! 着陸準備に入った方がよろしいかと!」


「分かった!

 お前ら聞いていたな?! 今から着陸を行う! 目標はあの森の中の開けている地帯だ! 俺に続け!」


『ハッ!!』


 着陸と言っても何も難しいことではない。飛竜は他の騎乗生物よりも圧倒的にかしこいから、さっきの言葉も理解しているだろう。だから、実際俺たちが何かをするということはなく、ただ飛竜に身を委ねていれば問題ない。


 飛竜は羽ばたきを止めて滑空体勢に入る。風を切って斜めに降下、高度がどんどん下がっていく。そのまま地面に突っ込むかと思われた瞬間、上体を起こして急減速、ドシンと無事着陸した。


 周りを見れば一名を除いて降りることができたようだった。良かった良かった。こんなことでケガされてもな。笑えない。

 振り落とされた少年もキャッチ成功。こいつは特にケガされたら俺が困る。シェリーにどやされ、せっかくの約束が意味なくなっちまう。


「おいミカゲ、ケガはないか?」


「はい、大丈夫です。ありがとうございました、助けてくれて」


「気にすんな。お前にケガなんかされたら俺が困っちまうだけだからよ。

 けど次は気をつけろよ? 慌てちゃワイバーンも上手く飛べないぞ。『身をあいつに任せろ』って言わなかったか?」


「それは……すみません。地面が急に近づいてくるのが見えたら怖くなっちゃって」


「おいおい……そりゃ大丈夫なのか? 今から抜けてもいいんだぞ?」


「流石にそこまで迷惑はかけられませんよ。それじゃあボク、いよいよ本当に役立たずじゃないですか。心配しないでも、これ以上はみっともない姿は晒しませんよ」


「そうか? まあミカゲがそう言うんならいいか」


 へぇ……女々しくてヘタれた男かと思ったが、意外と骨のあるやつなのかもしれねえな。


「おっしゃお前ら、今夜はここで野営だ! さっさと準備しろ! 明日は日の出前には出たいから、早めに寝られるようにするぞ! 分かったか?!」


『ハッ!!』




 ◇◆◇




 勇者が攻めてくるだろうヴィンデミアに向かって飛び立って三日目。今日も今日とて竜に乗って空の旅だ。


 俺は暇を少しでも潰すため、ミカゲの提案したゲームに興じていた。


「そうだな……じゃあ『ツキヨは勇者共をふんじばった後で、すでに単身王国にケンカ売りに行った』ってのは?」


「ちょ、それは流石にヤバいでしょう! ククク、いくら月夜クンでもそれはないと思いますよ。……ないよね?

 あ、じゃあ逆にこういうのはどうです?『勇者たちは慢心のためにヴィンデミアの兵によって鎮圧。王国騎士団はその姿を見て敵前逃亡』」


「クッ、ハハハハ!!弱すぎだろ! そりゃあ! 騎士の誇りはどうした!」


 ゲーム、というのはまあ単純なものだ。向こうに着いたときどんな状況なのかを予想する。ただそれだけ。

 最初のうちはいくらか真面目にやってたのに、いつの間にかどこまでふざけられるか、あり得ない状況を思いつくかの勝負になっていた。


 始まりは数時間ほど前、俺のぼやきだった。



『いくら良い景色っつってもよ、流石に飽きるよな……』


『ようやくですか?』


『ん? ミカゲか。ああ、空の上じゃあ景色見る以外やることねえなと思ってな』


『ようやくボクの苦しみに至りましたか。どうです? 視界を封じられたら本格的に暇になりますよ』


『いや、高いのが苦手だからって視界を塞いだのはお前だろ』


『おっしゃる通りで。それじゃあ貴方の部下を見倣ったらどうですか? 全員そんな素振りも見せていませんよ』


『無理だ無理。俺、大人しくしてんの苦手なんだよ。

 ミカゲ、暇だー。なんか話そうぜ』


『じゃあ簡単なゲームなんていかがですか?』


『お、いいじゃん。どんなゲームだ?』


『ルールはただ一つ。ボクらがヴィンデミアに着いたときの向こうの状況を当てる。以上です』


『あ? けどそれじゃあ、一回ずつ言って終わりじゃねえか?それに答えあわせもできないぞ』


『答えあわせができないっていうのがいいんじゃないですか。このゲームはただの暇潰しですよ?もちろん互いに何回だって言ってオッケーですよ』


『おお、なるほど!』


 ってな具合だな。



 さて、次は俺か……そうだな……


「そうだ! ミカゲ、こんなのは――」


「すみません、エドガーサン。ちょっと待ってください。月夜クンから連絡です」


「お、おう」


 ツキヨから連絡って……ああ、そういやこいつらにあの腕輪貸してるんだっけ。思い出した。

 と、そこまで考えたとき、俺にも念話が飛ばされてきた。


(エド、聞こえるかしら?)


(シェリーか。聞こえてるぞ。どうした? なんかミカゲもツキヨから念話が来たみたいだけど)


(あら、珍しく良い勘してるじゃない)


 クスクスと笑うシェリー。なんだか楽しそうだ。


(珍しくは余計だ)


(あら、ごめんなさいね。でも確かにツキヨ君も関係していることよ。おめでとう)


(ありがとう……?)


(ふふっ、どういたしまして。

 それで話というのはね、ついさっきツキヨ君に経過を聞いてみようと思って話をしたのだけれど、終了したらしいわ)


(終了って……何がだ?)


(決まっているでしょう?

 ――勇者たちとの戦闘が、よ)


 ……は?


 マジでか!?


 冗談でもゲームでもなく?


(え? わっちまったのか?)


(若干戦いたかったみたいなニュアンスが入ってる気がするけど……流してあげる。

 だけど本当のことよ。戦闘は終了したわ)


(……実は完敗って形で終了してたりは)


(今敵方は罠に捕らえて身動きがとれないようにしてあるそうよ。対してこちらの被害は軽傷者が数名。まごうことなき完勝ね)


(いやだが――)


(エド、現実を受け入れて。大丈夫。私もまったく同じ気持ちだから)


(シェリー……)


(他の貴族たちに何て説明すれば納得してくれるかしら? 相手を過大評価し過ぎだっていくら責められればいいのかしら?)


(ど、ドンマイ?)


(はぁ……まあ、ただ一つ確かなことは、彼がこちら側で本当に良かったということね。敵方に回ってたらと思うとゾッとするわ。

 それと、ツキヨ君から伝言よ。

『援軍の皆さま、助けに来ていただいてありがとうございます。ノーランド卿と協力し、なんとか敵方の行動を封じることはできましたが、依然としておかしいままであります。調べた結果、やはり洗脳状態にあることが明らかになりました。皆さまにはそちらの処理をお願いします』

 ですって。

 じゃあエド、私はとりあえずこれを伝えたかっただけだから。後は頼んだわよ? 帰ってくるのを待っているわ。約束も忘れないでね?)


(おう、任しとけ!)


 いやー、ツキヨがマジでやってくれるとはな。流石だな。


 さてと、それじゃあ早く行こうぜヴィンデミア! ツキヨの友達だっていう連中を元に戻さねぇと。

 あれ? けどそういや……











 洗脳解くのって、どうやるんだ?




はいどうも。今回は事態は動いた感じです。詳しい話は次回しようと思って……いました。


はいそうです。重要なお知らせというのはですね……




更新を、一時停止いたします。




ああ、物を投げないで! どうせエタるとか言わないで!


本当にごめんなさい。ですが、お勉強の方があまりよろしくない状況でして……。そちらに専念するために、来年の春頃まで更新を一時停止とさせていただきます。個人的な理由で申し訳ないのですが、ご理解のほど、よろしくお願いします。


来年の春には必ず戻ってきますので、もしも愛想をつかさずにいていただけたら、そのときはまたよろしくお願いします!


それでは! 来年の春にまた会いましょう!

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