第15話 再会、そして出会い
更新遅くなってホント申しわけないです。年末年始色々ありまして……。え? そうですよ。言い訳ですが何か?(逆ギレ
Side:Tsukiyo
当初の予定通り、ヴィンデミアで一晩を過ごした俺らは首都スピカに向けて出発した。スピカは公国内でも北寄りに位置しているので、何もなければ馬車を利用して5日程で着くはずだ。
にしても……
チラリと横を見ると、いつもはむしろ五月蝿すぎるくらいのエドガーが静かに、というか意気消沈している。そんなにベラさんと離れたくなかったのか……
「はあぁぁぁ〜〜。今更プロポーズとかどんな顔すりゃいいんだよ……。いや、そもそも断られたらどうする? 『実は好きな人ができたの』とか言ってよ……。………。
なぁツキヨ、やっぱやめに「しないからな。このヘタレ」……だよな」
違ったわ。そっちかー。
ちなみに、今現在俺がもっぱら心配していることは、エドガーの嫁(仮)が俺にまで嫉妬しないかという点だ。創作での病ンデレは酷いときは本当に酷いからな。一番記憶に残っているのは『お兄ちゃん……起きてる?』で始まる例のアレだ。アレ聞いた日、夢に出てきたからな? 現実では流石に遭ったことはないが、怖くなるのは当然と言えるだろう。……会いたくねぇな……
そんなことを考えていても馬車は止まらない。ガタゴトと揺られながら、俺らがスピカに辿り着いたのはそれから2日後だった。
◇◆◇
スピカという街について説明しようと思う。
ヴィガーズ公国の首都で、国の北東部に位置している。規模の大きい街で、300万人はいるだろうと言われている。ここ最近になってできた街なので、他国の都に比べて水道等のライフラインにおいてかなり近代化が進んでおり、区画整理もきちんとされている。
また、この地方では古くから六元神が一柱、水神アケナスが信仰されており、商業・観光区の中心には水の神殿がある。別段宗教になっているわけでもないが、最適応属性が水である人間が神殿へ足を運ぶことも少なくなく、祈りを捧げると幸運が訪れると言われている。
……はい。現実逃避ですね。分かります。
何からって? そりゃ決まってるでしょ。
「なぁツキヨ。もう少し街を見て回ってからでもいいと思うんだ。具体的に言うと一年くらい」
「奇遇だな。俺も同意見だ」
目の前にそびえ立つは大きな扉。その向こうにはエドガーの嫁(暫定)、シェリーさんがいるらしい。
てか俺が会う意味ってあんのか?俺の用件は王国の異変の意見交換をして今後の話するだけだろ? エドガーに全部押しつけて帰っていいんじゃね? そうだそもそも俺がエドガーに付き合ってやる義理はないわけだしきっとエドガー一人でもうまくやってくれるだろうんそれがいいそうしよう(錯乱)。
自分になんとか言い訳をして、俺はバレないように帰ろうとした。しかし神は俺を見限った。目の前の重厚な扉がゆっくりと開き始めたのだ。
「お帰りなさいませ、エドガー様。シェリー様にご用事でしょうか。でしたら、どうぞ。中にいらっしゃいますので」
異世界で見る初のリアルメイドを目にしても、俺の中の興奮が恐怖に打ち勝つことはなかった。
開かれた扉の先には、ただの執務室にしては広すぎる部屋が。だが王国に比べて装飾の類はかなり質素だ。
そして部屋の奥で何やら作業していた女性が、ついに顔を上げた。この人が、シェリーさん。エドガーのヤンデレ嫁か……
「あら、エドガー。帰ったのね。おかえりなさい」
…………。……あるぇー? めっちゃ普通じゃんか。エドガーめ。散々脅しやがって……
エドガーへの怒りを胸にやつを睨みつけると、やつは相変わらず緊張、というより怯えていた。何だ?
「お、おう。ただいま。何か変わったことはあったか?」
「いえ、特に問題はなかったわ。
それで、そちらの少年が?」
「あぁ、こいつはツキヨ。王国が召喚した勇者の一人で、例の協力者だ。」
エドガーがそう言うと、シェリーさんは俺に目を移す。何と言うか……完全に見定められています。怖いです。
てか、なんかすでに話が通ってるみたいなニュアンスに聞こえたんだけど。え、何で?
「へぇ……この子が、ねぇ?
はじめまして。ツキヨ君、だっけ?私はシェリーよ。一応ヴィガーズ公国の議会に所属しているわ。よろしくね」
そう言って手を差し出すシェリーさんだが、悪意……とはいかないまでも不信感をビンビン感じる。というわけで[解析]。
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名前:シェリー・エルバン
種族:普人族
性別:女
年齢:33
状態:良好
Lv.24
HP.137/137
MP.96/96
STR 42
VIT 40
INT 56
MEN 53
AGI 48
称号 : 【エルバン侯爵家】
【女傑】
【女侯爵】
【ヴィガーズ公国議会副議長】
特殊スキル:[念話]
スキル : [礼作法Lv.Max]
[歌唱Lv.11]
[舞踏Lv.7]
[料理Lv.31]
[人物鑑定ⅡLv.19]
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はい、普通に優秀ですね。
まず特殊スキル[念話]。この世界の通信技術は全くと言っていいほど発達してないから、相対的にもこのスキルの価値は計り知れない。戦況を見ながら即時指示が出せるってのは、戦争において大きなアドバンテージ足り得るし、日常生活でもかなりの利便性を誇るだろう。
そして俺のことを知っていたのは多分これだろう。エドガーから聞いたか、もしくは俺らに監視でもつけてたのかな。
次に[人物鑑定Ⅱ]。これはアカン。俺の現在の偽装系スキルのレベルは4だが、まだ上位スキルに至ってない。対抗できるはずがない。
いや、違うんだよ。偽装系スキルは誰かがステータスを見ようとしたときに発動するからスキルレベル上げが面dゲフンゲフン…大変なんですよ。
[鑑定]の発動条件は「対象の体に触れる」こと。もうお分かりいただけただろう。この握手に応えると、十中八九ステータスを見られる。まあ、ただ話を聞いただけで人をを信じないというのは正しい。ステータスを見られること、それ自体は別に問題無いんだけど……
ちらり、とシェリーさんの方に目を向ける。穏和な笑みを浮かべているが、異世界に来てから何度も感じた悪意の感覚を微弱ながらも感じる。相手の心を読むなんて芸当はできないから微妙なところだが、俺に害をなす何かを企んでいるということも考えられる。
また、協力者というのは対等であるべき、と俺は考えている。手と手を取る必要は無いが、どちらかが使われるようなことがあってはならない。そうでないのなら、それは協力ではなく従属だ。つまり……下に見られたら、その時点で負け。俺の目的が果たされることのないまま、体よく利用されるだろう。それだけに、この一発目は大事になる。
エドガー、すまん。
「そうやって今まで[人物鑑定]のスキルレベルを上げてきたんですか。悪いですけど、貴女のことはまだ信用できないので、その手は取れませんよ」
俺の突然の言葉に、2人とも呆然としている。まあ当然か。
「ちょ、おいツキヨ! お前何を「あら、それは残念ね。ところで、私のスキルの情報なんてどこで得たのかしら。是非教えてもらいたいのだけれど」お前までなんで喧嘩腰なんだよ!」
「冒険者にとって情報というものは何より大事でしてね、生命線とも言える情報源を教えるわけにはいかないんですよ」
「これから仲良くやっていこうっていうのに、それはあまりにも酷いのではないかしら?」
「信用できないって言っているんですよ。外面繕って心の内を明かさないような人はね。
腹割って話しましょうよ。いったい俺の何が不満なんです? 是非教えてもらいたいですね」
皮肉りながら挑発すると、彼女は顔を伏せてワナワナと震えている。
ついに化けの皮が剥がれるのか……?
「じゃあ言わせてもらうけどね……
エドガーと私、2人の時間を貴方はどれだけ奪えば気が済むのよ!!
用事があるなら早く済ませなさい!
そうでないなら出て行きなさい!!!」
ア、ハイ。
もう……言葉が出てこない。つまり、最初のは仕事用のキャラで今のがプライベートということか。何それ萌える。
ここは出直すか。萎えたし。やらかした感がすごいし。
俺はそこまま回れ右をして……あ、忘れるところだった。
「シェリーさん。エドガーから大切なお話があるそうなのでちゃんと聴いてあげてくださいね。では」
ガチャリと、救いの手を求めるエドガーを置いて、扉は無慈悲に閉められた。
◇◆◇
さて、別にやりたいこともないし……何をする、というかどこへ行こう? 外へ出てもいいが、もう既に日が落ちかけているし、することないんだよな。うーん……この建物内の散策でもしますかね。娯楽がやっぱり少ないのは困ったもんだな。
ここ、正式名称『ヴィガーズ公国国立議会本会議場』、通称『会議場』は公都の南側、商業区と居住区の境に位置する建物で、会議場の割にかなり規模が大きい。外装は暖色系のレンガで埋め尽くされていて、最上部には街中に時刻を伝える時計台がある。他にも、これ必要?と思うような施設が多数存在する。
いや、『会議場』っつってんのに訓練場があるってどゆこと? 軍事が大事なのは分かるんだけどね? 日本との感覚のズレが気になるんだよ。国会に兵器開発の研究室があるようなものだ。違うか? 違うな。
目的地も決めずに彷徨っていると、
『↑時計台 展望台』
と書かれた看板が、そして奥には階段が目に映った。うーん、上ってみるかな。どうせ暇だし。
カツン、カツンと小気味のいい音をたてて日本ではなかなか目にしない螺旋階段を上っていく。結構長い。
どれくらい上っただろうか、見上げると、赤みがかった光が射している。丁度いい具合に夕焼けが見えそうだ。
ようやく最上部まで上りきると、予想通り夕暮れ時だった。しかし、予想外のこともあった。先客がいたのである。
風になびくまっすぐな銀髪。強い意志を秘めた澄んだ瞳。装いは身体全体を覆うドレスアーマーに近い。年の頃は十五辺りだろうか。
夕日に染まる街並みを背景に、凛と佇む美少女がそこにはいた。
息を飲む、とはこのことを言うのか。俺はその存在感に当てられて呼吸すらできずにいた。
「こんなところに来るなんて物好きがいたとはな。見ない顔だが、余所者か?」
少女はこちらに気づいたようで話しかけてきた。予想を裏切る騎士然とした、男らしい口調だ。金縛りが解けたように、俺は息をする。
「……物好きっていうんならあんたも同じだろ。余所者ってのは正解だけどさ」
見惚れていた気恥ずかしさもあり、ついぶっきらぼうな口調になってしまった。思春期かよ。気を紛らわすため、返答するついでに[解析]する。なんか、どっかで見た顔のような気がするんだよな………
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名前:ユリア・エルバン
種族:普人族
性別:女
年齢:16
Lv.68
HP.370/370
MP.351/351
STR 144
VIT 174
INT 139
MIN 167
AGI 151
称号 : 【エルバン侯爵家】
【騎士団の姫君】
固有スキル:[鏡身]
スキル : [人族語理解]
[礼作法Lv.Max]
[長剣術ⅡLv.24]
[身体強化ⅡLv.7]
[盾術ⅡLv.3]
[体力回復ⅡLv.9]
[見切りLv.4]
[騎乗Lv.3]
[受流Lv.5]
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あぁ、シェリーさんの娘か。どうりで見たことある顔つきな訳だ。それにしても、この子がエドガーとシェリーさんの子どもか……確かに(一応)両方美形だけどさ……
俺が世界の不平を呪っていると、ユリア……さんは急に俺に対して警戒態勢に入っていた。なぜに?
「お前……今、私に何をした?」
「何って、何もしてな――」
「惚けるな。鑑定系のスキルか、魔道具を使ったな。この感覚には覚えがある。母上によくかけられるからな。下手な嘘はつかない方がいい」
……しくった。完全に俺のミスだ。今まで[解析]されて気づいた人なんていなかったからな。まさか経験則で知覚できるやつがいるとは……こりゃ、ある程度の強さを持つ相手にはバレると思った方がいいな。やたらめったら使うのも控えるべきか……
しっかし今日はなんだか不注意な行動が多い気がするな。なんだろ……今まで信頼できるやつと二人で旅してきたから他人が多い状況に気が立っているのかもしれない。
けれど今考えるべきはそこではない。現在の状況の対応策だ。いくつかあるが……
一つ目。しらを切る。この場は乗りきれるかもしれないが、後々面倒なことになってくる可能性が高い。てかバレたときのリスクを考えると簡単には実行できない。
二つ目。素直に吐いて謝罪する。この国の中でもかなり立場が上であろう人物のステータスを勝手に見たのだから、当然の行動だな。ただ、この国に強く出られなくなる上、生命線であるスキルを明かすのにはやはり忌避感がある。無茶な要求をされる可能性もあり。
三つ目。逃亡を図る。これは最悪だな。自分に非があることを認めているようなもんだし、俺に目的がある限り逃げ切ることなんて不可能だ。一人で王国に乗り込むとか勘弁願いたいですね。
四つ目。ユリアさんと交渉して黙っててもらう。今のところ、これが最有力候補だ。もし、えげつない要求をしてきたら完全に詰むが、うまくいけば上の2つよりはマシだ。ただ、注意すべきは下手に出ないことだ。相手に話の主導権を与えてはいけない。あくまでこちらの真意を悟らせずに交渉を……
以上。ここまでの思考、およそ0.5秒。
「そうだな。確かに使ったぞ。それがどうかしたか?」
「……お前は、何者だ? 何の目的があって私に接触した?」
「俺? そうだな……あんたの親父さんの同業者だ、とでも言っておこうか」
「ふむ……政治に関わっているようには見えないし……そうだな、他所から来た冒険者、といったところか?」
どうやら、どこぞの馬鹿と違って頭の回転も悪くはないらしい。優秀なやつってのは全くもって厄介だな……どうやって話を交渉まで持っていくか……
「ノーコメントで。それで、何か用か?」
「図星のようだな。それと、用ならあるぞ。今出来た」
「何?」
すると、目の前の美少女はキラキラ、というかギラギラした眼差しでその要望を告げてきた。
「私と戦え!」
前言撤回。こいつも頭が残念な子だわ。……奥さん! お宅のお子さん、立派なバトルジャンキーになっちゃってますよ!
Uniqe Skill
・[鏡身]
相手の攻撃を無効化し跳ね返すことができる。ただし、威力は多少減衰する。
一度使うとしばらく使うことはできない。
Extra Skill
・[念話]
距離が離れている対象と思念のやり取りができる。ただし、対象はスキル使用者が会話したことのある相手だけに限定される。
Skill
・[盾術]
盾の扱いが巧くなる。
・[体力回復]
自らのHPの自然回復速度、回復量が上昇する。
・[見切り]
相手の攻撃の予測を見ることができる。ただし、相手との力量差があるほど、予測は何重にも見える。
・[騎乗]
馬などの動物に乗る技術が向上する。
・[受流]
盾や剣で相手の攻撃を受け流す技術が向上する。




