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神童君は異世界で本気を出すようです。  作者: Sonin
第零章 プロローグ
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プロローグ2

 

 はぁ……やっと授業が終わった。こんなの将来に使うやつ極一部だけだろ……。時間とエネルギーの無駄使いは良くないと思うんですよ。えーと、ほら、エコじゃないし!

 ……授業は一日6,7時間だろ。1時間当たり50分で、1日300~350分の損失。1週間当たりだと、1600分=26時間と40分。

 ……なんということでしょう……!! 俺のゲームとアニメとラノベとその他諸々の時間が、まるっと1日分以上浪費されているではありませんか!!


 まあ、だからどうするわけでもないんですけどね。


 そんな学生なら誰もが考えるであろう、くだらない論理を展開しながら弁当を広げる。コンビニや購買で買ったものではなく、俺の手作りだ。現在、ってか高校入ってから、諸事情によって一人暮らしをしている。事情と言っても、他人からしたら至極くだらない理由なんだろうけど。うるせーやいってね。


 さてと、今日のお昼は―――



「進藤クン、お昼一緒してもいいかい?」



「うぉいっ!? ……って、なんだ天霧か。というか進藤はやめろって言ってるだろ?」


「あぁ、そうだったね。ごめんごめん。忘れてたよ」


 唐突に後ろから近距離で話しかけられたせいで過剰に驚いてしまった。だってこいつ、わざわざ耳元で話しかけるんだよ? 狙ってやってる分たちが悪い。影薄いから気付けないんだよな。


 ろくに悪びれずに、そのまま昼食を広げ出したこいつは天霧深影(あまきりみかげ)。いつも仮面のように笑顔を張り付けている。『奇術同好会』なんてものを作り、一人で活動している変人だ。数少ない苦手な部類の人間。


 っていうか、


「おい。話を聞かないならなぜ聞いた。いや別にいいんだけどね?」


「なぜかって、こういうことは許可をとるべきだろう?」


「分かってんなら最後まで聞けよ……」


「どうせ断るつもりなんだし時間のムダじゃないか」


 その通りだけどさぁ……その通りなんだけど釈然としない。

 仕方なく諦めて食べようとしたら、今度はリア充組がやってきた。


「つ、月夜君! 私たちもここで食べちゃダメ?」


 話かけてきたのは御巫。こいつはことあるごとに俺に構ってくる。正直、鬱陶しいと言うか面倒だが、こいつはクラス内でカースト上位に位置する人間だ。無理に断るとクラスメートからの当たりが強くなってしまう。いや、美少女と昼食をご一緒できるというのは光栄なんですけどね? もう少し周りに与える影響っていうものを自覚してもらいたいわけですよ。はい。


 嫉妬という感情を、集めることはとても容易い。


 他人のヘイトを稼ぐようなことだけはなんとしても避けなければならない。そのため邪険に扱うこともできず、対応に困ってるというのが現状だ。


「どうぞどうぞ。自由に使っていいぞ。俺は移動するし」


 こいつらとこれ以上関わるのは良くない。俺がボロを出しかねん。ここは別々に食べるのが得策だろう。

 ……と思ったのだが、そう単純にはいかない様だ。


「えぇ!? それじゃここに来た意味がないじゃないか!」

「そうだよ! 月夜君と一緒に食べたいから来たのに!」


 この野郎……御巫はともかく、天霧の方は楽しんでやがる。それなりに長く付き合ってきたが、あれは楽しんでる表情(カオ)だ。

 ……まぁ、今日だけ。今日だけなら大人数で食べてもいいか。あれ、これ昨日も言った気がするなー(トオイメ


「はあ……分かったよ。ここで食べればいいんだろ」



「じゃあアタシ勇人君の隣!」


 まーた増えたよ。

 ……こいつは日向美咲。アイドルをやってたりする。といっても地方の小さい事務所でだが。ググると結構色々と書かれている。ファンによる広告的なものからアンチによる批判まで様々だ。それを知っているにも関わらず活動を続けるメンタルは、素直に尊敬する。

 あと日向は明上に振られたうちの一人だ。しかし諦めてないようで今はアピール中、ということらしい。あいつ相手にまったくよくやるよ……


「あぁ、いいよ。君たちも一緒に食べないか?」

「え? いいの? ありがとー!」


 そう言って近くの女子たちに声を掛ける明上。……流石フラグ管理のプロ。羨む女子たちの視線を分かっていたらしい。しかし明上よ、日向の表情が般若のようになっていることにも気付け。お前のクラスメイトとクラスメイトが修羅場らないはずがないんだから。


 結局今日は大人数になっちゃったなぁ……明日こそは外で食べようか。だけどいちいち外出るのめんどいしな……


 この時悠長に「明日」のことを考えていた俺は、この日常の終わりを知る由もなかった。





  ◇◆◇





 午後の最初の授業は世界史だった。担当教師は武田克清(かつきよ)。俺らのクラスの担任だ。生活指導も担当していてかなり恐いが、なかなか頼りになる良い先生だ。まぁ皆は厳しいあの人を良くは思ってないようだが。

 なお、34歳、独身。先日お見合いがまた失敗したことを鑑みると、一生独身もあり得そうですね。


「―――であるから戦争によって沢山の人が亡くなった。そのため現代に生きる我々が……おい! 立花! 聴いているのか!」


「……うぇ? ……あ、はい!サーセン!」


「はぁ……次寝たら補習送りだぞ」


「うーっす。

 でも先生、歴史なんて学ぶ意味あるんですか? 戦争なんてもう起きませんよ」


「可能性の話をしたら、お前らが巻き込まれない可能性もゼロじゃないんだぞ。沖縄戦なんかじゃ学生もかなり巻き込まれたと前回の授業では教えたはずだ。

 それに歴史から学べることは多い。お前らのためになるからちゃんと聴いておけ。赤点取ったら補習と再試験がセットでついてくるからな。覚悟しておけ」


「うぃーっす」


 俺は今でも、この会話こそがフラグだったんじゃないかと考えることがある。あのとき立花が起きていれば、世界史の授業でなければ、俺がサボっていれば、そんなifに意味はない。全ては後の祭り。結果こそ全てだ。


 それでも俺は考えずにはいられない。



「うぉ、なんだこれ!?」



 なぜならこの日、



「眩しい……」



 そんな台詞と共に、



「何で光ってんの!?」



 約40人が――――








 ―――――地球上から姿を消したのだから





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