狩猟ゲーの天害者(チートバグプレイヤー)
二人称の練習を兼ねて。よろしくお願いします。
ゲームってのは必ず道筋があって、その道筋に従って進むものだ。
その道は曲がり道かもしれない、或いは何本にも分かれているのかも。
何はともあれ行きつく先はエンディングと言う名の終着点。
それにどの物語、ゲームであろうとも変わりはしない。
でも知ってほしい、世の中そんな道筋すら捻じ曲げて
良いも悪いもごちゃまぜにして愉しむ遊戯が存在していることを。
そう、それこそがチートバグ。
想像世界に蔓延る道を切断し、無理矢理繋ぎあわせた歪な迷路を作り出す。
キャラクターの尊厳すら失い、路傍の石へと変えてしまう。
敵はその目的を果たすことなく、主人公は自らの願いを叶えることが出来ない。
テキストに意味はなく、武器は当に捨て去った。
無に帰すことすらいとわぬ神々の遊び。エミュレータを使った強制改竄。
それもこれも一重に笑いを追求した結果で、普通の物語に飽き暇を持て余したプレイヤー達の遊戯。
そんなチートバクに、ある男も手を染めていた。
面白さを求めて、深い深いゲームという情報の海底へと潜っていく。
だがしかし彼は知るよしもないだろう、自らがその世界を訪れることになることなど。
今はまだ、誰も知らない妄言でしかなかったのだ。
◇
目が覚めた君は見知った広場でその冴えない顔をこすりつけた。
酷く頭が痛んだことだろう、今自分が見ている世界を君は理解できやしないのだから。
きっとこう思ったのではないか。
「なんで、さっきまでやっていたゲームに酷似しているとこにいるんだ」と自らの頭を疑う。
君は某狩猟ゲーのチートバグを試みていた。
メモリを敢えてぶっ壊し、その世界を一時の笑いに変えんとした。
すると君の思い通りにテキストは乱れ、人物の多くは首長になったり、片手剣が突き刺さったままとなる。
でもこれは想像できただろうか。自分がその世界に入ってしまうと言う、そんな摩訶不思議な現象がまさか自らに降りかかろうとは。
誰にも予想しえない。
「…兎に角事情を聞くのが一番。本当にゲームの中なのかも妖しいところだしね。」
君はそう呟いて立ち上がる。
周りには沢山の人だかり、皆思い思いの鎧を着こんで狩に備える。
村の人も数人とはいえ確かに存在していた。
君は一目散に村長と思われる人物の前へと立つ。
彼なら村の事情について誰よりも詳しい。
そう思った故の行動だったのだが村長は君に声をかけることはない。
それもそのはず、村長と思わしき人物には目も鼻も口も、耳すら残されていなかったのだから。
「うっゲーム画面ではクスリと笑える場面だけど、リアルだと全く笑えんぞこれ」
会話不可能な村長モドキが両手を突き出して紙相撲のように小刻みに前へと進んでいる。
その光景を君はドン引きしてさっさと受付嬢の元へと訪れた。
自分の部屋や武器を確認しておきたかったが、その前に依頼を目に通してしまうのは狩猟ゲーの運命だろうか。
君はついつい足を伸ばしてしまったギルド内にて依頼を拝見する。
そこに書かれた数枚の依頼書の内容は、よく分からない。
日本語で書かれているようで、書かれてはいない。
例えば卵の運搬に関する依頼書であると
『いらぃじん:とーほほほほっつるっかティーあ
なうぃヴぁヴぁ:■ろーろー□◆とばっくとね(うわっ
いとぅわんて:1-099◆77G』
符号交じりの怪文となり、理解することは出来ない。
ならばと受付嬢に聞こうとすると
「ささささささうってぃんらくて、うわっうわっうわっうわっ」
会話にならず、諦めるよりほかない。
君はギルドを後にする、この後どうするかは特に決めていなかった。
君の腰には鉄の塊と評される片手剣一丁と、僅かな硬貨。
しかしそれも次の瞬間には変わってしまっているかもしれない。
このチートバグ、彼は時間毎に別のコードに切り替わる設定をしていた。
チートバグはフリーズとお友達。
事あるごとに起こるであろう画面硬直を見越して、3分ほどで切り替わる設定としていた。
なので今から3分後、また新たなバグが再構築されることだろう。
その時君がどんな装備をするかは最早神のみぞ知る話。
もしかしたら村長とも普通に話が出来たり、依頼を受けることできるコードもあるかもしれん。
全てはエミュレータの気分次第と言うわけだ。
「こりゃあ大変なことになったな、おい」
一人待ちぼうけを食らう君に何故かフィールドにいるはずの古龍種が卵を割りながら後退りをしていたのが見えたが、それはもう君にとってはどういいことだったに違いなかった。
チートバグ動画メチャクチャ好きです。
特にバグメモとか、辻先生は腹筋崩壊。
出来れば続きをと考えてますが、今度やる時はもう少しネタ詰め込みますのでご容赦を。