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僕(女)、脱・ボスキャラを宣言します!  作者: 氷翠
第一章 七歳。転生ほやほや一年目。
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7.お兄様にはおバカ疑惑が付いています。

 麻の荷袋一つに緑のショートマント、後は普段着にも見える黒のローブ。師匠、今から遠路はるばる何処かへ行こうとする荷物と恰好ですかそれ、というツッコミを心の中に押し留めながら、僕は彼を見送る。カリンと、そしてお兄様と一緒に。


「大丈夫なんですかねぇ?」

「フン。アレでもあの男は一人でワイバーンを退治出来るレベルのやり手だ。そうでなくば、亡き父上があんなヤツをセスの師匠にはずもないだろう」


 要するに、Aランクのやばい魔物を単独でぶっ殺せるバケモンなんぞ心配しなくても問題ない、って言いたいんですかねお兄様。創作物でも現実でも、ああいう実力にかまけて余裕ぶっこくタイプが一番死亡フラグを立てやすいんですけど……。ああでも、師匠は遥か未来にあたるゲームの時間軸でも普通に登場してたから問題ない、か。ゲーム通りに進めば、だけど。


 そうなのだ。どうも、僕の知ってるゲームでの出来事と、今の世界で起きている出来事が食い違っている部分がある。お父様の死が、それだ。ゲーム設定では今から十年後、実の娘であるセスに殺されることになっている。ところが、僕が見た日記では既に病で亡くなった、と記されていた。実際、僕は肖像画以外でお父様の姿を見たことがない。変わってしまっているのだ。

 どちらが正しいとか、そういうのは関係ない。ここが設定から決して外れることのないゲーム世界ではない、未来の不確定な現実世界だという事実を示しているだけだろう。

 

 だからこそ、僕は「絶対大丈夫だよ」とか、そういう言葉を言えなかった。代わりに、


「師匠ならきっと、何食わぬ顔で帰って来るわよ」


 と、適当に言っておくことにしておく。実際、あの人はただ心配したりしても無駄なんだろうな。忘れたころにひょっこり顔出してきそうだし。


「セス様が言うんだったら、そうかもしれないですね」


 僕の言うことはあっさり信じるんだな、カリン。あれか、「エライ人の言うことは絶対正しい」とかいう理屈か。セスの天才設定がこの世界でも活きていて良かったよ、全く。ただ考えるのを面倒くさがってるだけかもしんないけど。それが有り得そうなのが何とも言えない。


「ところで、セス。あの男がいなくなったから聞くが……」

「何でしょうか?」


 あれ、お兄様。何でそんな鬼気迫る顔してるんですか? 僕は何にも変なことはしてない、と思いますよ? 多分。


「アレに何か変なことをされなかったか?」

「はい?」

「アレは音魔術が得意だと聞いている。極めたヤツには他人を操ったり読心することは容易いというだろう? だから……」


 あーはいはい。そういうことね。つまり、本当は僕に、師匠を近付けさせたくなかったと。でもお父様の決めた人だったから、辞めさせることも出来なかったと。ふんふん。よし、だったら少し遊んでみるか。

 

「心配は無用です、お兄様。少し心を読まれてしまいましたけど」

「何ィ!」


 すまし顔で言ってみた。おお、お兄様に魔人が降臨したぞ。予想通りだ。

 それにしても、お兄様ったら僕……というか、セスには割と甘々の可能性大だな。こういう人って良く面白がられてるけど、何か分かっちゃいそうだ、その気持ちが。

 そんな風に考えていると、お兄様は呆気に取られた様子のカリンに強い語調で命令する。


「カリン! 何をぼさっとしている、早く塩を取ってこい! 玄関にぶちまけるぞ!」

「ふぇ!? テオドール様、それ、何か意味が――」

「いいから一袋!」

「は、はいぃ~!」


 え、中世ヨーロッパ風ファンタジーそのものって感じのこの世界に、そんなアジアンチックな魔除けの習慣あるの? てかお兄様、皇都は内陸で塩は高級品なんですから自重してくださいよ。お貴族様だからって無駄遣いはいけません。

 あーあ、前言撤回。これはほっとくと将来、面倒くさくなりそうだ。何か手を打たないとな。観察日記でもつけてみたら面白いかも、とかそんなのんきなことを考えている場合じゃなかった。


「お兄様、塩の無駄遣いは止めてください」

「む。しかし、塩を巻くと簡単な結界になると聞いてだな……」

「師匠は魔物じゃありません」

「だが……」


 ダメだ。頑固属性も付いてた。仕方ないなぁ。このぐらいなら別世界知識を使っても大丈夫かな。


「分かりました。塩巻きの代わりに、盛り塩をするのなら良いです」

「モリシオ?」

「塩の小山を玄関の脇に作るのです。単純に巻くよりも無駄になりませんし、効力も長く保つはず……ですわ」


 正直、したことないけど。霊感の強い友達が「しないよりマシ」だとは言っていた方法だ。最低限、お兄様を納得させるぐらいの効果はある、ハズ。


「……分かった。お前の案を採用しよう」

「流石お兄様。分かってくださると思いましたわ」

「……まあ、こういったことはお前の方が詳しいだろうからな。仕方ない」


 これでも(一応)神官候補ですからね、エッヘン。……口が裂けても言えないしね、本当の理由。カリンはまだしも、お兄様には真実を絶対知られちゃダメだな、パニックとかいうの通り越して殺されかねない。

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