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僕(女)、脱・ボスキャラを宣言します!  作者: 氷翠
第一章 七歳。転生ほやほや一年目。
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5.幸い魔術の才能がありまして。

 さて、僕は<僕>であったころ、大学では中世から近代にかけてのイギリス貴族史を専攻していた。だからというわけではないが、ヘーメレー皇国の貴族制度はイギリスのものを参考にして設定されているのが良く分かる。時代的に言うなら十九世紀頃。王都暮らしの彼らの仕事と言えば社交、という時代だ。

 当時のお嬢様は言うなれば、家と家を生きながらえさせ、繋ぐための存在だ。その為に美を追求し教養を身に着け作法を学ぶ。全てはお家存続のためである。ただ単に豪遊しまくっていたり政略結婚の道具にされていたのではなく、ゆくゆくは家の内政全てを取り仕切る、女主人となる必要があったのだ。

 本来ならば、僕もまたその仕組みに組み込まれるはずだった。しかし、そうならなかったのには極めて重大な理由がある。


「そういえば、セス様。いつもならそろそろ魔術の自主練してたと思うんですけど。大丈夫なんですか?」


 人のソファで堂々とだらけきっていたカリンが思い出したように言う。口ほどには心配していないのが見て取れた。多分、興味がないだけだろうな。

 

 魔術。中世ファンタジーにはほぼ必需品となっている要素。『暁のエインヘリヤル』の中では割とピックアップされている。

 というのも、アルケィディアに置いて魔術を扱うには、先天的な才能がなければならない。何でも、体内に「術式」という機構を持っていない限り、呪文を唱えようが儀式をしようが何だろうが、魔術のエネルギー源であり、変換元でもある要素「マナ」がうんともすんとも反応しないそうだ。

 そういった「特別な才能」っていうのは、得てして少数の人間にしか与えられない。で、僕はその少数うに入り込んじゃっていた。

 魔術を扱える者――名称はまんま、魔術師なんだけれど――に開かれている道は非常に広い。世界中を旅する冒険者グループ<ギルド>に所属するもよし、魔術研究を極めているという学術都市メーティスへ留学するもよし、僕のように宮廷に仕える神官になることだって出来る。特に、<ギルド>では強力なサポーターとしても、攻撃要員としても有用ということで相当な引っ張りだこ、だとか。


 とはいえ、才能っていうのはあるだけではしょうがない。メキメキ鍛え上げてナンボってもんだ。


「ああ、そうだったわね。ちょっと行ってくるわ。貴女は部屋の掃除でもしておいて」

「分かりました~」


 大あくびをしながら、カリンが頷く。それを見てから、僕は部屋を出た。セスが魔術の自主練をしていた場所は把握済みだ。


 そういうわけで、僕は地下の練習室に来た。とある事情から、祖先が魔術師であることがほとんどの皇都貴族の屋敷には、たいていここのような「何もないだだっ広い部屋」があるのだ。そこで思う存分魔術の練習をしろ、ってことである。

 息を整えながら、僕は日記に書かれていた魔術のコツを思い出す。一番大事なのは、「自分が何をしたいのか」をハッキリ想像すること。その次は、マナを体内に取り込み、循環する感触を捉え、終着点を決めてやること。字面だけじゃ分かりにくいから実践してみよう。一番簡単なのは指先に火を灯すことらしいから、まずそれから。


「えー、っと」


 頭の中に描く。突き出した右の人差し指の先。小さな炎が揺らめく、その様を。

 瞬間、自分の中に、決して目にすることの出来ない力が体を駆け巡るのが分かった。これが俗にいう「力が隅々にまでみなぎる」とかいうやつなんだろう。今のままではただ回っているだけに過ぎない。今回の場合はこの力の流れの終着点を、指先に決めてやればいいのだ。


 僕はひたすら念じる。集まれー集まれー、バーナーとまでは言わないから、ろうそくぐらいのサイズで出て来ておくれー。


 成果は割とすぐに表れた。人差し指の先が一瞬熱くなったのを感じた直後、手の平サイズの炎の塊が音を立てながら燃え盛っているのだ。ん、そんなデカイのはお断りなんだけど。小さくなってくれ給えよ、君。そうそう、しゅるしゅるとね。

 ようやくお望みのサイズの火の玉が完成したところで、僕は一息つく。初めての魔術にしてはそこそこ良い感じ、なのかな。小難しい方陣や計算式が必要なタイプでなくて本当に良かった。そっちの方がリアルな魔術っぽいけど……。


 後は、この一連の作業を繰り返し続ける。この世界に置いてより強い魔術を扱うためには、「術式」を鍛える必要がある。その為に最も手っ取り早い手段が、燃費が良くて変換にかかる時間も大してかからない下級魔術を何度も行使することなのだ。「術式」の習熟度は魔術の使用回数に比例する。もちろんマナの変換難易度やイメージの複雑さにも比例するけれど、単に鍛えるだけならば地道に回数を稼ぐ方が圧倒的に効率が良いわけで。

 そういうことで、僕は何度も炎を出しては消した。コツも掴めた。そうしたらカップ麺が一つ作れそうなぐらい掛かっていたのが、三つ数えている間には出てくるようになっていた。この調子ならイメージした瞬間にはもう出てます、ってぐらいにはなるかも。

 こうなるとどんどん欲が出ちゃう。アレだ、炎の渦とかそういうの出せないかな。原作じゃ炎属性の中級魔術に分類されていたはず。何せ、セスは戦闘キャラクターとして見ると、派手な上級魔術を駆使する完全魔術師キャラ。今は彼女となっている僕も、頑張ればそのぐらいは出来るはず。ものは試し、やってみよう。

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