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僕(女)、脱・ボスキャラを宣言します!  作者: 氷翠
第一章 七歳。転生ほやほや一年目。
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14/34

14.爆弾は何処にだって仕掛けられているのだ。

 そうだ、やっと分かったよ。というか何で今まで気づかなかったんだ!


 ロレッタ・コニー。その正体は、エルドレッド家の末娘。本名はロレッタ・シャロン・エルドレッド。ゲーム本編でもガッツリ登場してくる。メインキャラどころか、主人公一行六人を構成する一人じゃないか!

 さる事情から使用人の身分に甘んじていた彼女だが、溜まりに溜まったストレスから十二歳の誕生日に家出を決行。身分を隠し、血の滲む努力の末にヘーメレー護国騎士団(これがヘーメレー皇国の軍だ)の一員となって、皇都の警備を任されるようになる。それから数年後、彼女の所属する班が魔物の襲撃に会い、たまたま居合わせた主人公が協力するところから話が始まるのだ。


 メインキャラには関わらない、どころじゃないじゃん。もうガッツリ、とまではいかないけど関わり始めちゃってる。でも今なら大丈夫、何とかなる。幸い、目の前のリアルロレッタちゃんはすっかりカリンに懐いている様子。逆に言えば、僕にはまだ全然心を開いてないはずだ。この状態を継続すれば良いんだ。あ、でもさっきソフィアさんに任されちゃったからなぁ。


「ねぇ、カリン」

「……」

「カリン?」

「……あ」


 意識がすっ飛んでた? まあ、僕にとってもエルドレッドは雲の上、メイドのカリンからして見れば天上をぶち破っているレベルに違いない。おまけ付きにそんな処のメイド相手に「生徒」だのなんだの言い切ってたから。


「す、すみません!」

「いや、良いよ。固まっちゃうのも分かるし。で、お願いなんだけど、ちょっと支えてくれない? そろそろここを離れたいの」

「分かりましたぁ。さ、どうぞ」


 直ぐに気を取り直してくれたみたい。差し出してくれた肩を借りて、僕は立ち上がる。いつまでも床にへたり込んでいるわけにはいかない。せめて壁際に置かれてる、一人用にしてはやたら豪華でふかふかそうで大きいあの椅子でゆったりしたいです。

 そんなに遠くはないはずなのに、息が上がる。足が重い。ああ、もう少し運動しとけば良かったかな、と考えながら椅子に座り込む。うん、これは良い。肘かけに腕を乗っけて、気分は王様。ただし疲労困憊。


「貴女も、おいで」

「は、はい……」


 縮こまっていたロレッタちゃんがちこちこと歩いてくる。うーん、この子を見てるとロリコンの気持ちがちょっと分かって来る。ああ、小さい子って可愛いなぁ。今の僕もそうなんだけど、やっぱ自分の身体じゃあねぇ。そういや、今のロレッタちゃんは僕より少し小さいぐらい。ソフィアさんは二十歳前後ぐらい、に見えた。間にも兄弟がいるっぽい。この辺りはゲーム設定そのままだな。確か、お姉さん(つまり、ソフィアさん)だけは設定のみに留まってたけど。


「あ、あの……」

「大丈夫、変なことはしないわ。代わりにちょっと見てもらおうと思って」

「……何を、ですか?」

「私の魔術です。――さあ、いらっしゃい」


 僕は指を鳴らした。それから素早くマナの変換を始める。ん、まだ大丈夫。二体ぐらいなら。

 空気を読んでくれたカリンが、麻袋を持って来てくれた。袋の入り口から、もそりと二体の人形の顔を出させる。馬と道化師を一体ずつチョイスした。これならロレッタちゃんも気に入ってくれるだろう。


「わあ……。お人形さんが、勝手に動いてる……」

「私が動かしてるの」

「そんなことが、できるんですか?」

「少し工夫をすれば、ね」


 そんなに難しいことじゃない。特別なものでもなんでもない、体魔術の特性を利用しているだけだ。

 体魔術は肉体に関する魔術。治癒や身体強化だけでなく、肉体の遠隔操作もやろうと思えば可能だ。今回はそれをやってみたのだ。簡単に言えば、カリンが作ってくれた人形に、僕の爪や髪の毛を組み込んでみた。人形は肉体でも何でもないから、体魔術では操れない。だけど、術者の肉体の一部があれば話は別ってこと。ただ、常にマナを変換し続けなきゃいけないし、そこそこ難易度の高い魔術に分類されるから、変換しなきゃいけない量も多い。ひたすら燃費が悪くて実践には向かないんだよ、これが。

 けど、使う場所を考えればかなり有効だ。今みたいに、小っちゃい子の興味を引く、とかには。ほうら、床で走り回ってる二体に、ロレッタちゃんの藍色の双眸は釘づけ状態。


「セス様って、すごい人なんですね」

「そんなんじゃないわ。出来ることをしてるだけ」

「でも、私みたいな人には、こんなこと、できないですから……」


 そんなに卑下しなくても良いのに。将来君は、大ボス化しちゃう僕なんかよりよっぽど立派になるんだし。

 ……そういや、僕、フラグ回避できてるのかな。今のところ宗教勧誘とかは来てないけど。考えてみたら肉体の遠隔操作とかって、基本的に悪役がすることじゃん。確か体魔術って、上級にまでなると他人の脳をいじくって物理的に洗脳しちゃう、なんて末恐ろしいことまでしちゃえるはず、だし……?

 アレ、もしかして僕、ボスキャラへの道を一歩踏み出しちゃってる? それはマズイな、以降この魔術は封印! ありがちな回復役を目指そう、うん。

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