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星野ミク視点

〜星野ミク視点〜


 時は写真集撮影後に遡る。

 真白くんとの写真撮影が終わり、アタシたちは家に帰る。

 その移動中、アタシは車の中でお母さんとヒナに、とあるお願いした。


「な、なぁ、お母さん、ヒナ。アタシ2人にお願いしたいことが――」

「クリスマスのことでしょ?」


 アタシの言葉を遮ってお母さんが言う。


「あ、あぁ。アタシ、真白くんと2人きりでクリスマスを過ごしたくなった」


 真白くんの家に行って真白くんとクリスマスデートをする権利は手に入れた。

 そのことは2人に話していたため、お母さんがアタシの言いたいことに気がついたのだろう。


「本当は真白くんをアタシらの家に招待する予定だったけど――ごめん!」


 アタシは2人に向けて謝る。


「あら、なんで謝るの?」

「お姉ちゃんは謝らなくていいの!ヒナたちなら大丈夫だから!」

「お母さん。ヒナ……」


 2人の言葉に心が温まる。


「私はミクを応援してるから、家族のことは気にしなくていいよ。その代わり、しっかりと真白さんを虜にしてきなさい」

「うん!ヒナも許可するの!」

「ありがとう、お母さん、ヒナ。アタシ頑張るよ!」

「ふふっ、頑張ってね。お父さんの説得も」

「ヒナも力になるの。お父さんの説得に」

「………」


 2人の言葉を聞き、真白くんとデートするために超えなければならない壁を理解する。


(ホント、娘離れできないお父さんをどうやって説得しようか。真白くんに初対面で「娘はやらん!」とか言った人だからなぁ)


 アタシはこんなことで頭を悩まされた。




 アタシは帰ってすぐ、お父さんに話をする。


「ミ、ミク……!と、父さんの聞き間違いじゃないよな?クリスマスを家族とではなく、お、おおおお男と過ごしたいと言ったのは?」

「そうだ。そう言った」

「グハッ!か、母さん!大変だ!ミクが変なんだよ!コレはきっと毒キノコ的な物を食べたに違いない!今すぐ病院へ――」

「大丈夫よ。客観的に見て、あなたの方が変だから」


(はぁ、絶対こうなると思った)


 想像通りの反応に頭を抱える。


「お、俺。今年も家族みんなでクリスマスを過ごすと思って、全員分のサンタ衣装を買ったんだけど」

「いや、毎年やってる恒例行事みたいに言わないでくれるか?しかも着ねぇよ」

「そ、そんな!?ミクとヒナのサンタ姿を見るために今日まで頑張ってきたのに……!」

「そんなんでモチベーションを保つなよ」


(いつになったら娘離れできるんだ?この人は)


 心の底からそう思う。


「だ、だいたい!そ、その男ってのは同い年だろ?」

「そうだな」

「高校生なんてまだまだ子供だ!そんな若造がミクを楽しませることなんて絶対できない!その点、俺は大人で働いてるから金もあるし、甲斐性もある。なんならチキンとホールケーキを10個づつ買ってもいいぞ!俺は大人だからな!」

「いらねぇよ!そんなに!」

「そ、そうだ!他にもクリスマスに、おせち買ってやるぞ!」

「いや、なんでクリスマスにおせち食べるんだよ」

「おせちはいいぞぉ!日本の伝統文化だ!ミクはおせち料理の食材で好きな食べ物はあるか?」

「え、なぜ、おせちの話になるのかは知らんが、そうだな。数の子と里芋が好きだな」

「うんうん、とてもいいね。その二つの食べ物には子孫繁栄の願いが込められてて――子孫繁栄!?ダメだ!そんなのは許さねぇ!ミク、クリスマスは、おせちなんて貧相なものじゃなくてカップ麺を食べような」

「日本の伝統文化は!?」


 そんなアホなことを言い続けるお父さん。

 その様子を見たお母さんが助け舟を出す。


「こら、いつまでミクを困らせてるの!」

「いや、ミクがクリスマスに家族じゃなくて男と過ごすとか言い出したから――」

「もう!それくらいいいじゃない!」

「良くない!えーっと――と、とにかく良くないんだ!」

「語彙力小学生かよ」


 ボソっとツッコミを入れる。


「そ、そうだ!ミクよ。クリスマスに男とデートしたらスキャンダルに繋がる可能性がある。だから――」

「そんなもんにビビってる場合じゃないから問題ない。もちろん、バレないようには動くが」

「なっ、なんだと!?そ、そもそも俺がなぜミクとヒナを芸能界の道を勧めたか知ってるか!?恋愛禁止だから芸能界の道を勧めたんだぞ!あ、もちろんミクとヒナはものすごく可愛いから――じゃないな世界一?いやいや!宇宙一可愛から成功すると思って――」

「なぁ、お母さん。いきなり自分の娘を自慢し始めたんだけど」

「コレは無視でいいよ。いつものことだから」


 今もアタシとヒナの可愛さを誰かに向けてアピールしている。


「お母さん。やっぱり断られたんだけど、どうすればいいと思う?」

「うーん」


 アタシとお母さんが頭を悩ませる。


「仕方ないの!ここはヒナが必殺技をお姉ちゃんに伝授するの!」


 すると今まで静かに見守っていたヒナがアタシに声をかけた。


「お、ホントか?」

「うん!お父さんね、猫ちゃんのモノマネに、ものすごく弱いの!だから、お姉ちゃんも猫ちゃんのモノマネでお父さんにお願いするといいの!」

「なっ!」


(ア、アタシが猫のモノマネ――ってイヤイヤ!無理だろ!)


 少し逡巡した後、無理だと決めたアタシは断ることにする。


「ごめんな、ヒナ。アタシには難易度が高そうだ」

「も、もしかしてヒナの案は良くなかったの?」


 するとヒナがしょんぼりとした顔で聞いてくる。


「うっ。そ、そんなことないぞ!今から実行するところだったからな!ありがとう、ヒナ!」

「うん!役に立って良かったの!」


 アタシの言葉にパーっと笑顔を見せる。


(こ、これはヒナのためにもやるしかない!)


 アタシは意を決して、父さんに近づく。


 そして…


「にゃ、にゃ〜。ア、アタシ、クリスマスは男の友達と過ごしたいにゃ〜。お、お父さん、許可してほしいにゃ〜」


(くっそ恥ずかしい!)


 アタシは耳まで赤くなっていることを自覚しながら、最後までやり遂げる。


 すると…


「グハッ!」


 と、床に倒れ込むお父さん。


「…………」


(こりゃ確かに必殺技だな)


 必ず殺す技と書いて必殺技なので、その通りの結果となった。


「おー!ヒナがするとここまでならないの!お姉ちゃんの攻撃がお父さんにクリンヒットしたの!」


 そんなお父さんを見てヒナが絶賛する。

 しばらくお父さんが起き上がるのを待っていると、ゆっくりと立ち上がる。


 そして…


「し、仕方ない。今年は許可してやろう。だか今年だけだからな!次にそんな手をされても、絶対許可してあげないんだからな!」

「いや、誰得のツンデレだよ」


 そんな感じで、無事に許可を得ることができた。

 そして、クリスマス当日がやってくる。

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