ミクさんとの写真撮影 3
休憩となったため、俺の腕にミクさんが抱きついたままの状態でヒナちゃんとお母さんの元へ行く。
「真白お兄ちゃんとお姉ちゃん、とても良かったの!お似合いカップルだったの!」
「とても初々しいカップルでしたよ」
「あ、ありがとうございます」
お母さんの言葉に俺たちは顔を赤くする。
(撮影している写真集の趣旨から『お似合い』と褒められることはいいことだが恥ずかしいな)
「ミクも私の教えがバッチリ活きてて今のところ文句なしよ」
「ホ、ホントか!?この調子ならいけそうなんだな!?」
「えぇ。この調子なら絶対、他の女の子よりもリードできるわ」
「よし!」
ミクさんがガッツポーズをして喜ぶ。
(ん?リード?誰かと勝負でもしてるのか?)
そう思ったため、ヒナちゃんに問いかける。
「なぁ、ヒナちゃん。ミクさんたちは何の話をしてるんだ?リードと言ってたから誰かと勝負してることは理解できるが、同じモデルの子と何か勝負をしてるのか?協力できることなら協力したいんだが」
本心から思ったことをヒナちゃんに伝える。
すると…
「おー!これがお姉ちゃんから聞いてた鈍感ってやつなの!ヒナ、お姉ちゃんが大袈裟に言ってると思ったけど全然そんなことなかったの!ヒナの想像を超えるほど鈍感なの!やっぱり真白お兄ちゃんはすごい人なの!」
なぜか褒められました。
休憩も終わり、撮影が再開する。
「次はこれをしてもらう」
そう言って社長は先ほど準備したテーブルを指す。
テーブルの上にはケーキとフォークが一つずつ用意されていた。
「今からの撮影はカップルでの食べさせ合いっこだ。まず最初に、星野さんが日向くんに食べさせるシーンを撮影する」
「「なっ!」」
「つまり“あーん”というやつをしてもらう」
俺とミクさんが固まる。
(あ、あーんだと!?そ、それはさすがにやりすぎな気がするぞ!)
穂乃果や桜には時折やっているが、2人は昔からの仲だからできること。
「しゃ、社長!お、俺はあのケーキを食べないとダメなんですか!?」
「そうだが――あぁ、なるほど。ショートケーキが好きじゃないのか。ちょっと待ってろ。チーズケーキに変えてやるから」
「そういうことじゃねぇよ!俺はミクさんから――」
社長の言葉を否定し、社長の指示を辞めるよお願いしようとすると…
「だ、大丈夫だ、真白くん。ア、アタシが真白くんにケーキを食べさせてやる」
ミクさんが俺の言葉を遮り、椅子に座る。
「な、何をしている。はやくアタシの前に座れ」
そして俺を椅子に座るよう促してくる。
「だそうだぞ?日向くん」
その様子を見て、社長が声をかける。
(ミクさんに覚悟ができてるなら俺も覚悟を決めるか)
そう思い、覚悟を決めてミクさんの前に座る。
「よ、よし!」
ミクさんが気合を入れた後、フォークでケーキを刺す。
「ま、真白くん。あ、あーん」
そして顔を赤くしながら俺の口元にもってくる。
「あ、あーん」
ミクさんから差し出されたケーキを“パクっ!”と一口で食べる。
「ど、どうだ?美味しいか?」
「あ、あぁ。とても美味しいよ」
正直、恥ずかしくて味は分からなかったが。
「そ、そうか」
俺の言葉を聞き、ミクさんが俯きながら嬉しそうに呟く。
それを見ていたスタッフが…
「すみません、ブラックコーヒーを買ってきてもいいですか?」
「あ、私のも買ってきてー!」
そんな会話をしていた。
その後も撮影が続き、頭ナデナデや膝枕等々のイチャイチャをした。
意外だったのはミクさんが社長の無理難題を拒否せず俺とのイチャイチャを続けたことだ。
(彼氏でもない俺なんかとのイチャイチャは絶対嫌なはずだ。なのに毎回気合を入れて行っている。それだけ何かの勝負が大事なんだろう)
俺は休憩中にミクさんがお母さんとしていた会話を思い出す。
「よし、次で最後だ」
そんなことを思っていると、社長から声が掛かった。
(お、次で最後か。いろいろやってきたけど最後はなんだろ?)
主なイチャイチャは撮影済みなので最後の撮影内容に興味が沸く。
「最後は日向くんが星野さんをお姫様抱っこしろ」
「はぁ!?」
俺は驚きの声をあげ、ミクさんは一瞬で顔を赤くする。
「おいおい、今日のお前たちの格好を見てみろ。怪盗キングがお姫様を抱っこして攫うシーンが必要だろ?」
「いや、当たり前のように言われても」
どうやら社長の中で、怪盗がお姫様を攫うことは常識らしい。
(これはさすがにやりすぎだよなぁ――って毎回そう思ってるわ)
イチャイチャの内容を指示される度にやりすぎだと思っているが、今回は流石にミクさんが拒否するだろう。
そう思いミクさんに問いかけると…
「ア、アタシは真白くんにお姫様抱っこされたい」
まさかのミクさんからOKが出た。
「で、でも――」
「も、もしかして真白くんはアタシをお姫様抱っこしたくないのか?」
「うっ!」
(そう言われると断りきれない。いや、でも――)
お姫様抱っというのは大事な人からされるべきだと思うので、なかなか決断できない。
「そ、そうだよな。アタシってお姫様の格好をしてるだけでお姫様のように可愛くないからな」
そんな俺を見て勘違いしたミクさんが落ち込む。
「そ、そんなことない!俺はミクさんのこと、とても可愛い女の子だとと思ってるし、今も本物のお姫様のようだと思ってる!だからこそ恥ずかしいというか、俺みたいな男にされるべきじゃないかと思って!」
「そ、そうか。あ、ありがとう」
顔を赤くし、照れながら感謝を言うミクさん。
(くっ!かわいい!)
そんなミクさんに本日何度目かのノックアウトを喰らう。
そのため…
「おい、2人とも。このやり取り見飽きた――」
「しー!社長!ここで水を差すのはダメです!」
「そうですよ!この2人のイチャイチャを邪魔しちゃダメです!」
「な、なんでだ?」
「それは、星野さんがシロ様を堕とそうと頑張ってるからですよ!」
「お、落とす?どこに?」
「え、今までのイチャイチャを見てて気付いてないんですか?あれだけ好き好きオーラが出てるのに。あれに気付いてないの、シロ様だけかと思ってました」
「私もそう思ってたのですが……だから社長は美人なのに結婚できないんですね」
「お前ら、クビにされたいのか?」
そんな会話は俺たちの耳に届かなかった。




