芸能事務所視点
〜神野麗華視点〜
時は1ヶ月前の10月31日に巻き戻る。
「はぁ、まさか移動中の事故で表紙を担当する方が入院するなんて。しかも撮影時間に間に合うよう今すぐ代役を探してこいって言われても表紙を飾れるレベルの方が街中に居るわけないよ」
そんなことを呟きながら歩いていると、キング様のコスプレをしている男の子を発見する。
(えっ!ものすごくカッコいい男の子がいるんだけど!しかも周りの女性たちが2度見……いや、ストーカーするくらいのイケメンが!)
どうやらその男の子がイケメンすぎて周りの女性たちは声をかけることが出来ないらしい。
その結果、チラチラ見る。もしくはストーカーという方法をとっているようだ。
(わかるよ、その気持ち。私もこんな状況じゃなかったら君たちの仲間になってたよ)
状況が状況なので私は思い切ってキング様のコスプレをしている男性に声をかけ、とあるお願いをする。
最初は首を縦に振ってくれなかったが、誠心誠意お願いして最終的には了承してくれた。
(話を聞いたところ自分の容姿に自信がないようだったけど……まぁ、私が理由を聞くべきではないね)
そんなことを思いながら、日向さんを撮影場所に連れて行く。
そして無事、撮影現場に到着した私は竹内社長へ日向くんを紹介する。
「表紙を飾るのに相応しい男の子を連れてきました!カッコ良すぎるので社長も二つ返事で了承すると思います!」
「ほう、神野がそこまで言うイケメンか。それなら私自ら確認しよう。そして良ければ表紙を飾ってもらおうか」
「あ、彼は容姿に自信がないようなので表紙を飾るということは両親と相談する形が望ましいと思います。今、表紙に飾ることを伝えると絶対、拒否されますから」
「分かった。そこは念頭に置いておこう」
そして無事、社長から合格をもらい、撮影を終了することができた。
日向さんを自宅へ送り届け、事務所へ戻る。
すると社長がパソコンと向き合いながら仕事をしていた。
「今日は神野のおかげで助かったぞ。ありがとう」
「いえいえ。日向さんが協力してくれたおかげですよ」
厳しい方ではあるが、こういった場面で労ってくれるので、私はこの会社のために頑張ろうと思っている。
ちなみに日向さんが代役で撮影された雑誌の正式名称はvi⚪︎i〜12月号〜だが、我が社では『読モ』と呼ぶようにしている。
「芸名は何になったんだ?」
「『シロ』という名前で掲載することになりました。日向さんの下の名前が真白なので」
車で送ってる最中に『読者モデル』に載る時の名前の話となり、『シロ』という名前に決定した。
「了解。あとは日向くんのご家族から表紙で使ってよいかの了承をもらうだけだな。本人からは了承を得れそうにないんだろ?」
「はい。これは断言できます」
撮影現場に来てもらうだけで一苦労したのだ。
表紙を飾ることに首を縦には振ってくれないだろう。
「分かった。じゃあ日向くんを通じてご家族と話し合う場を設けるよう依頼してくれ」
「分かりましたっ!」
こうして『読者モデル』発売に向けて動き出した。
そして12月1日。
日向さんが表紙を飾った『読者モデル』(vi⚪︎i〜12月号〜)の発売日となる。
その日の我が社は朝から大忙しだった。
「社長っ!出版社から連絡があり、例の『読モ』の増刷依頼が追加で2000件あったとのことです!」
「こちらにはシロさんへのお仕事の依頼が多数来ております!」
「社長ー!『シロって誰ですか!?』という電話が鳴り止みません!」
等々、朝から電話が鳴り止まない。
そんな中、私は社長に現在の状況を報告する。
「社長、例の『読モ』の件で、12時現在の状況を報告させていただきます。出版社から増刷依頼の報告が来ており、現在コンビニでは売り切れ続出となっております」
「くっ!日向くんの表紙効果を侮っていたか!」
「続いて朝から電話が鳴り止まない原因を説明させていただきます。今もなお鳴り続けてますが、その原因は日向さんにあります。出版社からの電話や日向さんへのお仕事依頼に加え、日向さんのファンから日向さんの個人情報を聞く電話が多く、職員が疲れ切っております」
個人情報を教えるわけにはいかないので黙秘し続けているが、一癖も二癖もあるファンが多く困り果てている。
「確かに電話対応の奴らの活気が無いとは思ってたが、そういうことだったのか」
「電話対応の仕事が飽きてきたみたいですね。先程、電話線のコードを切ろうとしてる人がいましたから」
「お前は電話機を叩き壊してただろうが」
「………」
その通りなので、ぐうの音も出ない。
「つ、つまりですね!一刻も早くどうにかしてほしいです!」
電話機の件は聞き流し、私は全職員の希望を伝える。
「なるほど……」
そう呟いた後、社長が突然椅子から立ち上がる。
「お前ら、よく聞け!」
その言葉に社員が注目する。
「しばらくは『読モ』や日向くんのことで忙しくなると思う。だが、その結果、我が社の業績は素晴らしいものとなるだろう。よって、今回の件が落ち着けば、お前ら全員に臨時ボーナスを支給する。ボーナスが欲しい奴は休まず働けぇぇぇ!!!」
「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
社長の言葉で職員の生気が戻り、職員たちがテキパキと動き出す。
「では私も仕事に戻ります!臨時ボーナスが欲しいので!」
「あ、ちょっと待て。神野には相談したいことがあるんだ」
「はい。何でしょうか?」
社長の言葉に、動き出そうとした身体にストップをかける。
「日向くんを『読モ』だけで終わらせるのは勿体ないと思わないか?」
「そうですね。この人気なら他の仕事をしても活躍すると思います」
「だろ?だから今日中に芸能界デビューしないか、日向くんに直接確認してこい。そして『デビューします!』の一言を貰ってこい」
「えっ!私がですか!?」
「そうだ。私はここを離れるわけには行かないからな。頼んだぞ。この会社の命運はお前に託した」
「無理です!私には荷が重……」
「あ、そういえば電話機が一つ少なくなったらしいな。確か原因は……」
「任せてくださいっ!えっちぃことをしてでも必ず言わせてみせます!」
断れなかった私はすぐにスマホを取り出した。




