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クリスマスデート争奪戦 2

 穂乃果にスマホを渡す。


「まずはこの女から断る」


 そんなことを呟きながら俺のスマホを触る。

 そして数秒後、スマホを俺たちの中心部に移動させた。

 どうやら涼宮さんに電話をかけてスピーカーにしたようだ。


 1コールすると…


『も、もしもし!シロくん!?さっきのメッセージは見てくれたかな!?私は一日空いてるから――』

『残念だけどシロのクリスマスは私と桜が独占する。だから大人しく家でクリぼっちしてて』

『えーっと……もしかしてシロくんの幼馴染さんかな?』

『違う。シロの恋人件幼馴染』

「違うわ!いや半分合ってるけど!」

『え、シロくんの恋人!?確かシロくんって付き合ってる人はいないって!』

「いないぞ!俺に付き合ってる人なんていないから!幼馴染って部分しか合ってないから!」

『よ、よかった』


 涼宮さんから安堵の声が聞こえてくる。


『じゃあ、シロくんは私とデートしても問題ないね』

『そんなことない。さっきも言ったけどシロは私たちとクリスマスデートをする予定。だからシロとのデートは諦めて』

『なっ!そんなこと言われたら諦めきれないよ!』

『もう決定事項。シロも了承した』

「待って!そんなことしてないぞ!?」

『シロくんは否定してるけど?』

『………じゃあ、私たちはこれで』

『待って!』


 電話を切ろうとした穂乃果を涼宮さんが止める。


『どうやらシロくんとデートするためには、幼馴染さんと義妹さんを説得する必要があるようだね』

『そんなことしても無駄だけど』

『連絡先を教えて!シロくんのスマホで通話し続けるのはシロくんに申し訳ないよ!』

『ん、仕方ない。シロに私の連絡先を送らせる。私はあと2人に電話をかけないといけないから、また後で』


 穂乃果が電話を切る。


「お、やっと終わったか。なら早くスマホを――って、今度は誰にかけるんだよ!」


 俺の言葉をガン無視して、迷いのない動きで穂乃果が誰かに電話をかける

 画面にはミレーユの文字が見えた。


 1コールすると…


『シロ様!私に電話をかけてくれるなんて嬉しいです!』


 元気な声でミレーユさんが出た。


『お嬢様。大きな声を出しますとシロ様が驚いてしまいます』


 どうやらミレーユさんの側にはリンスレットもいるようだ。


『すみません、シロ様。大声を出してしまって。シロ様からの電話が嬉しかったので』


(待って、めっちゃ可愛いこと言われたんだけど!)


「お兄ちゃん、ニヤニヤしない」

「あ、すみません」


 桜からジト目を向けられ、表情を引き締める。


『残念だけどシロのクリスマスは私と桜が独占する予定。だからシロとのデートは諦めて』

『…………』


 穂乃果の言葉に返答が返ってこない。


 しばらく待つと…


『すみません。お嬢様がショートしてしまいましたので、代わりにお嬢様のメイドであるリンスレットが対応させていただきます』

『ん。誰かわからないけどシロのクリスマスは空いてないから』

『1秒も空いてないのでしょうか?』

『ん、その通り』

「俺のクリスマスは秒単位でスケジュールが詰まってるのかよ!」


 どうやら俺のクリスマスは、1秒たりとも自由な時間がないらしい。


『わかりました。それなら、シロ様に睡眠時間を削っていただきましょう』

「えっ!」

『シロ様。お嬢様はクリスマスにシロ様と会えることを楽しみにしております。ちなみに私もシロ様を揶揄う――ではなく、お会いできるのを楽しみにしております』

「今、揶揄うって言ったよな?」

『え、ゴムですか?安心してください。シロ様から頂いたエッチなゴムは私が大事に保管しております。なのでクリスマスにお嬢様とエッチすることは可能です』

「耳が腐ってんのか!」


 相変わらずリンスレットとは会話が成り立たない。


「ねぇ、お兄ちゃん。エッチなゴムをメイドさんに預けたの?」

「もしかしてシロ。エッチなことでもする予定だったの?」


 リンスレットの言葉を聞き、桜と穂乃果から詰め寄られる。


「そ、そんなことするわけ――」

『はい。私にゴムの安否を聞いてくるので、おそらくクリスマスにエッチなことをすると思われます』

「うるせぇぇぇぇ!!!!メイドは黙ってろ!」


 なぜかリンスレットが応える。


「ねぇ、お兄ちゃん」

「ねぇ、シロ」

「な、なんだ?」


 2人の目が怖くて合わせることができない。


「頭が高いんじゃない?」

「そこで正座して」

「………はい」


 俺は何も悪くないのに断れず、大人しく正座する。


『つまりですね。シロ様はお嬢様とクリスマスにエッチなことをする約束をしております。そのため、25日の0時からでもよろしいので、お借りしたいと考えております』

『そ、そんなこと許可できない。それにメイドであるリンスレットさんは代弁してるだけ。なので、そのお願いは無効になる』

『わかりました。お嬢様が復活された際はシロ様に電話をかけさせていただきます』

『待って、それなら私の連絡先を送る。そこに電話して』

『かしこまりました。そのようにお伝えします』


 そこで電話が終了する。


「あ、あのぉ。そろそろスマホを返してもらっても――って聞けよ!」


 俺の言葉を再度ガン無視して、今度はミクさんに電話をかける。


『も、もしもし!真白くん!?』

『シロのクリスマスは幼馴染である私と義妹である桜が独占する予定。だからシロを貸し出す時間はない。クリスマスは仲良く家族で過ごしてて』

『あぁ。真白くんの幼馴染か。そのことに関しては真白くんも納得してるのか?』

「してないよ!俺は家でゆっくり過ごす予定だ!」

『そう言ってるぞ?幼馴染さん?』

『これは嘘。シロは私たちとのクリスマスデートに照れてるだけだから』

「違うわ!」

『違うらしいぞ?』

『………』


 穂乃果が『シロは黙ってて』という目で俺を見てくる。

 しかし俺には平穏な引きこもり生活を確保するという目的があるため、黙ってるわけにはいかない。


『そうか。真白くんは家でゆっくり過ごすのか。じゃあ真白くんがウチに来ても問題ないな』

「えっ」

『ヒナー!真白くん、ウチに来れるんだってー!』

『ホント!?真白お兄ちゃん、来てくれるの!?』

「いや、そんなこと言って――」

『あぁ。お母さんに豪華な料理をお願いしないとな』

「って聞けよ!」


 マジで家に帰ってから俺の話を誰も聞いてくれない。


『というわけだから、幼馴染さん。クリスマスは真白くんを借りるな』

『……とりあえず、この場だけ了承する。あとで私の連絡先をシロに送ってもらうから、そこでゆっくり話す』

『わかった』


 そこでミクさんとの電話が終了する。


「なぁ、なんで俺のクリスマスの予定を穂乃果たちが勝手に決めてるんだ?」


 俺は正座したまま、純粋に気になったことを聞く。


「シロ」

「ん?なんだ?」

「そうなった原因はシロが無自覚に女たらしを発動させたから」

「そうだよ!だからお兄ちゃんのクリスマスは私たちが管理するからね!」

「えぇ。俺、一日中家でゴロゴロしたい――はい、ダメですね。わかりました」


 正座してる俺を上から見下してくる。

 反論できない威圧を放って。


(俺のクリスマスはどうなってしまうんだろ)


 本気でそう思った。

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