クリスマスデート争奪戦 1
挿入歌を歌ってきた俺は神野さんの車で家に帰り着く。
「おかえりー、お兄ちゃん。どうだったー?」
「おかえり、シロ」
俺の帰りを待っていたらしく、桜と穂乃果が出迎える。
「あぁ、バッチリだったよ」
「おー!さすがお兄ちゃん!」
「ん、シロなら大丈夫だと思ってた」
俺の芸能活動にできるだけ同行したい2人だが、今日は用事があったらしい。
「でね、お兄ちゃん!話は変わるけど今週の土曜日はクリスマスだよ!神野さんに聞いたらクリスマスの日に仕事はないらしいね!」
「ん、なのでシロは土曜日、私たちとデートする」
「なんで!?」
「最近シロが構ってくれないから」
「だから私たちとデートする必要があるの!」
「な、なるほど」
芸能活動を始めてから2人と下校する機会も減り、休日に遊ぶことも無くなってしまった。
だが、ここ最近は学校終わりにドラマ撮影を行う日が多く、帰ってからは母さんと練習を行う日々で、趣味に充てる時間を確保できなかった。
そのため、今週の土曜日は1日中、貯まったアニメや漫画を消費する日と決めていた。
なので俺は2人の提案を断る。
「確かに芸能活動を始めてから2人と遊ぶことが少なくなった。だが2人には申し訳ないが、俺はその日、やることがあるんだ」
そうキッパリと2人に告げる。
すると、何故か2人が絶望的な表情をする。
「も、もしかして、お兄ちゃん。もう誰かとクリスマスデートの約束を!誰、誰なの!?」
「シロ、誰とクリスマスデートするの?いいから教えて」
そして、2人が俺に詰め寄る。
「なっ、何か勘違いしてるようだが、俺は誰とも遊びに行かないぞ。ただ、家で貯まったアニメや漫画を見て過ごすだけだ」
「な、なんだ。そういうことだったんだ」
「シロが私たち以外の女とデートするのかと思った」
見るからに安堵する2人。
「なら私たちとデートしても問題ない」
「午前は私とデートして、午後は穂乃果さんとデートだからね!」
「いや、俺は貯まりに貯まった――」
「シロは私と映画館デートだから」
「私とはショッピングデートね!」
俺の意見をガン無視して話を進める2人。
「ま、待て!俺は了承してない――」
と、2人へ再度説明しようとすると、俺のスマホが鳴る。
「お、何かメッセージが届いたなー。ちょっと確認するわ。それと土曜日は絶対家から出ないからなー」
伝えるだけ伝えて返答を聞かずに逃亡する作戦を取り、俺はリビングへ。
そしてメッセージを開くと、3件の新着メッセージが届いていた。
『シロくん!お疲れー!突然なんだけど、12/25って空いてる?もし空いてるならデートしよ!前回は邪魔が入ったけど、今度は梨奈に邪魔されないようにするから!』
『シロ様、お疲れ様です!突然なのですが、12/25は空いてますか?その日に私の部屋で、お部屋デートのリベンジをしましょう!リンスレットもシロ様に会えるのを楽しみにしてますよ!』
『お疲れ、真白くん。突然だが12/25は空いてるか?その日、アタシの家でクリスマスパーティーをするんだが、ヒナが真白くんを誘いたいらしくてな。べ、別にアタシが真白くんと一緒にクリスマスを過ごしたいってわけじゃないからな!』
「………」
(ナニコレ!?)
「お兄ちゃん、どうした――」
「シロ、誰からのメッセージで――」
俺が固まった原因が気になったようで、桜と穂乃果が俺のスマホを覗き込む。
「お兄ちゃん、モテモテだね」
「シロは私たちとデートをする。だからしっかり断って」
「いや、穂乃果たちとも遊ばないから」
頑なに俺と遊びたい2人。
「な、なぁ2人とも。俺と遊んでも高価なものは買わないぞ?だから俺なんかと遊ぶより2人で遊んでこいよ」
何故2人が俺と出かけたいかは謎だが、俺は平穏な引きこもり生活を送りたいので引くことはできない。
「じゃあ、なんで涼宮さんたちからクリスマスデートのお誘いが来たのかな?」
「さ、さぁ?俺に高価な壺でも買わせたいからかな?」
桜たちが誘う理由も謎だし、涼宮さんたちが誘う理由も分からない。
ミクさんに至ってはお父さんが俺の参加を許してくれないはずだ。
なのに誘われた。
「さすが鈍いお兄ちゃん。絶対、分かってないと思った」
桜が「はぁ」とため息をつく。
「シロ。ちょっとスマホ貸して。私が3人の誘いを断るから」
「え、いいよ。これくらい俺がやる――」
「貸して」
「……はい」
何故か断れない迫力を感じ、素直にスマホを差し出す。
(頼むぞ。変な断り方だけはしないでくれよ)
そう切に願った。




