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挿入歌

 涼宮さんと歌の練習をしてから数日が経過し、今週の土曜日がクリスマスとなる。


(まぁ俺には関係のないイベントだが)


 そんなことを思いながら学校を過ごし、放課後を迎える。


「すみません。遅くなりました」

「いえいえ!ではドラマの挿入歌を歌いに行きますよ!」


 学校終わりに神野さんと合流し、歌の収録が行われる建物に向かった。




 数十分ほど車で移動し、大きな建物の前で停まる。

 ちなみに今日は桜と穂乃果、2人とも同行していない。

 なんでも、クリスマスに向けて準備することがあるようだ。


「先に中に入って着替えてください!あ、今日はドラマ監督もいらっしゃいますよ!」


 そう言われ、俺はドラマを撮影する時に着る服に着替える。


(なんで着替えるんだろ?歌うだけで演技するわけじゃないと思うんだけどなぁ)


 そんな疑問を抱きつつ着替え終えた俺は、神野さんと共に監督やスタッフのもとへ挨拶に行く。


「監督、今日はよろしくお願いします」

「おー、シロくん。お疲れ様!楓先生から歌が上手なことは聞いてるからな!楽しみにしてるぞ!」

「が、頑張ります」


(期待に応えれるかは分からないが涼宮さんから太鼓判をもらってるんだ。全力で歌えば大丈夫だろう)


 そう心の中で呟き、気合いを入れる。


「事前に歌う曲は教えてると思うから、さっそく歌ってみようか。一回で合格を出すことはないと思うから、合格が出なくても気落ちしないように」

「はい!」


 今回歌う曲は誰もが知っている有名なJ-pop。

 俺は歌うことができるよう何度も聴いてきたため、歌詞もバッチリ暗記している。

 歌唱部屋に入り、準備が出来たことを伝える。

 そして曲が流れ出したため歌声を披露する。


「〜〜〜〜♪」


 涼宮さんから褒めてもらったことで堂々と歌う。

 そして数分後、一曲を歌い切った俺は一息つく。


(ふぅ、歌い間違いとかはなかったな。あとは監督たちの反応だが)


 俺は監督から声がかかるのを待つが、一向に声がかからない。


(あ、あれ?反応が何もないんだけど。しかも監督なんて立ったまま固まってるし)


 スタッフの反応を見て不安になる。


(や、やっぱり俺の歌唱力は酷かったのか。涼宮さんは褒めてくれたけど、全国放送となると微妙な歌唱力なんだろうな)


 そう納得し、監督たちに向けて口を開こうとすると…


「シロくん!」


 と監督が大きな声を出す。


「素晴らしい!素晴らしいよ!」

「………え?」


 監督の第一声に戸惑う。


「楓先生の言ってた通りだ!シロくんに任せて良かったよ!」

「あ、あのぉ。俺の歌は問題なかったのですか?」

「あぁ!問題なしだ!このまま放送するぞ!」


 まさかの一発合格をもらう。


「こんなに素晴らしい歌唱力を秘めていたとは知らなかったぞ!シロくんは歌手としての才能もあるな!」

「あ、ありがとうございます」


 『歌手としての才能もある』は言い過ぎだと思うが、監督からの褒め言葉を素直に受け取る。


(自信を持って歌うことができた結果だな。涼宮さんが褒めてくれなかったら、ここまで褒められなかっただろう)


「というわけでシロくんの出番はこれで――いや待てよ?」


 今日は終了かと思ったが、何やら監督がブツブツ言い始める。

 そしてお偉い方々が集まり、相談事を始めた。

 俺は数分ほど待機していると、監督から声がかかる。


「シロくん!急遽だけど追加でもう一曲歌ってもらうことにした!今度はこの曲の中から1曲歌ってほしいんだが、どれなら歌える?」


 監督から10曲ほど提示され、俺は全ての曲を確認する。


(お、涼宮さんが所属するアイドルグループのデビュー曲があるな。この曲なら涼宮さんからのお墨付きもあるし、良い歌声を披露できそうだ)


「そうですね。『スノーエンジェル』のデビュー曲なら歌詞も覚えてるので歌えます」

「おっけー!確認取るからちょっと待ってて!」


 そう言って監督がどこかへ電話をかける。


「シロくん!OKの返事が出たから、この曲も歌ってみようか!」

「わかりました!」


 俺が返事をすると、涼宮さんたちのデビュー曲が流れ出す。

 俺は涼宮さんから褒めてもらった時のように全力で歌う。


「〜〜〜〜♪」


 そして歌い終わり、監督たちの反応を待つ。


「うん!今の歌もバッチリだ!これはドラマが終わったら歌手デビューするかもな!」

「いやいや!俺以上に上手い人は沢山いますよ!」

「シロくん以上に上手い人なんて片手で数える程度しかいないと思うが」


 冗談と思えるような発言をした後、監督が続きを口にする。


「まぁ、シロくんの今後を考えるのは俺の仕事じゃない。とりあえず、シロくんの出番はこれで終了だ。お疲れ様」

「お疲れ様でした」


 俺は監督たちに挨拶をして、神野さんと合流する。


「日向さんにあんな特技があったとは知りませんでした!楓先生が日向さんを推薦する理由が分かりましたよ!」

「そ、そんなに褒めないでください」

「いえ!私、感動しました!だって日向さんの歌声は――」


 などなど、合流してからというもの、神野さんがひたすら俺の歌声を絶賛してくる。

 結局、神野さんの絶賛は家に帰り着くまで行われた。

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