けしからんおっぱいの力
俺は耳元で何かを囁かれる。
そして頬に柔らかい感触を感じ、目を開ける。
すると目の前に頬を染めた涼宮さんがいた。
「「うわっ!」」
2人同時に声を出す。
そして俺はビックリした拍子に起き上がり、涼宮さんの隣に座る。
「も、もしかして俺、眠ってた!?」
「う、うん。しっかり眠ってたね。だから私が膝枕してたんだけど、どうだったかな?」
「えーっと。正直、感触は分からないけど、グッスリ眠ってたので最高だったのかと思います」
「そ、そうなんだ。それなら良かったよ」
未だに顔の赤みが治らない涼宮さんが照れながら言う。
「ごめん。眠ってしまって。それと膝枕してくれてありがと。涼宮さんにお礼をするつもりだったのに、またお礼しなきゃいけないことをしてもらったな」
「いいよ!気にしないで!むしろ疲れてるのに私の踊りを見てくれてありがとうだよ!」
「そ、そうか。涼宮さんがそう言うなら」
とのことで、これ以上謝るのはやめる。
「ところで、さっき俺の顔を見てたけど俺の顔に何かついてるのか?」
「ふえっ!そ、そんなことないよ!?シロくんのほっぺには何もしてないよ!?」
両手を使って一所懸命に否定する涼宮さん。
「そ、それより。さ、さっき私が耳元で言ったこと、聞こえてた?」
「いや。何か言ってるのは分かったが、何を言われたかは分からなかったぞ。なんて言ったんだ?」
涼宮さんの問いかけに正直に答える。
「ど、どうしよ。もう一回言った方がいいのかな?っていやいや!無理だよ!もう一回は無理だよ!」
そんなことを言いながら一人で騒ぎ出す。
「し、しかもだよ!私、シロくんのほっぺに――」
そこまで言って、再び一瞬で顔を真っ赤にする。
「ん?そういえば俺のほっぺに何かしたのか?なんか柔らかい感触を感じたけど」
「そ、それはね!えーっと。そ、そう!私の初めてをあげたんだよ!」
「なんの!?」
「そ、そこは聞いちゃダメだよ!シロくんのエッチ!」
「なんで!?」
涼宮さんがテンパりすぎて、何を言ってるか理解できない。
しかも目を回しており、冷静さを保てていないようだ。
そのため、どのように落ち着かせようか考えていると、部屋のドアが少し開いていることに気がつく。
そして、そこから一枚のプラカードが出てきた。
(ん?なんか書いてあるな)
そう思い目を凝らす。
するとそこには…
『今しかない!押し倒せ!押し倒すんだ!』
「できるかぁぁぁぁ!!!!」
変なことが書かれており、盛大にツッコんでしまう。
「うわっ!ど、どうしたの!?」
俺が隣で叫んだことで涼宮さんが復活する。
「あ、いや、ドアの隙間から変なプラカードが出てきて」
涼宮さんがドアの方を見ると、いつの間にか文章が変わっていた。
『けしからんおっぱいの出番だ!その力、存分に見せ付けろ!』
“ブチっ”
(あ、あれ?なんか隣から血管が切れる音が聞こえたような)
「ごめんね、シロくん。ちょっと用事ができたから少しだけ待っててね」
「あ、あぁ。気をつけて」
俺は素直に涼宮さんを見送る。
「あ、あれ!?なんでウチの方に来てるの!?けしからんおっぱいの力をウチに見せつけても殺意湧くだけだよ!?」
「ねぇ、梨奈?」
「え、えーっと。香織さん?もしかして怒ってる?」
「キレてないですよ」
「なんで唐突に長州○力さん!?」
どうやら涼宮さんの中で長州○力さんブームが来てるらしい。
「もしかして梨奈。見てた?」
「ウ、ウチは何も見てないよ!香織がシロ様のほっぺに――もごもごっ!」
「なに言おうとしてるの!」
咄嗟に夏目さんの口を塞いだようで、夏目さんの「もごもごっ!」しか聞こえない。
「しっかり見てるし!」
「い、いや!まさか香織がシロ様のほっぺに――もごもごっ!」
「だからなに言おうとしてるのよ!」
(あの二人は廊下でコントを始めたのか?)
俺は二人の会話を聞きながら、そんなことを思った。
あれから夏目さんは涼宮さんに怒られ、今は正座して反省している。
「ごめんね、シロくん。せっかくのデートだったのに」
「あ、いや。デートじゃなくて――」
「だから今度埋め合わせしようね!」
「いや、デートじゃないから埋め合わせしなくても――」
「今度は2人で遊びに行こうね!」
「………はい」
何故か断れないオーラが放たれており、勢いで頷いてしまう。
(まぁ連絡なんか来ないだろう。それより今は夏目さんがいる理由だ)
「夏目さんはレッスンがあっただろ?なんでここにいるんだ?」
「いやー。レッスンが思った以上に早く終わって。だから白石さんと一緒に2人の迎えに来たんだ。2人とも、歌の練習が早く終わったんだよね?」
「あぁ。もしかして涼宮さんが連絡してくれたのか?」
「うん。シロくんが眠ってたから早めに家に送ろうと思って」
「なるほど」
夏目さんがここにいる理由を理解する。
「じゃあ帰ろっか。白石さんを待たせてると思うし」
「だな。さっさと帰るか」
そう答えた俺は、荷物を持って涼宮さんと共に部屋を出る。
「あれ!?ウチを置いてくの!?ねぇってばー!」
そんな声が後ろから聞こえてきた。




