プロローグ 4
竹内社長の指示を受けながら撮影が始まる。
その様子を涼宮さんが隅の方で見学していた。
(俺なんかの撮影を見て学ぶことがあるかは分からないけど、変な撮影にならないようにしないと)
涼宮さんに見られていることで緊張感が生まれるが、竹内社長の声かけ等で上手い具合にリラックスする。
そのおかげで社長の納得する1枚が撮れた。
「ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ忙しいのにありがとう。コスプレして歩いてたってことはハロウィンを楽しんでた途中だったんだろ?」
「そんなことないですよ。無理矢理コスプレさせられた挙句、家から追い出されただけなので」
「何があったんだよ」
確かに言葉にすると心配されそうな案件だ。
「まぁいい。日向くんのおかげでとても良い撮影ができた。その証拠に周りを見てみろ」
そう言われて周りを見てみる。
「あれ?スタッフの数が減りましたね。しかも足元がおぼつかない人までいますよ。大丈夫ですか?」
「あぁ、大したことはない。日向くんの顔を見過ぎて女性スタッフが鼻血を出したり失神しただけだから」
「大事ですよね!?」
俺の顔を見たことで非常事態が起きているのだが、社長は全く気にしていない。
「そんなことより日向くん、もう少し時間あるか?」
「あ、はい。問題ありませんよ」
「なら神野から渡された書類に目を通してほしいんだ」
とのことで神野さんのもとへ向かう。
すると近くで見学していた涼宮さんが手放しで褒めてくれた。
「すごいよ!日向くん!すごく良かったよ!」
「あ、ありがとう。あんな感じで良いのかは分からないが」
「自信を持って!すごくカッコよかったから!」
「そ、そうか」
満面の笑みで言われ、少し照れてしまう。
「私、発売されたら絶対買うね!」
「それはやめてほしいんだが」
「ダメだよ!ここで知り合ったのも何かの縁だからね!」
何を言っても買う気でいるようなので、俺は諦めて売上に貢献してもらう。
「それもそうだな。俺も今から撮影する涼宮さんの写真集は買うよ」
「ほんと!?ありがとー!」
パーっと可愛い笑顔を見せる涼宮さんを見て、俺の心臓が“ドキっ”と跳ねる。
「またどこかで会えるといいね!」
「もう会うことはないと思うけどな」
「む〜!なんでそんなこと言うの!?」
涼宮さんが頬を膨らませながら言う。
「ごめんごめん!俺もどこかでまた涼宮さんと会いたいよ」
「うんうん!じゃ、私はこれから撮影があるから!」
「あぁ、頑張ってな!応援してるぞ!」
「はーい!」
そう言って涼宮さんが撮影現場を後にする。
「さすが日向さんです。人気アイドルである涼宮さんを口説くなんて」
「そ、そんなことしてませんよ!」
俺たちのやり取りを見ていた神野さんがニヤニヤしながら話してくるが否定して社長から言われたことを伝える。
「あ、それならこの紙のことですね!」
そう言って1枚の紙を見せる。
「完成した『読者モデル』を家まで発送させていただきますので、記入していただきたい書類がありまして……」
俺は神野さんが持ってきた書類に住所や連絡先を記入する。
そして記入を終えた後、神野さんの車で撮影現場を後にする。
車での移動中、神野さんと他愛のない話をして過ごしていると、あっという間に自宅へ到着した。
「何かありましたら、私の方から連絡させていただきます。本日はお忙しい中、ありがとうございました!」
「いえいえ。俺も良い経験ができました。今日はありがとうございました」
そう言って車を降りて家に帰る。
「ただいま〜」
「あ、お兄ちゃん!おかえりー!どうだった!?」
「シロ、おかえり」
「どうだったと言っても、周りの人達からチラホラ見られるだけだったぞ」
「ほ、ホントにそれだけ!?女性の方から声をかけられなかったの!?」
「あ、あぁ。声をかけてきたのは2人だけだったな」
ちなみに内訳は神野さんと涼宮さん。
コスプレしていることで誰かから話しかけられることを2人は期待していたようだが、こんなルックスの俺に話しかけてくる人が2人もいれば充分だ。
しかし桜と穂乃果はショックを受けているようで、2人で何やら話し合いが始まった。
「ど、どうしよ!?穂乃果さん!?」
「ん、これはもう一度作戦会議が必要」
2人は顔を見合わせ、目の前で話し合いが始まる。
そんな2人へ何でもないかのように一つ報告をする。
「あ、それと『読者モデル』の撮影してきたから。俺のような顔の男でもモデルを依頼されて……」
「えぇー!お兄ちゃん、モデルしたの!?」
「シロ、モデルしたってホント?」
俺の言葉を聞き、2人が詰め寄る。
「あ、あぁ。何やら困ってたから代役で……」
「お兄ちゃん。その話、詳しく!」
「ん。根掘り葉掘り聞かせてもらう。小一時間くらい」
「えぇ……」
その後、2人からの質問攻めを受け、解放されたのは2時間後だった。
そして月日は流れ、1ヶ月後の12月1日水曜日。
学校から帰ると俺宛に荷物が届いていた。
(お、『読者モデル』が完成したんだな)
送り主からそう判断し開封する。
そして、その表紙を見て固まる。
(ん?怪盗キングのコスプレをしたヤンキーが表紙を飾ってるぞ?)
俺は見間違いかと思い、何度も確認する。
そして…
「ギャァァァァっ!何故か俺が『読者モデル』の表紙を飾ってるぅぅ!!」
俺の声が家中に響き渡った。




