原作者の権力
ヒナちゃんたちと別れた後、車へ向かい家まで送ってもらう。
「ただいまー」
「あ、おかえり!お兄ちゃん!さっそくだけどお母さんが呼んでるよ!」
「そ、そうか。あ、なんか俺、急にお腹痛くなってきたわ。トイレに24時間くらいこもるから、明日の夜にでも話聞くわ」
「何、バカなこと言ってるの?」
抵抗虚しく、無理やり桜に引っ張られる。
(イヤな予感しかしないのにぃぃっ!)
良いニュースであることを願いながら、桜に引っ張られて仕方なくリビングへ。
そしてソファーでくつろいでいる母さんの下に行く。
「あら、帰ったのね。おかえり」
「あ、あぁ。ただいま。で、何か話があるんだろ?もちろん、良いニュースだよな?」
「そうね、良いニュースと悪いニュースの両方があるわ。どちらから先に聞きたい?」
(悪いニュースがあるのかぁ。なら先に悪い方から聞くか。良いニュースを聞いた時の喜びで悪いニュースの内容は忘れることができるだろう)
「それなら悪いニュースから聞こうか」
「わかったわ。さっきドラマの撮影監督から撮り直したいシーンが数ヶ所あるから次の撮影は長くなるかもってお話があったわ」
「わかった。それくらいなら問題ない」
(なんだよ。悪いニュースって言われたから身構えてたけど、思ってたより悪いニュースじゃなかったな)
そう思い、俺は安堵する。
(これで後は良いニュースを聞くだけだ。イヤな予感がしたけど杞憂だったな)
そんなことを思いながら良いニュースを聞く。
「良いニュースはドラマのことよ」
そう言って少し溜めを作る母さん。
「今度、真白くんがドラマで歌を1曲歌うことになったわ。おめでとう」
「全然良いニュースじゃねぇよ!」
(なんでだよ!俺、そんなことをしたくないんだけど!)
「あら、良いニュースじゃない。真白くんの美声が全国放送されるのよ?」
「それだよ!それが嫌なんだよ!」
「あら、断るの?せっかく真白くんが歌を歌えるよう根回ししたのに。原作者の権力で」
「余計なお世話だ!」
原作者の権力を遺憾なく発揮している。
「あ、ちなみに私が既にOKを出したから拒否権はないわ」
「待て!普通、俺に聞いてからOKを出すよな!?」
「話そうと思ったけど断られると思ったから、私がOKしたわ。ありがたく思いなさい」
「母さんに感謝するところなんか何もないわ!」
どうやら俺のイヤな予感は的中したようだ。
「原作者ってそんなことできるのか!?」
「違うわ。今回は真白くんの親である私に相談が来たからOKしたのよ。ちなみに原作者としてもOKを出したわ」
「母さんに話が行った時点で詰みじゃねぇか!」
俳優デビューとなった時は原作者の権力で、今回は親の権力を使われる。
「そういうわけだからお願いね」
「………はい」
(もう拒否できないって言ってたからなぁ。下手だけどやるだけやってみるか)
「あ、ちなみに私は真白くんの歌が上手だから引き受けたのよ。だから自信を持って頑張ってね」
そう言って母さんがリビングから出て行く。
(歌が上手だから引き受けた?いやいや、そんなことないだろ。だって家族でカラオケ行った時、みんな俺の歌に対してコメントしてくれないんだぞ?コメントに困るくらいの歌唱力ってことだろ)
そのため俺は自分の歌唱力に自信がない。
(引き受けた以上、下手な歌を披露するわけにはいかない。どうすればいいんだ)
そう思い考えを巡らすと、とある名案を思いつく。
(そうだ!アイドルの涼宮さんから歌う時のコツを教えてもらおう!)
早速スマホを取り出した俺は涼宮さんにメッセージを送る。
『お疲れ!突然なんだけど、今度、俺がドラマで歌を歌うことになったんだ。でも俺って歌が下手だから何かアドバイスやコツを教えてほしいんだけど、どうかな?』
『お疲れー!それなら、私が直接教えるよ!そっちの方が上手に教えることができると思うし!今度の土曜日は空いてるかな?』
『ホントか!今度の土曜日は空いてるからお願いしてもいいか?』
『うん!任せて!』
涼宮さんが可愛いスタンプと共に返事をくれる。
(ありがたい提案だ!これで歌はなんとかなりそうだ!)
その後、涼宮さんとメッセージのやり取りを続け、詳しい集合時間を決めた。




