星野家へ 3
ヒナちゃんたちのお父さんが部屋から出て行く。
「旦那はあんなことを言ってますが、真白さんが邪な気持ちでヒナに近づいてないことを私は理解しておりますよ」
「ヒナも真白お兄ちゃんは良い人って思ってるの!」
「アタシも真白くんは悪い人じゃないって思ってる」
「ありがとうございます」
ヒナちゃんたちからも、お父さんと同じように思われていたら泣いていた自信があったので、3人の言葉に安堵する。
「あ、そうだ。真白くんが二人目のシロ様になったら、お父さんも怒ったりしないな」
名案かのようにニヤニヤしながらミクさんが言う。
「お、俺はシロさんみたいな立派な人間にはなれないので無理だなぁ」
昨日の撮影で俺とシロが同一人物でないかと疑う場面があったので、しっかりと否定する。
「それにしてもお父さんは言いすぎなの!だからヒナは今日からお父さんのこと無視するの!」
「あぁ。アタシもお父さんのことを無視してやろうか」
「それは名案ね。お母さんも参加しようかな」
娘たちだけでなくお母さんまで参加するようだ。
(お父さん、泣くんじゃないかな?でも決して俺のせいではないので、その点だけはご理解ください)
そうは思うが俺のせいになる未来が容易に想像できた。
その後、俺たちはリビングへ移動する。
お父さんはすでに椅子に座って俺たちを待っていた。
「少し待ってくださいね。今、料理を運びますので」
「ヒナも手伝うのー!」
「アタシも手伝うよ」
とのことでヒナちゃんたちが料理を運び、全員が席に着く。
「「「「「いただきます」」」」」
俺たちは手を合わせた後、各々が食事を始める。
「おー!お母さん!今日のご飯は豪華で美味しいの!」
「ふふっ、真白さんが来るので張り切って作りました。なので真白さんは遠慮なく食べてくださいね」
「ありがとうございます」
(うん!どの料理も美味しい!)
お母さんの料理が美味しすぎて食べる手が止まらない。
しばらく料理を満喫していると、ミクさんが話しかけてきた。
「ねぇ。昨日、ドラマの撮影場所にいたけど、真白くんは何をしてたの?」
「!?」
ミクさんの質問に俺は驚く。
(お、おい!ここはなんて答えるのが正解なんだ!?)
昨日、ミクさんたちには『ここで働いていた』と返答している。
「ヒナも気になってたの!」
どうやらヒナちゃんも気になっていたようで、話題を変えることはできないようだ。
(くっ!シロの正体をバラすのは論外だ!俺はお父さんが絶賛するような人間じゃないからな!というよりお父さんが絶対信じない!)
そんな感じで色々と考える。
すると、とある名案を思いつく。
「じ、実は俺、シロさんのマネージャー見習いをしてるんだ」
「えっ!そうなの!?」
「すごいな!真白くん!」
俺の言葉に2人が声を出して驚く。
もちろんお父さんとお母さんも驚きの表情をしていた。
(これなら神野さんが上手く俺の嘘に付き合ってくれるだろう)
我ながら名案だと思う。
「シロさんのマネージャーは忙しいのか?」
「ドラマ撮影の仕事が入ってから忙しくなったな。放送日まで日数がないから、ほぼ毎日撮影が入ってるし。でもヒナちゃんの方が忙しいんじゃないか?シロさんとの撮影以外のドラマにも出演してるし」
「そんなことないの!ヒナ、演技するの楽しいから全然苦じゃないの!だから全く忙しくないの!」
「おぉ、女優の鑑だね。そのままのヒナちゃんで成長するんだよ。そして世の男たちを魅了するんだ」
「はいなの!」
ヒナちゃんが元気に応える。
「もちろん真白お兄ちゃんも魅了するの!ヒナはきっと将来、お姉ちゃんやお母さんみたいに巨乳美女になるから!」
「ははっ。そうなったら俺はヒナちゃんに惚れて――ひぃっ!な、何でもないです!ヒナちゃんたちのお父さん!」
急に怒りオーラを放ったお父さんにビビり上がり、続きの言葉は飲み込む。
しかし、ヒナちゃんはこの話題を続けたいようで、話を広げてくる。
「でもヒナが真白お兄ちゃんを悩殺する前にお姉ちゃんが真白お兄ちゃんを悩殺するの!お姉ちゃん、すっごく綺麗だから!」
「そっ、そんなことないぞ!アタシよりヒナの方が絶対、美人になるから!そう思うだろ!真白くん!」
「そうかな?俺はミクさんと同じくらい可愛い女性になると思うぞ」
「なっ!」
「おぉー!」
「ふふっ。真白くん、積極的ね」
俺の言葉にミクさんが驚き、ヒナちゃんが感嘆の声を上げる。
そしてお母さんは笑いながら俺たちを見ていた。
「何を驚いてるんだ?俺は事実を言っただけだぞ。ミクさんは惚れそうなくらい魅力的で――ひぃっ!な、何でもないです!ヒナちゃんたちのお父さん!」
「そうか。俺の目の前でミクを口説いたのかと思った――」
「こらっ、アナタっ!」
「あいたっ!」
お母さんが“ペシっ!”とお父さんの頭を叩く。
「これ以上、真白さんにイジワルすると明日からのご飯をドックフードにするわよ?」
「ヒナもお父さんのこと無視するの」
「そ、そうだな。アタシもヒナに同意だ。そろそろ真白くんが可哀想だ」
「………もう黙ります」
どうやら星野家の序列はお父さんが1番下のようだ。
「ごめんな、お父さんが五月蝿くて」
「大丈夫だ。ヒナちゃんたちのお父さんが心配するのは当然だと思うから。こんな前髪を伸ばしまくった怪しい男が2人と仲良くしてるからな」
俺の顔を見る前から好感度は最低だったので容姿は関係ないだろうが、その点は触れないでおく。
すると、少し頬を染めたミクさんが照れながら口を開く。
「そ、それで、さっき言ってた言葉って本心なのか?その、アタシが可愛いって言葉は」
「ん?あぁ。本心だが、それがどうかしたのか?」
「い、いや!何でもない!」
ほんの少し頬を染めたミクさんがそっぽを向く。
その様子を見ていたヒナちゃんたちが…
「お姉ちゃん、可愛いの!」
「ふふっ、そうね」
「ぐぬぬ。日向さんは要注意人物だな」
そんなことを言っていた。




