星野姉妹との出会い
ミレーユさんと約束した日を迎える。
ミレーユさんを待たせるわけにはいかないので、時間に余裕を持って家を出る。
「あれ?お兄ちゃん出かけるの?」
「あぁ、ちょっと用事があってな」
「珍しいね。確か今日は芸能関係の仕事、お休みだよね?」
「あぁ。だが俺に休んでる時間はない。だって明日はドラマ撮影の日だからな」
「なるほど。勉強しに行くんだ。気をつけてね」
桜に見送られて家を出る。
ちなみに学校へ行くときと同じように前髪を全て下ろした格好で街中を歩く。
もちろん、この格好でも噂のシロが俺であることに気づかれる可能性はあるため、気を抜かずに歩く。
そのため不審者の如くコソコソと歩いていると、マスクで顔を覆った女の子を発見する。
(小学生くらいかな?何やら困っているようだけど)
その女の子は周りをキョロキョロと見渡しており、少し涙目になっていた。
俺は時計を見て集合時間まで時間があるのを確認し、女の子に声をかける。
「ねぇ、君。何か困ったことでもあるのかな?」
俺は女の子の目線に合わせて声をかける。
「うん、お姉ちゃんと逸れてしまって」
女の子が暗い表情で答える。
「そうなんだ。俺でよければ手伝うよ?」
「ホント!やったー!お兄ちゃんは良い人なの!」
俺の返答に女の子は一瞬で笑顔になる。
「良い人かは分からないけど、さすがに見過ごせないからね」
「そんなことないの!お兄ちゃんは良い人なの!」
「ははっ、ありがと。さっそくだけど交番に行こうと思うんだ。もしかしたらお姉さんが待ってるかもしれないし。交番の場所はわかる?」
「それが分からないの。最近この辺りに引っ越してきたから」
「わかった。なら俺が案内するからついてきて」
「うん!」
女の子が元気よく返事したのを見て、俺は近くの交番を目指して歩き出した。
交番に向かっている途中、俺は疑問に思ったことを聞く。
「ねぇ、今言うのも間違ってるけど、どうして前髪が長くて素顔も分かりにくい俺なんかについてきてるの?自分で言うのもなんだけど怪しさ満点だよ?」
「うーん……なんとなく、お兄ちゃんは悪い人じゃないって思ったの!」
なんとなくらしい。
(これは注意した方がいいな。他所の子に注意するのは厚かましいが、安易に人を信じないようにしてほしいからな)
そう思って注意しようとするが、その前に女の子が口を開く。
「あ、そういえば、お兄ちゃんの名前を聞いてなかった!」
「ん?あぁ。まだ名乗ってなかったな。俺は日向真白って言うんだ」
「おー!カッコいい名前なの!」
女の子が手を叩きながら褒めてくれる。
「そうだ、ヒナも自己紹介するの!ヒナの名前は星野ヒナ!小学生6年生!よろしくね、真白お兄ちゃん!」
「あぁ、よろしくな」
(……あれ?星野ヒナってどこかで聞いたことあるな)
そう思い質問しようとすると、ちょうど最寄りの交番に辿り着いた。
「あー!お姉ちゃん!」
ヒナちゃんが交番の前に立っている女の子に駆け寄る。
「ヒナ!もう!心配したんだぞ!」
そう言ってヒナのお姉さんがヒナを抱きしめる。
「うぅ、ごめんなさい」
「いや、ヒナから目を離したアタシも悪い。それよりケガはないか?怪しい人に声をかけられたりしてないか?」
「うん!大丈夫なの!真白お兄ちゃんが助けてくれたから!」
そう言ってヒナが俺を紹介する。
「ありがとうございます。妹を助けていただき」
ヒナのお姉さんが俺に頭を下げる。
顔はマスクとサングラスをしているので分からないが、ヒナと同じピンク色の髪をサイドテールにしており、胸はなかなか立派なものを持っている。
「いえ、困っているようだったので声をかけただけです。それと1つだけヒナちゃんに注意してほしいところがありまして」
「注意ですか?」
「はい。俺が声をかけた時、悪い人じゃないと何となく思ったから俺に付いてきたようです。そんな感覚で安易に信用してしまうと、いずれ誘拐されてしまうかもしれません」
「そうですね。ヒナにはしっかりと言っておきます。ホント、ヒナを助けていただき、ありがとうございました」
「いえいえ。では俺は用事がありますので」
「真白お兄ちゃん、ありがとー!」
ヒナちゃんの声を聞きながら、俺はミレーユさんとの集合場所へ向かった。
〜星野ミク視点〜
アタシはヒナを連れてきてくれた男性に礼を言って別れる。
「ヒナ!心配したんだぞ!」
「うぅ、ごめんなさい」
ヒナが目に見えて落ち込んでいるので、注意はこれくらいで終了しておく。
「ほんと気をつけろよ。ヒナは天才子役として有名なんだから」
「そ、それを言うならお姉ちゃんもなの!美少女モデルとして活動中なのに今日も変装せず家から出ようとしたし!」
「ア、アタシはヒナほど有名じゃないからな。それに美少女って言われるほど可愛くないし」
アタシら姉妹は共に芸能界で活動しており、活動拠点をこの街に移したばかりだ。
「それにしても今回もヒナの勘は当たったな」
「うん!真白お兄ちゃんは悪い人じゃなかったの!」
ヒナは良い人と悪い人を何となく区別できる。
先ほどの男性にも言われた通り、安易に信用するのは良くないが、今までヒナの勘が間違ったことはない。
(ヒナが良い人と判断した人か。アタシも話した感じ悪い人とは思わなかった。今度どこかで会ったら声をかけてみようか)
そんなことを思いながらヒナと一緒に街を歩いた。




