母親
結局、涼宮さんたちの言葉を否定できずに家へ帰ることとなる。
(2人から来たメッセージも、べた褒めの内容だったし)
車での移動中、2人からメッセージをもらったが、先ほどと変わらず俺のことを褒めてくれた。
(まぁいいや。2人のことは追々考えよう。それよりも今は桜と穂乃果だ)
何故かCM撮影が終了してから元気がない2人。
「どうしたんだ?さっきから元気ないぞ?」
後部座席に乗ってる2人へ声をかける。
「穂乃果さん。やっぱりお兄ちゃんは天然タラシだったようですね」
「ん。私たちが何をやっても好感度は上がる未来だったらしい」
そんなことを言いながら落ち込む2人。
「な、何か悪いものでも食べたのか?」
「ううん。お兄ちゃんのフラグを建てる速さに脱帽してただけだよ」
「桜の言う通り。私から一級フラグ建築士をプレゼントしたいレベルで」
「そ、そうか。よく分からないが素晴らしい称号のような気がするので遠慮なく貰っておこう」
「褒めてないよ!」
「褒めてないんかーい」
そんな感じで2人の言動がおかしい。
「神野さん、2人はどうしたんですか?」
「そうですね。全面的に日向さんが悪いと思います」
「………さいですか」
どうやら知らないうちに2人を怒らせたようだ。
(帰ったら何でも言うことを聞くか)
そう思った。
自宅に到着し、俺たちはリビングへ。
「なぁ、2人とも。俺が何かしてしまったんだろ?何に怒ってるか分からないんだ」
考えても分からなかったので、直球で聞いてみる。
「お兄ちゃん、何か勘違いしてるみたいだけど私たちは怒ってないよ」
「え?そうなのか?」
「ん、自分たちの不甲斐なさを嘆いてるだけ」
「そ、そうだったのか」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。
「良かった。2人を怒らせたのなら何でも言うことを聞いて機嫌を直してもらおうと思ってたが、そんなことしなくて済むな」
そう思い自室へ戻ろうとすると…
「ちょっと待って!」
「シロ、ストップ」
「ぐえっ!」
2人に服の襟を捕まれ、歩けなくなる。
「お兄ちゃん。やっぱり私、怒ってるよ。お兄ちゃんの言動に」
「ん。これはシロに私たちの言うことを聞いてもらわないと気が済まない」
「えぇ……」
余計なことを言ってしまったと後悔するが時すでに遅く、言うことを聞かないと返してくれない雰囲気だ。
「分かった。神野さんには俺が悪いって言われたんだ。2人の言う通りにするよ。それで俺は何をすればいいんだ?」
「ん。もちろん私たちの頭を撫でること」
「涼宮さんたちだけにするなんて不公平だからね!」
「何が不公平なのか全く分からないが!?」
とは言うものの、頭を撫でるだけで許してもらえるのなら安いものだ。
そのため俺は2人の頭に手を置き、涼宮さんたちと同じように優しく撫でる。
「ふぁ〜」
「さすがシロ。とても良い」
「はいはい」
気持ちよさそうに目を細める2人。
そんな2人が可愛いため、俺は笑みを浮かべながら撫で続ける。
ちなみに2人は義妹と幼馴染という関係なので、涼宮さんやミレーユさんの頭を撫でる時と比べ、躊躇なく撫でることができる。
(いつも思うけど俺なんかに撫でられて嫌な思いしないのかな?兄は妹の頭を撫でるのが仕事って言われたけど。あ、幼馴染の頭を撫でるのも仕事って言われたな)
以前、2人に嫌な思いをしないのかと聞いてみたら…
『お兄ちゃんは妹の頭を撫でるのが仕事だよ!』
『ちなみに幼馴染の頭を撫でるのも仕事。これ、世の中の一般常識』
『そんな常識あるのかよ。知らなかったわ』
とのことで、時折2人からナデナデを要求される。
(そういえば本当に常識なのか調べてなかったな。後で調べてみよう)
などと考えていると、突然リビングのドアが開く。
「「「!?」」」
俺たち3人は同時に驚き、ドアを開けた人を見る。
そこには桜の母さんで今は俺の母さんでもある『日向楓』がいた。
桜と同じ赤い髪を腰まで伸ばしており、20代後半と思われてもおかしくないほど美人で、血の繋がってない俺のことも大切にしてくれるため、2人目の母さんだと思い接している。
そんな女性が俺たちを見て固まる。
そして…
「邪魔して悪かったわ」
そう言ってリビングのドアを閉める。
「わー!待って母さん!」
「お母さん!絶対何か勘違いしてるから!」
俺と桜が全力で母さんを呼び戻す。
「何かしら?私は真白くんが桜と穂乃果ちゃんの2人とイチャイチャしてるように見えたから邪魔しない方がいいかと」
「お、お母さんは変な気を使わなくていいの!」
「そう?なら遠慮なく続きをしてもらって構わないわ。私は近くでテレビでも見てるから」
「さすがに今から続きはできないよ!というわけでお兄ちゃん!私は満足したから先程の件は許すよ!」
「ん。私も許す」
「あ、ありがとう」
母さんが乱入するというイベントは発生したが、無事2人から許しをもらう。
「あら、良かったの?せっかく真白くんと――」
「わーっ!何言おうとしてるの!お母さんっ!」
「シロのお母さん、それ以上はダメです」
「ふふっ。そういうことにしておいてあげるわ」
そう言って母さんがリビングの奥へ向かう。
「毎回思うけどシロのお母さんには逆らえる気がしない」
「お母さん、私たちを揶揄うのが好きだから」
「頭も良いから余計厄介だよな」
3人で“うんうん”と頷きあう。
(まぁ何はともあれ無事2人から許しを得たんだ。というわけで俺は調べ物を……ってあれ?何を調べるんだっけ?)
何かを調べようと思っていたが、母さんの乱入で忘れてしまう。
(まぁいっか。忘れたってことは重要なことではないんだろう)
そんなことを思いつつ、俺は自室へと向かった。




