ファンレター
『おしゃべり7』が全国放送された翌日。
俺はより一層、気を引き締めて学校に向かうが、影の薄さが本領を発揮し、正体がバレることはなかった。
そして月日は流れ、12月中旬となる。
「お疲れ様です!少しお話ししたいことがありましたので伺いました!お時間大丈夫でしょうか?」
「はい。問題ありませんよ」
家に来ることは事前に聞いていたので、神野さんを迎え入れる準備はしていた。
俺は神野さんをリビングへ案内する。
「桜さんに穂乃果さん、お久しぶりです!」
「お久しぶりです!神野さん!」
「ん、お久しぶりです」
今から行われる話を聞きたいと2人が言うので、神野さんの了承を得て2人が同席することとなった。
神野さんが桜と穂乃果に挨拶をしてから椅子に腰掛ける。
「今日は仕事のオファーがありましたので仕事内容の説明と、コチラを届けに参りました」
そう言って神野さんは大きな紙袋を俺たちの前に出す。
「何が入っているのですか?」
「はい!コチラは日向さん宛に来た手紙です!おそらく10000枚は軽く超えてますよ!」
「い、いちまん……」
あり得ない数字に驚愕する。
そして目についた一枚の手紙を開封してみる。
シロ様へ
『おしゃべり7』見ました!シロ様が素晴らしい人間だということが伝わり、より一層応援したくなりました!これからも頑張ってください!
P.S.あぁ、世の中の男性全員がシロ様だったらよかったのに。シロ様なら私の気持ちを理解してくれますよね!
「できるかぁぁっ!」
手紙に向かってツッコミを入れる。
「うわっ!どしたの!?お兄ちゃん!?」
「この人はアホなのか!世の中の男性全員がシロ様って気持ち悪いわ!そんな世界!」
「そんなことない。私はシロが大量発生した世界を見てみたい。そしたらシロを巡って争うことがなくなるから。これで世界平和間違いなし」
「穂乃果は同意せんでいい!」
そんなやり取りをしながら、今度は別の手紙に手を伸ばし開封する。
シロ様へ
『顔で注目を集めただけの男』と思ってた自分を殴ってやりたいです!『おしゃべり7』ではシロ様の内面に感動しました!きっとシロ様は常に世界の未来について考えていることでしょう!これからも人々にシロ様の素晴らしい考えを伝えてください!
P.S.同じ内容の手紙を1000枚送ってます!愛が重いとか思わないでくださいねっ!
「過大評価しすぎぃぃっ!」
またしても手紙に向けてツッコミを入れる。
「俺がいつ世界の未来について言った!?これっぽっちも考えてないわ!この人、『おしゃべり7』見てたのか!?」
そんな内容の手紙だった。
「シロ、うるさい。私たちが手紙を読めない」
「待って!なんで読んでんの!?」
いつの間にか穂乃果と桜が一緒に手紙を見ていた。
「気になったから」
「そんなことだろうと思ったよ!」
こうなると2人を止めるのは難しいので、気が済むまで読んでもらおう。
そう思い別の手紙に手を伸ばした時、何故か2人が手紙を見て固まっていた。
「桜、私たちは大きな過ちをしてしまった。まさか、こんなに早くライバルが現れるなんて」
「うん、そのようだね。『お兄ちゃん、芸能活動頑張ってー!』とか言ってる場合じゃないね」
2人が真剣な表情で話し出す。
「シロ、ちょっと桜と作戦会議してくるからコッチ来ないで」
「あ、あぁ」
そう言って、読んでた手紙をテーブルに置き、2人はリビングの隅に移動してコソコソと何かを話し始める。
「何を読んだのでしょうか?」
「俺も気になりますね」
俺と神野さんは顔を見合わせながら、2人が読んでいた手紙を読む。
シロ様へ
シロ様ー!『おしゃべり7』とても良かったです!あ、そういえば涼宮さんとミレーユさんが、それぞれのラジオ番組でシロ様のことをベタ褒めしてましたよ!これは2人ともシロ様に気がありますね!ヒューヒュー!
P.S.私的には誰か1人とお付き合いするのではなく、全員を幸せにするハーレムルートに入ってをほしいです!お嫁さん100人できるかな!?
「なんだこのふざけた手紙は!」
「こ、個性的な方が多いですね。日向さんのファンには」
「俺もそう思います」
誰かから応援されるようなルックスでないことは百も承知だが、ものの見事にふざけた手紙ばかりだった。
「てかアイツら、この手紙のどの部分で作戦会議が必要だと思ったんだ?」
「……え、本気で言ってますか?」
俺の発言に何故か神野さんが驚く。
「は、はい。ハーレムルートに突入しないよう作戦会議でもしてるんですかね?」
「なるほど。日向さんに恋人が居ないのは可笑しいと思いましたが……鈍いんですね。納得です」
「1人で納得しないでください」
俺の目の前で神野さんが“うんうん”と頷いていた。




