『おしゃべり7』の収録 3
スタジオの笑いが落ち着いたところを見計らって、司会者が俺への質問を再開する。
「では次の質問に参ります。ズバリ!どのような女性がタイプですか!?」
「そ、そうですね。優しくて笑顔が素敵で、何事にも一所懸命に取り組む女性がタイプですね」
「ほうほう!ちなみにシロ様は現在、付き合っている女性はいるの?」
「いやいや!いませんよ!それに今まで誰かとお付き合いしたこともないです!」
俺の返答にスタジオにいる全員が驚く。
「えっ!1度もないの!?」
「そ、そうですね。1度もないです」
「てっきり何人もの女性の方とお付き合いした経験があるのかと思ってたよ」
「いやいや!俺はたくさんの女性を取っ替え引っ替えするような人にはなれませんよ!」
そんな男になれるならなりたいが俺のルックスでは無理なので、とうの昔に諦めてる。
しかし、またしても司会者から変な捉え方をされてしまった。
「な、なるほど!シロ様はたくさんの女性を取っ替え引っ替えするような最低な男になりたくないから、今まで誰かとお付き合いしたことがなかったんだな!シロ様のルックスなら女性たちを選び放題できるのに!」
(違うわ!俺は『この顔だから女の子を取っ替え引っ替えできない』って言ったの!)
「ということは、『好きではないけど試しに付き合ってみるか』という最低な選択をせず、本気で好きになった女性とだけ付き合うと決めてるんだな!さすがシロ様だ!」
司会者の発言にスタッフたちも感嘆の声を上げる。
(そんな考えを持ってる男は少女漫画しか登場しないから!)
そう思うが、とても否定できる空気ではないので口をつぐむ。
「さすがシロくん!私はシロくんが節操のない男じゃないって信じてたよ!」
「さすがシロ様です!世の中の男性全員に見習ってほしいですね!」
両隣にいた涼宮さんとミレーユさんがキラキラした目で言ってくる。
「あ、あはは………」
そんな2人に、またしても愛想笑いしかできなかった。
結局、俺の評価が爆上がりするだけの収録となった。
(おい!俺、皆んなから『聖人』みたいな扱いで収録が終わったんだけど!)
何故なら先程、収録が終わった時、司会者から…
「俺、高校2年生の男の子から人間性を学ぶことになるとは思わなかったよ。また一緒に収録をしような!」
そう言われた。
(待って!俺、芸能界の大御所からそんなこと言われる男じゃないから!)
そう伝えたかったが忙しいようで伝える前に何処かへ消えてしまった。
「シロくんお疲れー!どうだった!?初収録は!?」
「お疲れ様です!シロ様!初収録とのことでしたが、どうでしたか!?」
そんな俺に涼宮さんとミレーユさんが話しかけてきた。
「あぁ、お疲れ。無事終わったことに安堵してるよ。収録内容はイマイチだったかもしれないが」
「そんなことないよ!シロくんの素晴らしさが広まる良い収録だったからね!」
「はい!今すぐ他の人にもシロ様の素晴らしさを伝えたいくらいです!」
「そんなことしなくていいから!」
ミレーユさんなら本気でやりかねないので、釘を刺しておく。
「それにしてもシロくんは初収録とは思えないほど良い収録だったね。私の初収録なんて緊張して全然上手く話せなかったから」
「ウチも初めての収録は緊張しました。ウチの良さを知ってもらおうとしたのですが、空回りばかりしてしまって」
「わかる!私もそうだったの!でもシロくんはとても良かったよ!」
「はい!シロ様の良さや魅力が伝わるいい収録でした!」
「あ、あぁ。ありがとう」
(やべぇ、全然嬉しくねぇ。俺、誰かの模範になるような立派な人じゃないんだけど)
そう思い2人に説明しようとすると…
「あ、そうだ!シロくん!連絡先を交換しようよ!」
「シロ様!ウチとも交換お願いします!」
2人がスマホを取り出し、俺に向けてくる。
「あ、あぁ。俺は構わないけど……俺の連絡先なんかいるの?」
「も、もちろんだよ!この業界は連絡先の交換が当たり前だからね!そうだよね!ミレーユさん!」
「す、涼宮さんの言う通りです!」
涼宮さんの言葉にミレーユさんが頷く。
(そうだったのか。まぁ連絡先を交換しても連絡を取り合うことはないだろう)
そう思い、快く2人と連絡先を交換する。
「ありがと!シロくん!これからもよろしくね!」
「シロ様!今日はありがとうございました!」
こうして2人と仲良くなった俺は神野さんと合流し、家に帰った。
『おしゃべり7』の収録が終わり、家に帰る。
そして収録日から2週間後。
俺がゲストとして収録した『おしゃべり7』が全国放送された。
その日の夜。
SNSのトレンド上位にシロ様関連のワードがたくさんランキングしていたことに、俺は気づかなかった。




