『おしゃべり7』の収録 1
収録場所に到着する。
今回は番組側の要望でキング様のコスプレで収録に臨むこととなっている。
着替えが終わると挨拶まわりをするため、神野さんと一緒に移動する。
「見て!噂のシロ様よ!」
「やばっ!カッコすぎる!写真で見るよりも何百倍もキング様が似合ってるよ!」
「後で声をかけに行こーっと!」
何やら俺の方を見て女性スタッフたちが話しているようだが、話す内容までは聞き取れない。
「神野さん。俺の格好、変じゃないですか?周りのスタッフが俺の方を見てるので、どこか変な箇所があるんじゃないかと思うのですが」
「大丈夫ですよ!すごく似合っててカッコいいので!」
そう言って神野さんが俺のことを手放しで褒めてくれる。
「そ、そうですか。ありがとうございます」
俺がカッコいいはずないのでお世辞だとは思うが、神野さんのような美女に褒められると照れてしまう。
そのことを隠しつつ神野さんと共に移動し、司会を務める大御所の方やスタッフたちへの挨拶まわりが終了する。
「後は共演者の方々への挨拶まわりですが、私は少しスタッフの方と話をしてきます。私だけで大丈夫ですので日向さんは休憩室に戻っていいですよ」
「分かりました」
とのことで休憩室を目指して歩くが…
(やべぇ!迷った!)
全然知らないところに辿り着く。
「えーっと、とりあえず来た道を引き返すのがベストだとは思うが……あれ?どっちから来たっけ?」
そんなことを思い立ち尽くしていると、「シロくーん!」との声が聞こえてきた。
「お疲れー!シロくんも今日は呼ばれたんだね!」
俺に声をかけてきたのは『読者モデル』の撮影をした時に出会った涼宮さん。
人気急上昇中のアイドルということでオファーが来たようだ。
「お疲れ、涼宮さん。急だったけど声がかかったんだ」
「『読モ』からこの番組に出れるなんて快挙だよ!しかも、この番組が初収録でしょ!?」
「あぁ。だから今、結構緊張してて普段なら迷わないような場所で迷子になってしまったよ」
「ふふっ。しっかりしてそうで少し抜けてるんだね」
涼宮さんがクスクスと可愛く笑う。
「なら少しだけ先輩である私に任せて!えーっと、シロくんの部屋は……」
「も、もしかしてシロ様ですか!?」
突然、涼宮さんの言葉を遮り、後ろから声がかかる。
そのため後ろを振り返ると、共演者であるミレーユさんがいた。
胸は小さいがスラっとした体型と腰の辺りまで伸ばした金髪が特徴的な美少女。
歳は俺の一つ下で日本人と外国人のハーフらしく、最近活躍している人気女優だ。
「お疲れ様です、ミレーユさん」
「お疲れ様です、涼宮さん。そして会いたかったです!シロ様ー!」
そう言ってミレーユさんが俺に近づく。
「え、えーっと……」
「ウチ、ずっとシロ様に会える日を楽しみにしてたんです!まさかこんなにも早くお会いできるとは思いませんでした!これは神様がウチの頑張りにご褒美をくれたに違いありませんね!」
「そ、そうか?俺なんかがご褒美になるとは思わないけど」
「そんなことないです!」
“グワっ!”と俺の顔に近づくミレーユさん。
それにより整った顔が目の前に現れ、ミレーユさんの顔に見惚れてしまう。
「……あのぉ、シロ様?」
「なっ、なんでもないよ!」
俺は慌ててミレーユさんから距離を取り、心を落ち着かせる。
「そういえばシロ様はこんなところで何をしてたんですか?」
「あぁ。恥ずかしい話だが自分の部屋がわからなくなってな。涼宮さんに案内をお願いしてたところだ」
「なるほどです!それならウチも涼宮さんと一緒に案内しますよ!」
「いいのか?」
「はいっ!シロ様とはもっと仲良くなりたいので!」
とのことで3人で移動を開始する。
「涼宮さんとミレーユさんは初対面なのか?」
「うん。今日が初めて会うんだ。よろしくね、ミレーユさん」
「はいっ!よろしくお願いします!涼宮さん!」
元気よくミレーユさんが返事をする。
「そういえば涼宮さんとシロ様は交流があるのですか?」
「あぁ。俺が『読モ』の撮影をした時、涼宮さんと出会ったんだ」
「だからシロくんの撮影を見学したんだ!すっごく良かったよ!」
「羨ましいです!」
などなど、他愛のない話で盛り上がる。
「あ、そうだ。ミレーユさん、俺のことは様付けして呼ばなくていいよ。涼宮さんのように普通でいい……」
「それはダメです!シロ様はシロ様ですから!」
「……さいですか」
様付けされるほど立派な人間じゃないが、ミレーユさんの意志は固いようだ。
「ふふっ。やっぱりシロくんは面白いね」
「どこを見てそう思ったんだよ」
とは思うが隣を歩く涼宮さんはニコニコしており、嘘ではないようだ。
「あ、ここだよ!シロくんのお部屋!」
涼宮さんとミレーユさんの案内で無事、部屋まで辿り着く。
「案内してくれてありがとう。助かったよ」
「いえいえ!困った時はお互い様だからね!」
「そうです!だからシロ様は気にしなくていいですよ!」
収録前で忙しいのに2人は笑顔で返事をしてくれる。
「じゃあ収録で会おうね!」
「今日はよろしくお願いしますね!」
そう言って2人が立ち去る。
(2人ともすごく優しくて助かったよ。いつの間にか緊張も和らいでるし)
2人と話したおかげで、程よい緊張感となっている。
「よし。収録頑張るか」
そんなことを思いつつ自分の部屋に入った。




